【福田正博 フォーメーション進化論】

 6月のロシアW杯アジア最終予選のイラク戦で、先制した日本代表はリードを守り切れずに引き分けに終わった。試合後には、「もっと守備を固めるべきだった」「先制した後に、さらに攻撃的に出ておけばよかった」など、さまざまな意見が飛び交った。そこで今回は、”ゲームの終わらせ方”について考えたい。

 5月に行なわれた、ACLの浦和レッズと済州ユナイテッドの一戦では、リードする浦和の選手が試合終了間際にコーナーフラッグ付近でボールキープし、時間稼ぎをしたことが引き金となって乱闘騒ぎにまで発展した。この試合のように、日本サッカーの”勝っている試合の終わらせ方”は、敵陣のコーナーフラッグ付近にボールを運ぶケースが圧倒的に多い。

 あらかじめ断っておくが、こうした戦術を全否定するわけではない。ただ、Jリーグには、鹿島のように勝ちにこだわってリアリストに徹するクラブもあれば、カウンタースタイルを構築したり、ポゼッションを高めることで試合の主導権を握ったりするクラブもある。さまざまなサッカーのスタイルがあるにもかかわらず、勝っている試合の終了間際になると、決まってどのクラブも敵陣のコーナーフラッグ付近で時間を潰すことに違和感があるのだ。

 海外リーグにおいても同じように時間稼ぎをするクラブはあるが、そうではないクラブも多数ある。それが顕著なのがバルセロナだ。彼らの高いボールポゼッションを、”攻撃的なスタイル”と捉える向きが多いが、サッカーは攻守が表裏一体になっているスポーツ。バルセロナがボールを保持するのは、攻撃のためであるのはもちろん、自陣であろうと敵陣であろうと、「自分たちがボールを保持し続ければ失点のリスクが減る」という守備的な概念をあわせ持っていることを見落としてはならない。

 バルセロナのようにポゼッションサッカーを貫くスタイルを実践するには、パスを回すための高い技術や連携、連動などが求められる。その中で最も重要になるのが、各選手のポジショニングだ。バルセロナでは4−3−3や3−4−3のフォーメーションが多用され、それによって、選手同士の位置関係は必然的にトライアングルになる。

 味方同士の立ち位置が三角形になることのメリットは、常に複数のパスコースを確保できることと、パススピードを上げられる点にある。動いている相手にパスを出す場合、ピンポイントでタイミングを合わせなくてはならないため、パススピードは遅くなる。だが、味方がポジション変更をあまりせず、位置が定まっていて動きが止まっている状態ならば、ボールスピードを速くして相手を振り回すことが可能になるのだ。

つづく

7/24(月) sportiva
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