[J1リーグ18節]清水 2-0 G大阪/7月8日/アイスタ

「今日はみんな本当に気持ちが入っていて、勝ちたいという執念や泥臭さが素晴らしかったなと思います。詰めなければいけないことはたくさんあるけど、誰かがボケッとする時間帯もなかったし、精神面に関しては今までにない良い試合ができたと思います」


 18節のG大阪戦。自身のプロ初ゴールを決めるなど攻守両面で2-0の完勝に大きく貢献した鎌田翔雅の言葉が、この試合をもっとも象徴しているだろう。

 鄭大世とチアゴ・アウベスという強力2トップを欠き、その他にも怪我人が多く、突出した存在はいない。個の力という面では、中2日の疲労があるとはいえG大阪のほうが上だったはずだが、その差をチーム一丸のハードワークで覆し、2-0の完勝。16節のホーム・甲府戦でも1-0で勝っており、無失点でのホーム2連勝は、リーグ後半戦のスタートとしては最高の形だった。

 では、清水はどこが良くなってきたのか。

 ひとつは、やはり守備の安定が大きい。
「ガンバは中盤がダイヤ型になったりボックス型になったりするんですが、選手が限定する方向を分かってくれているんですね。右と左で限定の仕方が少し違っていても、今日はそこを上手くやってくれて(相手の)サイドハーフがあまり機能しなかったと思います」(小林伸二監督)

 その言葉通り、前半はG大阪のサイドハーフ=藤本淳吾と泉澤仁は効果的な仕事がほとんどできなかった。G大阪の動きが重く、ビルドアップが精彩を欠いたこともあるが、前半のシュート数は清水が12本を放ったのに対し、G大阪はわずかに1本と大きな差が生まれた。ポゼッションではG大阪に60%以上を許したにもかかわらず、ほとんどシュートを許していないという事実は、清水のディフェンスがよく機能していた証と言える。

 一方清水は、攻撃ではテンポ良くパスを回して突破する場面をしばしば作り、高さで上回っていたセットプレーから松原后のゴールで先制。その後もカウンターから効果的に押し込み、相手のミスを突いて鎌田の2点目につなげた。

もうひとつ大きく変わったのは、リードした後の試合運びだ。リーグ前半戦では得点した後、10分以内に失点することが多く、リードすると守りに入りすぎてしまう面もあって、得点後の戦い方が安定しないのが大きな課題だった。実際、前半をリードして折り返した試合は3分1敗と一度も勝てていなかった。

 それが今節は、先制した後もそれまでと変わらぬプレーを続けて、自分たちの流れで試合を進めながら追加点も決めた。後半は、長沢駿と藤春廣輝を投入したG大阪に主導権を奪われたが、少し引いた位置でコンパクトな守備ブロックを作って対抗。

「ベタッと引くのではなくて、センターバックのふたりがラインを上げたりインターセプトを狙ったり、隙があったら(前に)行くというのが出ていた」(小林監督)ところが以前との大きな違いだった。

 リードしても守り切れない、土壇場で追いつかれてしまうといった痛い思いを繰り返してきたなかで、隙なく逃げ切る戦い方を少しずつ学習してきたことが、ここに来て成果として表われてきている。

 また、セットプレーで点が取れるようになってきたこともポジティブな変化だ。リスク管理を徹底した手堅い戦いをするなかでも、セットプレーから点が取れれば勝点3につなげることができる。今回のホーム2連勝では、どちらも先制点はCKからだった。

 こうして勝つために欠かせない要素をひとつずつJ1仕様として身につけてきた清水。その変化と、冒頭で鎌田が語った精神面がかみ合ったことが、サポーターも納得の快勝につながった。昨年(J2)よりも守備に比重を置いた戦い方になっているが、守っている中でも気合いの入ったアグレッシブなプレーが見られるため、観る側のストレスも少なかった。

 あとは、「メンバーが変わっても、同じ気持ちでやれるようにしなければいけない」(鎌田)というのが今後の課題となる。鄭とチアゴの2トップが揃ったなかでも、今節のような戦いができれば、ゴールをこじ開ける力が増して、勝ち切る力はさらに向上してくる。

 ただ、わずかでも慢心があれば、ハードワークやアラートさに緩みがあれば、同じサッカーはできない。そこが盤石になっているのかどうかは、まだ分からない。だからこそ、それを揺るぎないものにしていくことが、次のステップにつながっていくはずだ。

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