「人気のセ、実力のパ」と評されるプロ野球だが、パ・リーグでは昨年、史上最多の1113万2526人の観客動員数を記録した。新規ファン獲得と収益拡大に向けたパ・リーグの最新事情」を紹介する。

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 パ・リーグの共同事業会社「パシフィックリーグマーケティング」(PLM)の2016年度の売上高は約17億円に上り、設立当初の07年から比べて約10倍増と急成長を果たしている。収益の約8割を占める主力事業がインターネット上でパ・リーグの試合を中継する「パ・リーグTV」だ。このデジタル事業はPLMの業績の黒字化だけでなく、高齢化社会で今後尻すぼみが懸念される観客動員の起爆剤としての期待を担う。

 東京都港区にあるビルの一室では「パ・リーグTV」のスタッフが大型テレビに映し出されるプロ野球の映像を凝視しながらリアルタイムにパ・リーグの試合を配信している。シーズン中は50人前後のスタッフが編集を担当する。一括集約しているのはPLMが2015年に設立した「パ・リーグデジタルメディアセンター」だ。

 07年に設立されたPLMの初年度の売り上げは約1億7000万円だった。「パ・リーグTV」が軸となって16年度の売り上げは約10倍に膨れ上がった。現在の会員数は約7万人に上る。PLMマーケティング室の上野友輔プロデューサーは「パ・リーグTVの環境を利用し、現在では女子ゴルフの映像なども配信している」と説明する。

 PLMが「パ・リーグTV」をはじめ、デジタル事業に力を入れるのには理由がある。PLMの調査では、球場への来場者で最も多い年齢層が30代後半から40代。今後の日本の高齢化社会を見据えても、20代から30代前半の年齢層をいかに取り込むかが課題だった。

 PLMの荒井勇気マーケティング室長は「『パ・リーグTV』はいつでも、どこでも見られるのが売りであると同時に強み」と指摘した上で「スマートフォンなどを利用する若い人たちに対し、球場へどうやってきてもらうかを考えると、デジタルでの情報発信が重要になる」と強調する。

 「パ・リーグTV」に加えてPLMが最近力を入れているのが、スマートフォンで利用できるアプリの製作だ。

 PLMでは昨年、球場に来てもらうことを目的に、歩数計の機能を備えたアプリ「パ・リーグ・ウオーク」を製作。このアプリでは、同じチームを応援する参加者同士で互いの歩数を確認することもできる。今回のアプリ製作には米・ハーバード大大学院の公衆衛生学研究チームも参加し、経済産業省も後援。「産官学」での健康増進の取り組みとしても球界から注目されている。

 今回の「パ・リーグ・ウオーク」を主導したPLM執行役員の根岸友喜氏は「プロ野球を見て終わらせるのではなく、健康など社会問題を解決する手段としてあってもいいのでは」と提言する。

 「パ・リーグ・ウオーク」のダウンロード数は5月末の時点でダウンロードが4万件を突破した。IT(情報技術)を活用したファン獲得の取り組みには、成長の余地がまだ残されている。

つづく

7/1(土) 16:05配信 
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170701-00000527-san-base