「来年のことを言えば、鬼が笑う」という。

 ロシアワールドカップまでちょうど1年。ホスト国ロシアでは大陸王者を集めたコンフェデレーションズカップが開催されている。

 現状、日本代表に「来年」を考える余裕はまだない。

 アジア最終予選グループBのトップに立っているとはいえ、サウジアラビア、オーストラリアとは勝ち点わずか1差。残り2試合はそのライバルとの戦いを控えており、まずは上位2チームに入って出場権を得ることに集中しなければならないからだ。

 コンフェデの視察に向かったヴァイッド・ハリルホジッチ監督も、気持ちは勝負の2連戦に向いているはずである。

 だが一方で、本大会を見据えて準備も始めていく必要がある。ロシアの気候や環境面などの情報収集、ベースキャンプ地の検討と今からしっかりとやっておかないと、本番で痛い目に遭う。その部分は過去5大会連続で本大会に出場している分、日本にはノウハウがあるだけに大きな心配はしていないが……。

"引き締め路線"が逆効果

 来年の準備において、検証すべき大きな問題がある。それが本大会までのコンディション調整だ。

 1-1で引き分けた6月13日のイラク戦は、選手たちのコンディションがバラバラであったように映った。気温37度を超えるイラン・テヘランの過酷な環境を差し引いても、コンディションが良くないなと感じる選手がいた。

 いつものように準備期間がなかったわけではない。むしろ今回は十分にあった。シーズンを終えた欧州組を親善試合シリア戦(6月7日)の10日前から段階的に集め、フィジカル合宿を行なっている。

 指揮官はメンバー発表会見の席で「一番心配なのは最終的にはいつも予選を突破できているという考え。その罠にひっかかりたくない」と語っていた。

 欧州組はシーズンの疲労が残るなか、指揮官は心身の引き締めに掛かった。リフレッシュに関しては最低限にとどめた印象だ。国内組はJリーグの試合を終えてシリア戦の2日前に合流したとはいえ、イラク戦に向けて1週間の準備期間があった。

 シリア戦はケガ明けの今野泰幸を先発させるなど、本番モードで臨んだ。結果的には香川真司がケガをして離脱し、山口蛍も今野もイラク戦で先発していない。イラク戦のパフォーマンスを見るにつけても、「引き締め路線」の効果があったとは言い難い。

 「日本人選手は真面目」

 アルベルト・ザッケローニも、ハビエル・アギーレも、そしてハリルホジッチもそう口にする。欧州や中南米の選手とは違う、個性だと言える。

 サッカー解説者時代の風間八宏氏(現J2名古屋グランパス監督)の言葉をふと思い出した。

 「自分がヨーロッパのクラブでコーチをするときは、時間を目いっぱい使って練習させる。なぜならそうでもしないと彼らはやらないから。でも日本人は彼らとは違うメンタリティーを持っている。日本人は何も言わなくても個人で練習をやるから」

 外国人監督が欧州と同じようなノウハウで日本人選手を指導すると、ときに“追い込みすぎ”になりはしないか。今回、ピッチ外でも宿舎に戻ればミーティングの連続だったとも聞く。

 「硬」ばかりでなく「軟」も重要であり、いかにリフレッシュ、リラックスさせるかが抜け落ちていたのかもしれない。準備期間が長いのを幸いとばかりに詰め込みすぎるのは逆効果の怖れがあるということだ。

つづく

現代ビジネス6/29(木) 17:01配信 
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170629-00052101-gendaibiz-bus_all