キアヌ・リーブスといえば、「ハリウッドきってのナイス・ガイ」と誰もが認めるセレブ。不幸な生い立ち、失読症、近親者の死など数々の悲劇を克服した彼を語る多くの美談が、好感度を上げてきた。

 例えば、病気の子供たちやさまざまな団体にひそかに寄付を続ける慈善家で、ホームレスに食糧を与え、ともに時を過ごす博愛主義者。リッチな彼が地下鉄に乗り、女性に席を譲る隠し撮り映像も話題になった。公園で一人寂しく食事する姿に同情したファンが、「悲しいキアヌを励まそう」と運動を起こしたこともある。

 そんなキアヌだから、主演作が良い作品でありますように、と祈ってしまうが、新作「ジョン・ウィック:チャプター2」(日本公開7月7日)に胸をなでおろした。2014年公開のパート1にも増して面白い仕上がりなのだ。

 愛妻と愛犬を殺された伝説の殺し屋ジョン・ウィックが復讐(ふくしゅう)を果たした前作の続編。今回は引退を望みながら闇の国際暗殺組織と交わした血の契約のおきてに縛られ、不本意ながら再びヒットマン稼業に手を染める。

 イタリア・マフィアの幹部サンティーノからの指令は、ボスの座についた姉ジアーナを抹殺すること。

 ローマに飛んだジョンは武器を多量に入手し、古代遺跡カラカラ浴場での彼女の就任パーティーに侵入し殺害。しかし、姉の座を狙ったたくらみを隠蔽するためサンティーノから7億円の懸賞金をかけられたジョンは、殺し屋たちから命を狙われる身に。

 特訓を積んだキアヌの銃器さばきや、武道や殺陣、カンフーと銃を合わせた“ガンフー”など優雅で迫力のアクション。美しいローマを背景に描く撮影技術も素晴らしい。“ネオ・ノワール”と称される今日的テーマの視覚性豊かなこのアクション・スリラーは、劇画的でスタイリッシュだ。

 注目はグラミー賞やアカデミー賞歌曲賞に輝くラッパーのコモンが演じるボディーガード。ローマからNYの地下鉄まで持ち越すジョンとの死闘は、残酷さと多少のユーモア、男のビターな友情を感じる味付け。すでに製作が決定した第3弾への布石なのか。

 ローリング・ストーン誌の映画評論家の「ジョン・ウィックは、カウボーイでサムライでロックンロールだ」の絶賛コメントは、言い得て妙。

 ジョンのストイックさと、前作のラストで救った捨て犬を愛する心温まるシーンが“ナイス・ガイ、キアヌ”に重なった。 (板垣眞理子)

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