準々決勝でマリーに敗れ、ベスト8止まりとなった錦織圭(右) 正直に言えば、錦織圭がもっと悔しさをにじませた表情で記者会見場に現れると想像していた。
だから、いつもと変わらずに淡々と受け答えする彼の姿を見て、いささか拍子抜けした……。

ローランギャロス(全仏オープンテニス)の準々決勝で、第8シードの錦織(ATPランキング9位、6月12日付け、以下同)は、
昨年の全仏準優勝者で第1シードのアンディ・マリー(1位、イギリス)に、6-2、1-6、(0)6-7、1-6で敗れ、自身初のベスト4入りはならなかった。

今回の全仏では、1回戦で土居美咲が腹筋のケガの痛みによって自分の力を発揮できずに敗れた。
彼女は目を真っ赤にして会見場に現れ、質問に答え始めた途端、感情を抑えきれずに大粒の涙を流した。
そんな光景を目撃していた影響もあったが、準々決勝敗戦直後の錦織の表情は何か物足りなかった。

ローランギャロスで2度目のベスト8という錦織の成績は決して悪くはないが、彼の悲願であるグランドスラム初制覇は今回も実現しなかった。

「もちろん負ければ、いつでも課題はあるので、まぁ毎度のことですけど……ポジティブなことも今週はあったので。

クレーシーズンにいい準備ができず、結果が出ていないなか、またいいプレーが戻ってきていた。やっぱりチャンスがありながら、
負けるというのはまた違った悔しさがありますけど、ポジティブな面もあったので、まぁ、いい1週間だったと思います」

こう振り返った錦織だが、マリーとの準々決勝では戦前の予想をくつがえして第1セットを支配した。
試合を見守った解説者の松岡修造氏は、「マリーがいいスタートを切れなかったのは圭のせいであって、本当に出だしはよかった」と絶賛した。

しかし、第2セット第4ゲームで、マリーが初めてサービスブレークに成功してから試合の流れが変わり始めた。
息を吹き返したマリーはベースラインからグランドストロークをよりクリアに、そしてより深く打ってきた。

かつてボリス・ベッカーや松岡氏を指導した世界的な名コーチであるボブ・ブレット氏は、マリー戦直前に、
「圭は、テニスのレベルを持続させることがキーになる」と指摘していたが、まさにその通りの一戦となった。

「圭にベースラインに立ってプレーさせないようにした。圭のセカンドサーブに対していいリターンができるようになった。
双方にとっていい試合ではなかったけど、圭はタイブレークで悪いプレーをしたね」

このようにマリーが指摘した第3セットのタイブレークでは、1ポイントも奪えないという
これまでの錦織からは考えられないようなネガティブな、ミスの多いプレーをした。松岡氏は、マリーに敗れた錦織に精神的な揺らぎを感じとった。

「信じられないタイブレークだった。大事なところで、スポッと心が乱れるというか、どっか(心が)行ってしまったような……。リオオリンピックでラケットを投げた時ぐらいから、
圭のイライラのタンクが、ツアーを含めて普段の生活から、コート上に入った時点で満タンになっている。ちょっと自分の思うようにいかなくなると、ストレスがかかってしまう」

ストレスによって、錦織が本来持つ武器を失ってしまっている状況を松岡氏は懸念する。

>>2以降につづく

2017年6月14日 12時20分 Sportiva
http://news.livedoor.com/article/detail/13200570/