4月から巨人の公式SNSでライブ配信される3軍中継のMCを担当している。G球場の放送ブースからグラウンド
を見つめ、3時間ひたすらしゃべり続けているのだが、これが楽しい。タッグを組む解説者は定岡正二さん、吉村
禎章さんら憧れのレジェンドばかり。後楽園球場の大舞台を目指し、ファームで汗を流していた若かりし頃の話は
、例外なく面白い。何よりもハングリーに上を目指す3軍ナインや独立リーグの選手の奮闘を伝えることに、やりが
いを感じる。

5月22日、対戦するBC滋賀のスタメン表を見て、私は仰天した。先発投手はまだ17歳の現役高校生だったから
だ。日本高野連の登録外とはいえ、「GIANTS」のユニホームを相手に高校生が投げるなんて、前代未聞だろう。

その名は渡辺明貴(あき)投手。186センチの長身から放つ角度のある直球が魅力だ。最速144キロ。3軍だが、
猛者ぞろいのG戦士を相手に、真っ向勝負を挑んだ。気持ちで向かっていったが、強烈な打球を食らった。

「全力で投げましたが、きょうはあまり良くなかったです。NPBの打者の方々は、甘いコースにいっただけで長打
になってしまう。低め低めを狙って投げられるように練習しないと」。5回途中8安打4失点。収穫と課題の詰まった
97球だった。

早実・清宮幸太郎と同世代。本来なら甲子園を夢見て、最後の夏を目前にした季節だろうか。山梨県笛吹市出身
の渡辺は中学時代、硬式の笛吹ボーイズでプレー。卒業後は静岡県内の高校に進学したが、環境になじめず3
か月で退部した。

「辞めた時は、もう野球はいいかなって…」。故郷に戻り、地元の仲間と遊ぶ自由な日々。ある高校のグラウンドの
前を通ると、打球音が聞こえた。血が騒いだ。そして思った。「自分には野球しかない」―。

15年9月から通信制の第一学院高甲府キャンパスに通い、山梨のクラブチーム「山梨球友クラブ」に加入。再び
白球を握った。周囲のサポートもあり、トライアウトを経て、16歳で今年1月、創設1年目のBC滋賀に入団。夢は
NPB入りだ。好素材としてスカウトも注目している。

誰にでも挫折はある。大切なのはその後だ。様々な事情で野球を断念した若者がもう一度、再挑戦できる環境が
あるといい。渡辺は言う。「迷惑をかけた親に恩返ししたい」。その右腕で証明してくれ。野球人生は、やり直し可能
だということを。


報知
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170601-00000206-sph-base