「王の上にある」
「まさに至高の存在である」
「そうなのですね」
「一つの文明に一人だ」
 そうした意味も含んでいるというのだ、皇帝の存在は。
「複数の文化、複数の宗教、複数の民族の上に立ちだ」
「一つの文明を代表する」
「それが皇帝ですか」
「王とはまた違う」
 では王はどうした存在かもだ、アッディーンは言った。
「一つでもいいのだ」
「一つの宗教の上にあってもいいのですね」
「一つの民族の上でも」
「それが王ですか」
「王はそれでいいのですか」
「そうだ、そして王は皇帝に認められ任じられもする」
 完全にだ、皇帝の下位にあるというのだ。
「王は何人いてもいいがな。一つの文明圏の中に」
「しかし皇帝は違う」
「一人だけですね」
「ローマでも中華でもだ」
 そうした古代の帝国でもというのだ。
「皇帝は一人だったな」
「はい、僭称はありましたが」
「そうでありました」
「欧州もだ」
 そのローマが母体となっている文明圏もだというのだ。
アッディーンが今言う欧州とは文明圏という意味での欧州だ。