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タイコ「きんぴらゴボウの作り方?いいわよ教えてあげる」

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2018/05/06(日) 19:44:08.39ID:ssj2vnT+0
サザエさん出演のタイコさんを主人公とした物語
退屈な毎日を送るタイコが青年に惹かれていくお話

書き留めたものを少しずつ投稿していきます

タイトル:「錆びた日々」
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2018/05/06(日) 19:47:50.97ID:ssj2vnT+0
序章
 私の日常的生活は判を押した毎日である。結婚して二年、二歳になる子供の世話と家事で一日は過ぎてゆく。程よい疲労感と忙しさ

に追われる毎日はもう慣れたものだ。慣れてしまうと一種の飽き、心満たされない時が僅かに襲ってくる。
 
 息子、イクラの成長を間近で見られているというのに贅沢な悩み、いや身の程知らずの傲慢である。旦那のノリスケさんとの仲も悪

くはないし団地の中での隣人トラブルやストレスもないのだからこの穏やかな安定した生活を噛みしめるべきだ。

 洗濯物をたたみながらとりとめなく浮かぶ考えを馳せたり否定したりしていた時、電話が鳴った。
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2018/05/06(日) 19:51:01.05ID:ssj2vnT+0
「リリリ、ジリリリリン」

 早く出なければせっかく寝かしつけたのにイクラが起きてしまう、誰だろう。

「はい、波野です」

「もしもし、タイコさん? サザエですけど、今大丈夫かしら?」

「あら、サザエさん。先程イクラを寝かせたばかりですから大丈夫ですよ」

「あらそうだったの。イクラちゃん起きてないわよね? ごめんなさいね。間が悪くて」

「いえいえ、大丈夫ですよ」

 いつもこの人の電話は長くなることがほとんどだ。今日は早く終わるだろうか。時計を

見ると十六時半、夕食の支度を始めなければいけないから十七時には話を切り上げて切らなければ。
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2018/05/06(日) 19:54:37.23ID:ssj2vnT+0
「実はね新しい美容院が隣町に新しく開店したらしくて、半額券を頂いたからタイコさん

にあげようと思って電話したの。頂いてくれるかしら?」

「丁度、近い内に美容院に行こうと思っていた所なのよ。頂けるならありがたいわ。

でもサザエさんやおばさまの分は大丈夫かしら?」

 美容院に今月初旬に行こうと思っていたがずっと行けずもう中旬に差し掛かってしま

っていた。イクラの洋服代やノリスケさんのスーツの修繕代で出費がかさんでいたのと、

家事で忙しかったので来月行こうかと悩んでいた所だったので半額券を頂けるならありがたい。

「実は私も母さんもつい先週、別の美容院にいった所なのよ。それならタイコさんに

差し上げてはどうかって母さんが言うものだから、ね」
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2018/05/06(日) 20:02:01.67ID:ssj2vnT+0
「そういうことなら是非、ありがたく使わせていただきますわ」

「よかったわ、じゃぁいつ渡せばいいかしら?」

 良かった、取り敢えず美容院代が浮かせられる。隣町だけれども電車賃を差し引いても

いくらかは得をする。

 半額券の受け取り日と他愛のない雑談をして十七時には会話を終わらせて受話器を置

く。早速、明日に半額券を頂いてイクラを預かってもらい美容院に行く段取りをつけた。

 取り敢えずお返しは何を持っていこうか。サザエさん家に行く途中でケーキかお菓子を

買っていくのが無難だけれども気を使わせてしまうだろうし、折角の浮かせた美容院代

が無駄になってしまう。丁度お隣から頂いたお裾分けのゴボウがあるのを思い出した。

大家族のサザエさん家にとって野菜を頂けるのはありがたいだろうし私も多く貰いすぎ

て困っていたから助かる。
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2018/05/06(日) 20:10:44.38ID:ssj2vnT+0
「バーブブ、バーブ、バーブ」イクラがぐずらずに素直に起きてくれたようだ。

「あら、イクラ起きたの。ちょっと待っててね、夜ご飯のカレーがもう少しで出来るからね」

「ハーイ、ハーイ」イクラは上機嫌で喜んでいる。

 トントン拍子に物事が進んでくれる時は爽快だ。



 忘れ物はなし。ごぼうも持ったし家の鍵も閉めた、洗濯物も干したしやり残した家事も

ない。イクラもタラちゃんと遊べるとあって浮足立って歩いてくれている。

 イクラを預けて隣町まで電車で移動し、美容院に行ってサザエさん家に寄り自宅に帰

ってくる頃は十六時頃だろう。ノリスケさんは早く帰ってくると言っていたので食事を

十八時には作り終えなければ。
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2018/05/06(日) 20:18:39.35ID:ssj2vnT+0
 磯野家の玄関口でサザエさんから美容院の半額券を頂き、ゴボウを渡してイクラを預

かってもらう。

「タイコさん、わざわざ気を使わせちゃったようでごめんなさいね」

「いえいえ、お隣の実家が沢山送ってくれたようで私も使い切れないでいたからお気に

なさらないで」型に決まった社交辞令の会話を済ませる。

「それでは、十五時頃には戻りますのでイクラをお願いします。イクラ、いい子にしてるのよ」

「折角の一人の時間なんだからゆっくり美容院に行ってらして」

「ハーイ、ハーイ」イクラも機嫌よく返事をしてくれる。ここで泣き出したらたまらな

いので足早に玄関から遠ざかる。
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2018/05/06(日) 20:28:24.27ID:ssj2vnT+0
 本当は美容院に行ったあと、ゆっくりデパートで買い物でもしてお茶を飲みたい所だけ

れどそんな暇を潰している時間も余裕もないので早く戻らないと。

 久し振りに隣町まできた。3ヶ月ぶりくらいだろうか、当然というかやはり景観や

お店などの町並みは変わっていない。

 駅から五分程の通りの所にある、新しく開店した真新しい造りの美容院を見つける。

異国情緒を漂わせるような片仮名のフォントで『フリズーア』と店名が書かれている。

これまた、細部にこだわって掘っている銀色の取手を掴んで扉を開けて店に入りながら

店名について考える。英語ではないようだ、何語だろうか。

「いらっしゃいませ。ご予約されたお客様でしょうか?」
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2018/05/06(日) 20:37:26.90ID:ssj2vnT+0
 若い同年代の女性店員が近づいてくる。美容院で働く人特有のセットに時間がかかりそ

うな最近流行の髪型をしている。一直線の長い黒髪を同じ長さで切り揃えている。確か、

ワンレンヘアとかいう髪型。

「いえ予約はしてなくてこちらの開店セール・半額券を頂いたので本日初めて来店しました」

「はい、少々お待ち下さい。どうぞこちらにお掛けになってお待ち下さい」

 入り口近くの待合席に促されたので座る。店員は半額券を手に店内奥の準備室に入っ

ていく。まさか予約が必要であったのだろうか。見る限り八席ある内の三席しか使って

いないし明らかに店員も忙しそうにはしていない。お店が開店して二週間しか経ってい

ないのに初めての利用客に店の予約も何もないだろう。半額券の裏には店の簡易的な

地図しか記載されていなかったし電話帳にもまだ電話番号が載っていない店だから電話

番号を知るよしもない。
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2018/05/06(日) 20:51:30.04ID:ssj2vnT+0
 もしこれからの予約客で席が埋まっていて今日、髪が切れなくてなっても私が悪い

わけではないという言い訳を考えるのと同時に、美容院に来られる別日の時間帯とこ

れから帰ることになった場合の予定を考える。出来れば急な予定変更は御免被りたい。

「お待たせ致しました。あちらの席へどうぞ」三分ほど待ったあと店員に促される。

 何とか急な予定変更とはならずに済みそうだと安堵する。

「いらっしゃいませ。本日はどのように致しますか?」同じく若くて私と同年代くらいの男性店員。

「このままの髪型で短くカットして頂ければ大丈夫です」

 いつも美容院で頼む同じ注文言葉を説明する。カットもセットの仕方もいつもと変わ

らない方法で伝える。店員は納得、承知して髪のカットを始める。
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2018/05/06(日) 20:57:02.14ID:ssj2vnT+0
「このお店に来るのに迷ったりされませんでした?」髪を切りながら接客においての常套

文句の会話。この社交辞令のようなどうでもよい会話がいつも無味無乾燥に感じられる。

ありきたりで一般的な質問や回答をして時間が過ぎてゆくのと髪が短くなっていくのを待つ。

「店名のフリズーアってどんな意味何ですか。英語ではないですよね?」ふと湧いた疑問を尋ねてみる。

「ドイツ語で美容院って意味です。ちょっと小洒落て外国語を使用した店名にしたいって

いうことで店長が決めたようです」

 何故わざわざドイツ語にする意味があったのだろうか。日本語で記載すればいいものを。

最近はカタカナ表記が多くてそもそもどんな意味を持っているのか分からない店名や

商品名が多くて困る。鏡越しに定員の名札が見える。
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2018/05/06(日) 21:09:25.25ID:ssj2vnT+0
 寺尾直貴、名前の意味はきっと真っ直ぐに貴高く育って欲しいという願いを込めてだろうか。私よりも少し身長が高いくらいで外見に特段の特徴がない男性。顔立ちはいたって普通、集中しようとした時に細めた目元がスマートに見えるくらいだ。
美容院の店員ではあるが髪は黒いまま、床屋で切ってもらったような短い髪である。自分の髪に余り関心はない性格なのだろうか。

 取り留めない会話と雑談をとつとつとすましている内にカットとセットが終わった。いつもと変わらない髪型だが少し知的に見えるのではないかと内心得意気になる。

「ありがとうございました。またどうぞご利用下さい」お会計をすませ次回使えるというクーポンを頂いて店を出る。
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2018/05/06(日) 21:20:46.69ID:ssj2vnT+0
 次はこの店を利用しないだろう。値段は自分が住む町とあまり変わらないし電車賃を使ってまではこないだろう。今日の夜ご飯は何にしようかと考えながら磯野家に向かう。



「あらタイコさん、素敵になったわよ」

「ありがとうサザエさん。イクラはいい子にしてたかしら?」寝てしまったイクラを抱っこしながら顔に涙の跡がないか見る。どうやら癇癪は起こしてないようだ。

「ええとってもいい子だったわ、タラちゃんと遊び疲れてさっき寝たところよ。どうだった新しい美容院?」

「綺麗なお店で私が行った時は空いていていい感じのお店でしたわ」特に悪いところもなかったので美容院の良かったところを伝えておく。
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2018/05/06(日) 21:34:04.92ID:ssj2vnT+0
「次回使えるクーポンを頂いたのだけれど、隣町までは遠くて私はもう行く予定がなくてサザエさん使うかしら?」私には不必要なクーポンを差し出す。

「あら、ありがとう、折角だから頂くわね。何かの機会があったら使わせてもらうわ」このままゴミ箱行きになりそうだったクーポンを受け取ってもらう。

 寝ているイクラが起きないように抱えたまま帰路につく。洗濯物を取り込んで食事の準備を進めなければ。

 味噌汁、肉じゃが、きんぴらゴボウ、干物、ノリスケさんが帰る前には全ての準備が完成した。十八時、このまま寝ていては夜眠れなくなってしまうのでイクラを起こす。

「バーブブ、バーブバーブ!」苛立ちの声。気持ちよく寝ていた所を起こされ不機嫌に怒っている。
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2018/05/06(日) 21:45:10.98ID:ssj2vnT+0
 なだめてイクラを椅子に座らせる。先に食べていよう、すぐにノリスケさんも帰宅するだろう。

 食事を食べ終えて洗い物を片付け、イクラと一緒にお風呂をすませてイクラを寝かしつけて洗濯物にアイロンをかけ終え雑誌を半分程読み進めてもノリスケさんは帰ってこなかった。残業かそれとも誰かと呑んでいるのだろうか。

「ただいまぁ、いやぁごめんごめん。マスオくんと駅でばったり会ってついつい飲みすぎちゃったよ」顔を赤め泥酔した状態で夜二十三時過ぎにやっと帰宅してきた。

「遅くなるのは構わないけど、電話くらいしてくださいな。折角、夜ご飯の準備をして待ってたのに。何か食べます?」預かったカバンと背広を直しながら訊く。

「いや、いいよ。もう風呂入って寝るから。タイコは先に寝てていいよ」ぶっきらぼうな回答。
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2018/05/06(日) 21:53:02.98ID:ssj2vnT+0
「そう、じゃぁ先に失礼するわ」

 期待などしていないがやはり私が髪を切ったということは気づいていないようだ。そんな細かい事に気づくような人ではないのは百も承知であったがつまらない。

「あ、タイコ」素っ気ない声で呼び止められた。髪の変化が分かったのだろうか。

「外の玄関上の蛍光灯、切れかかっているようだから管理人に会ったら伝えておいてくれるか。もうすぐ切れるよ」一瞬でも期待したのは失敗だったと思う。

「ええ、伝えておくわ。おやすみなさい」扉を静かに閉めて寝室の床につく。無心の状態で緩やかな眠気に誘われて眠りにつく。

「いやぁ、昨日呑み過ぎてもう二日酔いだよぉ」気怠げな声で眼を擦りながら席に座る。

「バーブブ、バーブバーブ!」イクラが失敗を知った上司のような呆れ顔で言う。
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2018/05/06(日) 22:11:09.35ID:ssj2vnT+0
「イクラも駄目なパパですねって困っているようよ」

「ハーイ、ハーイ」イクラは朝から元気に今日も一喜一憂している。

「いやぁ、参ったなぁ。今日は早く買えるからなイクラ」

「是非、そうして下さい」念押ししなくても懐事情があって今日は真っ直ぐに帰ってくるはずだ。

 カバンを玄関前まで持ちノリスケの送り出しをする。

「そういえば、タイコ・・・・・・」靴を履きながら訊いてくる。

「外の上の蛍光灯が切れかかっていたから、管理人に言っておいてくれるか」

「分かったわ。伝えておきます」その話は昨日も聞いたが覚えていないのだろう。わざわざ言う気力も湧かず、そのまま流して返事をした。

 毎日がいつもと同じ、判を押した生活。穏やかだけれどもあくびが出るような鬱屈とした一日がまた始まった。今日は商店街でなんの食材を購入して使おうか・・・・・・。つまらない。
0019名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW 0397-Nmna)
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2018/05/06(日) 22:17:31.74ID:CPm/6sbs0
しえん
0020名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/06(日) 22:25:49.20ID:ssj2vnT+0
とりあえずこれで序章は終わり
まだ書き溜めてる途中で今は第三章まで書いてます
スレが残ってたら明日また連稿します
0022名も無き被検体774号+ (アウアウカー Saeb-4vU2)
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2018/05/07(月) 10:46:32.56ID:4QlrvpRJa
期待
0024名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/07(月) 20:20:27.93ID:ydTUCAZE0
また連稿します
改行の指摘があったので少し直しました
まだ見辛かったらすみません
0025名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/07(月) 20:30:01.93ID:ydTUCAZE0
第一章
 いつもより少し疲れた。婦人服のバーゲン売り場でイクラを連れて色々と歩き回った。途中からイクラがぐずり出して抱っこをして歩き回ったので足がクタクタだ。デパート内で休憩出来る場所は埋まってしまっていたので帰り道にある喫茶店に入る。

 すぐ座りたいと思いよく店内を見回さず、飲み物を受け取ってから席を探したのは間違いだった。既にどこの席も埋まっていて空きがないようだ。仕方がないイクラを抱っこしたままアイスコーヒーを飲みながら帰ろうかと決めかねていたところに後ろから声がかかる。

「あの、席よかったらどうぞ。俺、もう出ますので」視界に入っていなかった後ろからの声、振り返って顔を合わせる。どこかで会った顔だ。
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2018/05/07(月) 20:40:44.10ID:ydTUCAZE0
「いえいえ、大丈夫ですよ。座るのは諦めるので」遠慮の言葉を発しながらどこで会った人か思い出そうとするも思い出せない。誰だったか、この青年は。郵便局の人かそれともクリーニング屋の人だったか。

 座りたいのはもちろんそうだが、雑誌を広げ何かを一生懸命ノートに書き写していたであろうその机上の様子から察するにどうも店からすぐに出る様子には見えない。広げられた雑誌には女性と男性と思わしき後頭部といくつかの端書が書かれている。
ファッション雑誌、それもヘアスタイルの雑誌のようだ。

 そうだ、この男性は以前行った美容院の店員だ。店名と名前を瞬時に思い出そうとするが出てこない。
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2018/05/07(月) 20:50:35.03ID:ydTUCAZE0
「そんな事言わずに、どうぞどうぞ。すぐに片付けますので・・・・・・あれ、確かタイコさんですよね?」ノートを閉じようとした所で彼も私と面識があったことに気づいたようだ。

「先週、髪を切らせて頂いた『フリズーア』の寺尾直貴です。覚えてます?」

 私が店名と名前を思い出す前に名乗ってくれた。寺尾直貴、そうだ確かそんな名前だったはず。

「ええ、覚えています。この前はどうもありがとうございました。席は本当にいいんですよ、座ったままで結構ですので」踵を店外にゆっくりと向ける。

 さて、どうしようか。全くの赤の他人であったら申し訳なさからすぐに店を出るところだが、知っている方だ。もう一度だけ、席の促しをしてくれるのなら座ってしまおうかと思案する。
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2018/05/07(月) 21:05:06.33ID:ydTUCAZE0
「そうですか・・・。じゃあ、空いてる席にどうぞ座ってください。俺は構わないので。今、机の上を空けますよ」

 確かに四人がけの席で椅子が三つ余っているので荷物を置き、イクラを置いても私は座れる。ここはお言葉に甘えさせていただこう。

「すみません、ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきます。」机の上に広げていた雑誌を閉じて場所を狭めてくれた。私の飲み物とトレーを置く場所が出来たのでトレーを置かせて頂き座る。

 四人がけの席にしては机が小さいと思った。二人がけの机と変わらない大きさだ。店内のスペース確保のためなのだろう。
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2018/05/07(月) 21:22:14.40ID:ydTUCAZE0
「今日はお休み?カットの勉強ですか?」口に入れたアイスコーヒーが喉を潤し気持ちが安堵した所で尋ねる。

「ええ、今日は休みで新しいヘアスタイルの雑誌が発売したので最近の流行りの髪型のピックアップと重要そうな所をノートに書き写してたんすよ。家だとなかなか集中出来ないんでこの喫茶店でやってました。タイコさんは買い物?」
瀬戸物の器に口を付けコーヒーを飲みながら答える。

「そうよ。バーゲンセールがあったので色々と購入した帰りよ。ちゃんとノートにまとめてるなんて勉強熱心なのね」何かに熱中出来ることがあることに羨ましく思う。

「田舎で働いててこの春、こっちに出てきたんですけどまだまだ未熟なんで色々と勉強しないと他の人たちに追い付けないんでね」
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2018/05/07(月) 21:37:40.50ID:ydTUCAZE0
 同い年くらいかと思っていたけれど年上なのだろうか。

「私と年齢多分近いですよね。寺尾さんはおいくつなんですか?」

「二十四です。同じ年齢すかね?」

「二十二歳です。二歳上ですね」年下かとも思っていたがやはり年上だった。

「そうすね。お子さんですか?」椅子の上でぐっすりと寝ているイクラの顔を覗き込み尋ねる。

「ええ、二歳よ。最近は色々と動き回るから手が掛かって大変なのよ」

「意外ですね。タイコさん、独身かと思ってました」

「あら、褒め言葉がうまいわね。さすが美容師だわ」普段からやはりお世辞を言い慣れているのだろうなと感心する。
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2018/05/07(月) 21:51:08.33ID:ydTUCAZE0
「いや、なんていうか落ち着いてて、生活感がないっていうか料理とか出来なさそうに見えてたんで」あっけからんと言ってのける。

「あらそうですか。これでも主婦としてちゃんとやってるのよ」全く私をそんな風に認識していたとは。

「美容院に来た時、普通に会社で働いているOLかと思ってましたよ」

「結婚する前はデパートで販売員をしてたわ」

「そうなんすか。俺よりも年下なのに子供も育てて家事もしてすごいすね」

「すごくなんてないわよ。慣れればみんな出来るようになるわ」

 私にとっては誰もが出来る家事なんかより熱心に仕事に取り組んで休日でも勉強しているあなたのほうがすごいと思う。
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2018/05/07(月) 22:09:45.65ID:ydTUCAZE0
「俺、全然料理が出来ないんすよね。卵を割るのにもいっつも失敗しちゃって殻が入るんすよね」大げさに眉と目を細めて困った顔を作る。

「意外ね。手先が器用だから料理は得意かと思ったわ」そもそも料理なんてしないでインスタント食品や冷凍食品で食事を済ませていると思っていたが料理はするのか。

「いや、それが全然なんすよ。こう、髪を切る時の手先使いと料理をする時の手先使いはまったく違うんで、うまく出来ないんすよね。料理は得意なんすか?」

「得意というか、人並みには出来るわよ。毎日三品か四品は料理を作って出してるわ。昨日はサバ煮と酢豚と味噌汁とサラダを作ったわね」毎日献立を考える苦労はあるが料理は苦手ではない。
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2018/05/07(月) 22:24:12.94ID:ydTUCAZE0
「へぇ、さすが主婦って感じすね。ちなみに、美味しい親子丼ってどうやったら作れます?いつも微妙な味になってしまうんすよ」

「さすがも何も作らないといけない義務があるからね。私の料理の仕方でいいの?もしかしたら私の要領が悪くて作る時、長く時間がかかってしまうかも知れないわよ」先程の私の印象に対する当てつけ。

「あれ、さっきのこと気にしてます?いやいや、すいません俺の勘違いでした。頼みます」

 集中するときや困ったと時に目元を細める仕草が何故か惹かれる。

「しょうがないわね、特別よ。親子丼ね、まずはあなたが作る親子丼の作り方を教えてくれるかしら?」
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2018/05/07(月) 22:36:28.18ID:ydTUCAZE0
 彼が知る親子丼のレシピを聞き、作り方で間違っている所、効率が悪いところを伝えて私が普段作る時のレシピを教える。彼は真面目にノートの後ろ側の空いているページにメモを取っていく。

 親子丼の他にトンカツ、肉じゃが、ポトフ、コロッケと続いて作り方の相談や質問をされ、それに丁寧に答えた。彼が取っていたメモはもうノートの四ページ程を埋めてしまっていた。

「・・・・・という訳でコロッケを揚げる時は温度をよく見て百八十度前後になっていることを確認して鍋に入れすぎないようにすることね」

「なるほど、そういう理由があったんすね」熱心に続けてメモを取り続ける。
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2018/05/07(月) 22:47:32.01ID:ydTUCAZE0
 時間を気にせずにずっと喋ってしまっていた。時計を見るともう十六時を回っている。そろそろ帰らないと、長居しすぎた。アイスコーヒーは既になくなっており氷すらコップの中に残っていない。イクラもそろそろ起きてしまうだろう。

「すっかり話し込んじゃったわね。そろそろ帰るわ、食事の支度をしないと」

「いやぁ、ありがとうございました。これで料理が少しは上手く作れるようになると思います」はにかんだ笑顔を出す。

「いいえ、どういたしまして。もしまた料理のことで分からないことがあったら」本屋で販売されている料理本を購入することを勧めようとした時、遮られた。

「あの電話番号教えてもらってもいいですか?分からないことがあったらまた電話で聞こうと思うんで」淡々とした口調で言われる。
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2018/05/07(月) 23:03:15.83ID:ydTUCAZE0
「ええ、電話番号は、◯三―○○◯―△△△△よ」

「電話するなら平日の昼間だけにしてね。旦那が取るかも知れないから。男性から電話が掛かってきて話していると変に勘ぐられちゃうから。あと外出してて出られない時もあるから」

「分かりました。作り方で分からないことがあったらまた教えてもらいますね」

「少しは自分で努力してみてね。じゃぁね、直貴さん」

 イクラを抱きかかえ洋服が入った紙袋を持って店をあとにする。歩き出した途中でイクラが目を覚ます。自分で歩きたいらしく抱き下ろして手を繋いで歩く。

 久し振りに夫以外の男性と長く話した気がする。下の名前で男性から呼ばれたのも久し振りであった。いつぶりであったろうか、思い出すのが難しいくらい前であったと記憶を巡らす。
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2018/05/07(月) 23:09:55.83ID:ydTUCAZE0
 どうして簡単に電話番号を教えてしまったのだろうか。だって、単純に電話する内容は料理相談のことだけだとお互いに分かっていたから。だから、罪悪感や恥ずかしいことは一切感じなかった。でも、心の中ではどこか疼くような思いが込み上げる。

 別れ際、彼を下の名前で呼んでいたことにふと気づく。最初は名字で呼んでいたのに何故か名前を口にしていた。彼が親しげに話していたためにきっとつられてしまったのだろう。

 息子を連れて歩くタイコの足取りは喫茶点に入る前よりも軽やかになっていた。
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2018/05/07(月) 23:13:00.34ID:ydTUCAZE0
これで第一章は終わりです
また続きは明日投稿します
分かりやすい文章になるよう心がけるつもり
0039名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5311-Mne9)
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2018/05/08(火) 04:35:05.50ID:4jKoG7It0
ノリスケとのスケベ行為描写は今後ある?
0040名も無き被検体774号+ (アウアウオー Sac2-okSW)
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2018/05/08(火) 11:22:02.97ID:fKjYG0Lba
>>38
乙!面白いし読みやすいよ!
0041名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 19:59:19.70ID:OpmjX66b0
今日も順次書き込んでいきます

>>39ノリスケとのスケベはないです
過激な描写は余りないですが期待してて下さい

>>40お褒めの言葉どうもです
0042名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 20:12:08.27ID:OpmjX66b0
第二章
 彼に電話番号を教えてから三日経つが連絡はこない。変に期待する必要もないというのに手が空いた際にふとそのことが頭の中にちらつく。もう今後一切電話なんてこないかもしれないのに。もしくは外出していた際に電話がきていたのだろうか。

 まるで高校生みたいだ。彼とは何もなくただ話をしていただけなのに何故か彼との会話を待ち遠しく思っている。少し話をしただけの関係で何もやましいことはしていない。

 彼との会話の中では私は自由です。同じように妄想の中の私は彼をからかったりいじめたり茶化したり信じられないほど自由で奔放でした。

「・・・だからタイコはゆっくり買い物でもしてきたら?」パンを片手に訊いてくる。

 朝食を食べながらノリスケさんの喋ることを話半分に聞いていたら何かを聞き逃していた。
0043名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 20:35:39.78ID:OpmjX66b0
「え?ごめんなさい何の話だったかしら?」パンにバターを塗るのに集中していて聞き落としたことを匂わせながら再度聞く。

「土曜日。俺はイクラの面倒を家で見てるから買い物でもしてきたらって話。イクラと一緒じゃなかなかゆっくり買い物が出来ないだろろう?」

「でも今はそんなにすぐ必要になるものはないから大丈夫よ」明後日に一人で買いに行く物があるか逡巡するも急を要するものはない。

「そうか?息抜きも必要だぞ。あ、もうこんな時間か行ってくるよ」急いで手にしていたパンを口に詰め込み席を立つ。

「あなた、いってらっしゃい」玄関までカバンを持ちノリスケさんを送り出す。
0044名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 20:50:36.05ID:OpmjX66b0
 ノリスケを送り出し使い終わった食器を洗い終え、イクラと遊び掃除機を掛けていたら電話が鳴った。

「はい、波野です」急いで電話を取る。彼だろうかそれとも昨日と同様にまたサザエさんだろうか。

「もしもし、直貴です。タイコさん?今、大丈夫でしたか?」彼の明るい声。

「ええ、大丈夫よ。どうしたの?」息を整えて答える。

「実は料理のことでまた聞きたいことがあって電話しました。チヂミの作り方って分かります?」

「チヂミ?分かるわよ、簡単に作れるわよ」

 チヂミの作り方について彼に伝える。前と同じようにメモを取りながら聞いてくれているようだ。
0045名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 21:03:26.10ID:OpmjX66b0
「どう?料理の腕は上達したかしら?」

「まだまだ全然ですよ。包丁使いが慣れなくて。でもこの前教えてもらった通りに親子丼を作ったら美味しく出来ましたよ」

 彼が頑張って包丁を使いながら悪戦苦闘している様子を考えると微笑ましく思う。きっと目元を細めてぎこちなく包丁を使っているのだろう。

「今日は仕事、お休みなの?」

「ええ、人参を少し多く買ってしまって、今日は色々な料理に挑戦しようと思ってたとこなんすよ」自分の時間を好きなだけ使えるというのはなんて羨ましいことだろう。

「あと、きんぴらゴボウの作り方って知ってます?」

「きんぴらゴボウの作り方?いいわよ教えてあげる」
0046名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 21:16:43.45ID:OpmjX66b0
「ゴボウはまだ買ってないんだけど、次の機会にでも作ってみようと思って」

 キッチンの方を見る。まだ貰い物のゴボウが二、三本余っているのを思い返す。

「丁度よかったわ、実はお隣さんから沢山ゴボウを貰って使いきれてないからよかったら貰ってくれないかしら?」

「え?いいんですか?もらえるなら是非もらいます!」電話口からいっそう明るい声で返答が返ってくる。

 どうやって渡そう。家に来てもらう方法もあるが誰かに見られたら煩わしい。

 単純な疑問に単純な答えが結びつく。まるで何か大発見をしたかのような錯覚が襲う。

「だったら、あなたの家に持っていくわ。渡すのと一緒にきんぴらゴボウの作り方も教えてあげられるもの」明快な声で伝える。
0047名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 21:27:58.89ID:OpmjX66b0
「本当ですか?でもわざわざ持ってきてもらうのは悪いですよ、確か隣町ですよね。俺、取りに行きましょうか?」遠慮がちにくぐもる声。

「隣町なんて電車ですぐだから大丈夫よ」

「そうですかじゃぁ、お願いします。いやぁ良かったぁ、実は包丁さばきが上手くできないでいたんでこれで包丁の使い方も教われますね」はっきりした口調での回答。

 彼の玄関口でゴボウを渡し、その場でレシピを教えて帰ろうと思っていたが、そうか一緒に作りながら教えることもできるのか。彼はそのつもりで言葉の意味を取っていたようだ。なら、そうしよう。そのほうが効率も良い。
0048名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 21:34:22.74ID:OpmjX66b0
 ふと湧いた疑問をすぐ片付けて会う日時に考えを巡らす。本当なら今日、今すぐにでも行きたいがイクラがいる。イクラを連れて行けば彼に料理を教えている間、イクラは退屈になりぐずりだして騒いでしまう。

 かといって誰かに預けるのも気が引ける。サザエさんなら突然の今日のお願いでも快く引き受けてくれるだろう。だけれどお喋りなサザエさんが誰かに言って、もしノリスケさんに変に伝わったら面倒だ。イクラを預けた私が一人で隣町まで行く所を見られて伝わるのも面倒だ。
影では歩くスピーカーといわれている彼女に知られるのが厄介である。

 別な日はないか、私が一人で出掛けられそうな日はないかと考える。まるで天啓を受けたかのように朝の会話を思い出す。考えがまとまらないまま口に出す。
0049名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 21:41:12.74ID:OpmjX66b0
「その日なんだけど明後日の土曜でも大丈夫かしら?今日も明日もちょっと忙しくて時間が取れなくて」嘘ではない、今日も明日もイクラがいて手が空かない。

「あ、もしかして土曜日だと仕事かしら?」口に出していて気づいた。土曜日だと私は都合がいいが彼は都合が悪いかもしれない。

「いえ大丈夫です。今日と土曜はちょうど仕事が休みなんで空いてますよ」

 彼の回答に安堵する。良かった、時間の都合が互いについた。

「じゃぁ、土曜日にそちらに伺うわ、何時頃がいいかしら?」

「何時でもいいですよ、タイコさんの都合がいい時間で」

「じゃぁ十時に伺わせてもらうわね」声が弾む。

「分かりました。お待ちしてます、俺の住所は・・・・・・」
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2018/05/08(火) 21:48:11.13ID:OpmjX66b0
 近くにあるメモ用紙を素早く手に取り、彼の住所を書き連ねて復唱する。

「じゃぁ、土曜日の十時に伺わせてもらうわね」両手で受話器を持ち彼の返事を待つ。

「はい、よろしくお願いします。失礼します」

 受話器を戻して彼との会話を思い出して余韻に浸る。彼に電話番号を教えた時と同様、罪悪感は一切ない。ただ料理を教えるだけだから何も責められることはしていないと誰にでもなく自分に説明する。

「イクラ、デパートに行くわよ」

「ハーイハーイ」クレヨンで画用紙にチューリップのような花を描いていたイクラが元気よく返事をする。

 かけていた途中である掃除機を早々にしまい込み出かける準備をする。
0051名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 21:54:13.44ID:OpmjX66b0
 ノリスケさんとイクラと食卓を囲みカボチャを箸で割りながら伝える。

「あなた、朝の話だけどやっぱり土曜日は出かけさせてもらうわ。デパートでゆっくりと買い物でもしようと思って」ビールを呑んでいたノリスケさんと目を合わせる。

「おぉ、分かった分かった。イクラは俺が面倒みてるから行ってきな。イクラ、土曜は俺と一緒に遊ぼうなぁ」

「バーブブ、バーブ」少し不機嫌な顔と声。

「どうしたぁ、イクラ。パパと一緒だと楽しいぞぉ」イクラをなだめながら笑いかける。

 割れたカボチャを器用に箸で掴み口に入れ、咀嚼しながらノリスケさんとイクラに笑いかける。
0052名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 22:02:28.51ID:OpmjX66b0
 洗濯物を干しながら口元が緩んでしまう。明日が待ち遠しい。これ程、明日が待ち遠しく思ったのは久し振りである。セールが明日であった時や好きなテレビドラマが明日に控えている時とは違う別種類の待ち遠しさだ。心が弾み、ハミングを口に出しそうになってしまう。

 ノリスケさんのズボンの中に固いものがあるのに気づく。ポケットに小銭が入っていた。いつもは洗濯機が傷んでしまうからと注意するが今日はそんな注意をする気はない。こんな些細なことに関しての苛立ちやため息はつまらないものだ。

 結局、私が美容院に行ってから一度もノリスケさんは髪の変化に気づかなかった。それどころか自分で気づいて指摘してきた外の玄関上の蛍光灯が新しく変わったことにも気づいていない様であった。今はその鈍感さもありがたく感じる。
0053名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 22:19:51.62ID:OpmjX66b0
 明日はどんな格好で行こう。新品の真新しい洋服を着て行くわけにはいかないが小奇麗な洋服で行こう。薄緑色のスカートと七分袖の小さなフロントフリルが付いた薄水色のソフトブラウスに決める。

 彼の部屋はどんな感じであろうかと考える。住所を聞いた限りではアパートのようだ。一Kだろうか一DKだろうかどんな物を置いているのだろう。きっと美容師関係の道具や雑誌が所々に置かれているのだろうかと考えを巡らせる。

 時計を見るがまだ、十時。明日が訪れるのが本当に待ち遠しい
0054名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/08(火) 22:22:14.82ID:OpmjX66b0
これで第二章が終わりです
続きはまた明日書き込みます
まだ第三章が書き終わっていないのと文章が長くなってるので明日は少しだけの書き込みになるかと思う
0057名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5311-Mne9)
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2018/05/08(火) 23:54:31.53ID:4jKoG7It0
次回の展開予想

イクラが流暢に「ママは美容師の男の家にドスケベしに行ってまちゅよ」とノリスケに言う
0059名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 21:44:36.50ID:yEril7Er0
今日もぼちぼち書き込みます
0060名も無き被検体774号+ (アウアウオー Sac2-okSW)
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2018/05/09(水) 21:47:22.90ID:umkTXuV+a
>>59
頑張れー
0061名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 21:48:57.80ID:yEril7Er0
第三章
 土曜日、身支度を整えてカバンを持ち二本のゴボウを袋に入れる。

「タイコ、ゴボウなんて袋にいれてどうするんだ?」新聞から目をそらして訊いてくる。

「デパートに行く途中で友達に頂き物のゴボウを渡して行こうと思ってね」あらかじめ考えていた質問の回答をする。

「じゃあ、気をつけてな。俺はイクラの面倒をしっかり見てるよ」

「ええ、お願いします。多分、十六時頃には戻りますので」イクラと目が合う。

「イクラ、パパの言うことをしっかり聞いているのよ」

「チャーン」いつもの元気な返事を後に外に出る。
0062名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 21:59:03.04ID:yEril7Er0
 清々しい心地よい風を受けながら商店街を通り、駅に向かう。知り合いに会って呼び止められることがないように早足で通りを抜ける。誰かに会って立ち話をしている暇はない。

 駅の改札を抜け、電車に乗り込む。どうにか知り合いの人と会うことはなかった。隣町まで行けばもう知り合いに会うことはないだろう。ただ電車に乗って移動するだけだというのにこんなにもドキドキするとは。
こんなドキドキする感覚は普段の毎日の生活では味わっていないことを自覚する。

 降りた隣町の駅で設置されている地図を見て彼の住所の辺りを探す。ここから徒歩十五分ほどで行ける距離である。道順を頭の中に入れて彼のアパートへと歩みを向ける。
0063名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:00:56.51ID:yEril7Er0
 まだ九時半過ぎ、夕方までは時間がたっぷりある。きっときんぴらゴボウを一緒に作るだけではなく他の料理も一、二品教えながら作れるだろう。料理を食べて彼が笑みを浮かべる顔を思うと私の顔からも笑みがこぼれる。

 彼が住むアパートは全六戸の木造瓦葺二階建てであった。一〇三のインターホーンを押す。インターホーンから尋ねる声もなく扉が開かれる。

「いらっしゃい。わざわざ、ここまですみません。どうぞどうぞ入って下さい」彼の明るい声を聞きながら部屋に足を踏み入れる。

「お邪魔します。はい、これお裾分けのゴボウ」パンプスを足から脱ぎながら彼にゴボウを手渡す。
0064名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:04:17.76ID:yEril7Er0
「ありがとうございます。今日はこのゴボウを無駄にしないように美味しいきんぴらゴボウを作らせてもらいますよ」屈託なく笑う彼の顔から視線を部屋の中に移す。

「落ち着いた感じの部屋なのね。もっとごちゃごちゃしてて壁には人気バンドのポスターでも貼ってあるかと思ったわ」一DKの部屋の中は意外に質素で必要最低限以外の物は置いていないようであった。

「大慌てで部屋の掃除をして綺麗にしましたよ。邪魔な物は全部押し入れにしまい込んだんで」

「そう、わざわざどうも。じゃぁ、早速きんぴらゴボウの作り方を教えるわね」

 カバンを隅の床に置き蛇口をひねって手を洗う。
0065名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:06:38.66ID:yEril7Er0
 彼はジーパンと新しい紺色のカジュアルシャツと薄い茶色のジャッケトを身に着けている。シワがない所も含めると新しく購入したのではないかと考える。わざわざ今日のために準備していたのだとしたら、と思うと愛おしく切なさがこみ上げてくる。

「まずはゴボウを水洗いして皮をこそぐ所からよ」手を洗い終えた彼に伝える。

「こそぐって?」ゴボウを水で洗いながら訊いて来る。

「包丁の背でゴボウの皮をそぐことよ。たわしでもいいけれどたわしの奥にゴボウの皮が入って取れなくなってしまうから、包丁でそぐのが最適ね」

 彼が慣れない手つきでゴボウの皮をそいでいく。この少し小さいキッチンでいつも彼は料理をしていたことを思うと微笑ましくなる。
0066名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:08:51.94ID:yEril7Er0
「包丁の後ろ側ってこういうことにも使えるんすね」ぎこちなくゴボウの皮をこそぐ。

「そうよ。ゴボウの皮をこそいだら次はささがきにして水に入れてアク抜きよ」

「ささがきってこうすか?」ゴボウの真上から包丁を切り込もうとしている。

「ちょっと貸してみて」彼から包丁とゴボウを預かる。

「こう斜め上からまな板にゴボウを当てて安定させて、包丁を斜めから一定の速度で動かして切っていくのよ・・・・・・。こんな感じ、やってみて」五、六回ゴボウをささがきにして彼に包丁とゴボウを渡す。

「そうそう、そしてゴボウを回しながら続けて。動かす包丁にゴボウを沿わせる感じね」少しずつゴボウのささがきが出来ていく。
0067名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:10:43.84ID:yEril7Er0
「へぇ、このささがきって空中でやるイメージがあったんすけどまな板に斜めから着けるんすね」

「空中でやる方もいるけれどそれだと肩が凝るし包丁がブレちゃうからこのやり方が最適よ」

「あと、このゴボウは細いから必要ないけれど、もし太いゴボウの場合は二、三回間に切り込みをいれて割ってからやると、同じように細くて綺麗なささがきが出来るわ」

「なるほど、勉強になります」慣れてきたのか包丁を動かす速度がスムーズになる。

 ささがきがどんどんでき、ゴボウが小さくなっていく。

「ゴボウが小さくなってきたら後は斜めにごぼうを切って千切りにしていいわ」

 彼が熱心にゆっくりと確実にゴボウを刻んで千切りにする。集中するため、目元を細めている。笑っているように目尻が少し下がる。
0068名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:13:13.84ID:yEril7Er0
「それでゴボウのささがきが終わったらこのボウルに入れて。水にさらしてアク抜きよ」

 ボウルを手に取って流しに置いて水を入れる。このままずっと見ていては釘付けになってしまうので体を動かす。

「アク抜きをしている間に人参を千切りにするわ。もうすでに人参は皮をむいてあるようね」彼が先程冷蔵庫から取り出したラップに包まれている人参を見る。

「ええ、手っ取り早く進められるよう皮と芯だけは外して置きました」ささがきが終わりまな板からこぼれたゴボウを取りながら答える。

「千切りにする時はまず人参を斜めに薄切りにしてからね」

「薄切りの厚さってこれくらいすか?」人参に当てた包丁は明らかに十センチの厚さだ。
0069名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:22:18.27ID:yEril7Er0
「それじゃ厚切りになるわね、それよりももっと薄く。そう、それくらいね。それでそのまま薄切りしたやつを少し重ねてずらして端から切っていけば綺麗な千切りになるわ」

 ずれて重ねた人参に包丁入れていく。綺麗な千切りになっていく。

「おお、すげぇ。今まで作った中で一番綺麗な千切りですよ」屈託ない心情を吐露する。

「そうそう、上手いわ。直貴さん、いい感じの太さよ」

「千切りってこういう風にも切れるんすねぇ」

「じゃぁ次はこの切ったゴボウと人参を炒めるわよ」ゴボウをザルに上げ水気を切る。

「鍋にごま油を入れて、少し熱してからゴボウと人参を入るわ」

 温まった鍋にゴボウを入れる。今、先程切ってもらった人参も入れてもらう。

「このまま炒めて。菜箸でまんべんなくかき混ぜて頂戴」
0070名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:23:55.81ID:yEril7Er0
 水が蒸発する音と油が発する音がする中でごま油のいい香りがしてくる。

「少し炒めたら次に砂糖おおさじ一杯を入れるわ」鍋に砂糖おおさじ一杯をいれてもらう。

「そのままさっきと同じようにまんべんなくかき混ぜ続けて頂戴」

「そういえば、今日息子さんはどうしてるんですか?」突然の予期せぬ質問。

「今日は私の知ってる人に預けてるわ。ここで砂糖がなじんだら酒、みりん、醤油を加えるわ。大体目分量でいいわ。これくらいね」話題を自然にそらす。

「で、ここに醤油を入れるんだけど最初はこれだけ入れて、ちょっと様子を見るわ」

「量って大さじなん杯とかグラムとかで決めなくていいんすか?」
0071名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:25:12.43ID:yEril7Er0
「料理は慣れなのよ。食べる人や時によって味の好みが変わるから作る都度、だいたい目分量でやっていいのよ。一に作って、二に作って、三に聞いて、四に作るのよ」今即興で作った言葉を伝える。

「へぇ、案外こだわってやる必要ないんすねぇ」菜箸で鍋の具材をかき混ぜながら漏らす。

「当たり前よ。お店で出すわけでもコンテストに出すわけでもないんだから。毎日つくる食事として、ちょっとは気を抜いて作らないと他の作業が全然進まなくなるわ」

「あ、その発言。ちょっと主婦っぽい」小馬鹿にしたような笑いを漏らす。

「ちょっと、真面目にやってよ」微笑しながら彼を肘で軽くこづく。
0072名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:26:58.22ID:yEril7Er0
「それできんぴらゴボウを作る時は少なめの煮汁で煮るのよ。ひたひたにする必要はないからね」煮汁が多すぎていないことを確認する。

「後は蓋をして弱火で五分ほどゴボウが柔らかくなるまで煮るわ。あとちょっとで完成よ」鍋に蓋をして、火を弱める。

「きんぴらゴボウはタッパーに入れて冷蔵庫に入れれば四、五日は持つからね。あと小分けにして冷凍することも出来るから。小分けに冷凍しておけば自然解凍でそのままお弁当にも入れられるし、いろんなアレンジが出来るわ。
だからきんぴらゴボウを作る時はばっさり沢山作ってしまったほうがいいわね」

 普段作った後のきんぴらゴボウの用途を伝えるも、彼は微笑みを作ったまま鍋を見ている。
0073名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:28:44.83ID:yEril7Er0
「ちょっと、何。また馬鹿にしてるでしょ」笑いながら、彼をまた肘でこづく。

「いや、違いますよ。関心してたんですよ。沢山作って小分けにする方法もあるんだなぁて。いつも料理は食べる分だけを作ってたんで」手を横に振り、否定しながら釈明する。

「そうなの?ひとり暮らしなんだから休みの時に沢山作って小分けにして冷蔵庫にしまって、食べる時にレンジで温めて食べたほうが時間はかからないし経済的よ」

「そうすよね。今後はそうさせてもらいます」

「もう、蓋を取っていいわ。味見をしましょう」ゴボウを取り味と固さを確認する。

「味はどう?ちょっと甘みが強いなら醤油を加えるけど」いつも味見をする味になっていて安堵する。
0074名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:31:50.33ID:yEril7Er0
「いや、この味で問題ないです。いい感じです」

「じゃあ、このまま強火にして煮汁を絡めるようにして混ぜて。ちょっと濃い目の味にしたほうが日持ちしやすいのよ。それで後は汁気がなくなったら完成よ」

「いやぁ、いい匂い。うまそうです」ゆっくりと鼻から息を吸っている。

「どう?次からは一人で出来そう?」

「ええ、何とかやってみせます」強い自信で意気込む。

「もう一、二品作れそうね。何か他に作りたいものあるかしら?ちょっと失礼」

 冷蔵庫を空けて入っている食材を見る。
0075名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 0adb-a7mP)
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2018/05/09(水) 22:36:06.83ID:yEril7Er0
今日はここまでです
書き込む量にたいし書き溜めてるストックが追いつかなくなってきてしまったので明日は数行だけかもしれない

GW空けの仕事で気力が続かず疲れる
新社会人が五月病になる気持ちが分かる・・・
0078名も無き被検体774号+ (アウアウオー Sac2-okSW)
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2018/05/09(水) 22:41:16.36ID:umkTXuV+a
>>75乙!
読んでたらきんぴらごぼうが作れそうだ
0081名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uwJI)
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2018/05/10(木) 20:30:42.23ID:vzCEbhMY0
また、ぼちぼち書き込みます
今日は昨日より短めです
0082名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uwJI)
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2018/05/10(木) 20:41:23.02ID:vzCEbhMY0
「俺、作れる料理の種類そんなにないんで、教えてもらえるならなんでもいいすよ」

「そう?でも冷蔵庫にあまり食材はないからたいした物は出来なさそうね」

 冷蔵庫に入っている食材を見回して何の料理が作れそうか思案する。あまり時間がかかり過ぎるものでは駄目だ。教えることも考えれば倍の時間がかかってしまう。

「とりあえず、味噌汁としょうが焼きがよさそうね。直貴さん、簡単すぎるなんて思わないでね。味噌汁は意外と奥が深いし、しょうが焼きはタレを焦がしてフライパンにつかないようにするのが難しいんだから」人差し指を立てて得意気に伝える。

「いやいや、そんなこと思ってないすよ。もう教えてもらえるだけでありがたいです」拳を握り小さなガッツポーズを作る。
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2018/05/10(木) 21:06:54.05ID:vzCEbhMY0
 きんぴらゴボウの作り方を教えた時と同様に包丁の使い方、食材の調理理方法について説明していく。調味料についてや洗い物の仕方、効率的な料理方法なども伝える。

 彼が真面目に料理に取り組む姿を横目で見たり、冗談を言い合って笑い合ったりしながら料理を完成へと進めていく。

 濃い時間だと感じた。いつもの味気ないバスの中の景色のように通り過ぎていく日々とは違った時間だ。目の前に流れ込んでいる、いつもとは違う景色が広がっていることに驚きと嬉しさが沸き立つ。
絶対に不可能なのにこのままどこにもたどり着かなければいいのにと無意識に願ってしまう。
0085名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uwJI)
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2018/05/10(木) 21:25:50.47ID:vzCEbhMY0
 味噌汁もしょうが焼きも失敗することなく完成した。作った料理の数々を小鉢に入れ、皿へと盛り付け、居間の卓に運び並べていく。

 二人分の昼食が完成した。味噌汁のいい匂いが鼻をつく。緊張のせいか、いつもよりお腹が減っている。早く食べ始めなければお腹が鳴りそうだ。

「じゃあ、いただきます」手を合わせて軽くおじぎをする。

「美味しい料理を作ってくれたタイコさんに、いただきます」手を合わせて喋りながら彼もおじぎをする。

 いつも聞くいただきますとは違ういただきますを初めて聞いた。新鮮な心地よさがする。
0086名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uwJI)
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2018/05/10(木) 21:38:27.25ID:vzCEbhMY0
 はたから見たらどんな関係に見えるだろう。恋人同士?夫婦?いいえ、本当は人前では親しくすることも手を繋ぐこともはばかられる関係です。こんなにも楽しく心が弾むというのに罪悪感や自責の念が湧いてくる。
今だけ、今日だけは楽しさに身を浸そうと自分自信に言い聞かせる。

「美味しい。いつもとはやっぱり味が違う。すげぇ美味いです」優しく明るい声で発する。

「次作る時も今日教えた通りに作れば同じ味になるわよ」

「分かりました。ちゃんと美味しい料理を作れるよう、頑張ります」
0087名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uwJI)
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2018/05/10(木) 21:42:13.64ID:vzCEbhMY0
今日は短いんですがここまでです
明日以降でまた書き込んでいきます
土日で終われればいいがちょっと微妙
0088名も無き被検体774号+ (アウアウオー Sa93-mOCQ)
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2018/05/10(木) 21:49:23.25ID:V+dg0ASGa
>>87乙!
焦ることはないから納得いくようにすすめてくだせい!
味噌汁や生姜焼き作りも駆け足になった感じがする!
0090名も無き被検体774号+ (アウアウオー Sa93-mOCQ)
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2018/05/12(土) 23:54:20.43ID:QT3zxJgNa
>>89
保守ありがとう
0092名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 20:57:52.53ID:oe+6RfUr0
保守どうも!
土日で書き留めようと思っていたが全然進まなかった、、、

取り敢えず第三章が終わるところまで書き込んでいきます
0093名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 21:07:30.59ID:oe+6RfUr0
 外からパラパラと軽い静かな定期的な音がする。雨が降ってきたようだ。

「あ、降ってきましたね。今日は夜までずっと降るそうですよ」

 天気を見ずに出てきたので傘を持ってこなかったことに気づく。ベランダから外を見た時は晴れていたので大丈夫だろうと思っていたが違ったようだ。いつも、朝起きたら必ず天気は確認するようにしていたのに。
ここまで浮かれていたのかと赤面しそうになる。

 彼との食事を終え空になった食器を流しへ持っていく。彼が食器を洗い、私が洗い終わった食器を拭いて元の場所に片付けていく。とても不思議な気分だ。いつも行っている家事の一つであるのに初めてのような新鮮さがある。
きっと彼の部屋で彼と一緒に作業をしているからなのだろう。
0094名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 21:19:27.58ID:oe+6RfUr0
「ご苦労様」洗いものが終わった彼に笑いかけて言う。

「まだ時間大丈夫ですか?お茶飲みます?」彼が急須と湯のみ茶碗に手をかける。

 時計を見る。もう十三時半、あと一時間もいれないだろう。

「ええ、まだ大丈夫よ」お茶を一、二杯飲んだら帰らなければ。

「じゃあお湯を沸かして持っていくので座ってて下さい。タイコさんはお客さんなんですから」ポットに水を入れながら言う。

「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えさせて頂きます」

 湯のみ茶碗二つだけを持って台所から離れる。何かしらの支度をしなくて済むのは助かる。
0095名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 21:30:47.71ID:oe+6RfUr0
「ねぇ、帰る時傘を借りてもいいかしら?今日持ってきてなくて」座布団に座り直し訊く。

「ああ、いいですよ。ビニール傘でよければ」ポットに電源を入れる音がする。

 傘を借りたら返しにまたこなくてはならない。それを計算して持ってこなかったのではないかと邪推されていないか不安になる。彼はそんな性格が悪い人ではないと分かっているのに。考えすぎてしまう。

「傘、後日返しに来るわ。玄関のところに掛けて置いておくわね」打算的な人と思っていないよう祈る。

「返しに来なくてもいいですよ・・・・・・と言いたい所なんですけど傘一本しかないんで返して頂けるなら嬉しいっす」
0096名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 21:45:08.64ID:oe+6RfUr0
「明日。仕事よね?大丈夫、傘なくても?」

「明日の朝にはやむみたいなんで、明日はとりあえずなくても大丈夫すよ」

「ねぇ次の休みはいつ?また料理を教えるわよ」駄目元でも訊いてみる。

「え?またいいんすか?それはありがたいっす!」

 ポットから水が蒸発する音がだんだん大きくなっていく。

「次は水曜が休みですけどタイコさんは大丈夫なんですか?」

「ええ・・・・・・その日は都合が付くから大丈夫よ」考えている素振りをして答える。本当は都合が付こうが付かまいが来るつもりでいるのに。

 水曜日は普通の平日だからイクラが手元にいる。どうしよう。サザエさんにお願いして預かってもらおうか。
0097名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 21:54:56.01ID:oe+6RfUr0
「何の料理が作りたい?少し難しいものでもいいわよ」苦しいことを考えたくなく会話を続ける。あとで考えて決めればいい。

「サバの味噌煮とか作ってみたいす。あとハンバーグとか」沸騰し終わったポットと急須を持って彼が卓に戻ってくる。

 彼がいれてくれたお茶を飲みながら水曜に作る料理を彼と話して決める。次はサバの味噌煮とハンバーグと大根サラダを作ることになった。

 なんて至福のときだろうか。いつも飲むお茶が数段美味しく味わって飲めた。料理の献立をこんな風に楽しく決められたのは本当に久し振りである。

 ノリスケさんが休みの時は昼食を食べ終わった後、すぐに今日の夜ご飯はなんだと聞いてきていた。そう聞かれて献立を考え答えていた時は辛かった。
0098名も無き被検体774号+ (アウアウウー Sa89-0+7M)
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2018/05/13(日) 21:55:16.77ID:wf9MDWfqa
ここまで読んだ━━⊂二二二( ^ω^)二⊃━━ここまで読んだ
0099名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 22:09:22.42ID:oe+6RfUr0
 いや、こんなことを思い出すのはやめよう。思い出さないようにしなくては。だって、今はこんなにも楽しいのだから。

「じゃあ、そろそろ失礼させて頂くわ。料理頑張ってよ」彼に微笑み立ち上がる。

「いやあ、今日は本当にありがとうございました」頭を丁寧に下げる。

「あ、これよかったらどうぞ。似合うかどうか分からないんですけど」

 彼も同じように立ち上がり本棚の横に置いてある小さな紙袋を手に取る。

「え、いいのよ別にお返しなんて。わざわざ買ったの?」

「いえ、美容院で従業員から商品券を貰ったんでそれで買ったやつです。安物なんで遠慮しなくても大丈夫です」袋から小さな箱を取り出し開ける。
0100名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 22:20:14.86ID:oe+6RfUr0
 小さな薄紫色の丸みが付いているノンホールピアスが二つ。耳に穴を空けないで付けられるピアスだ。確かにウィンドウに陳列してあるような高級品ではなく雑貨店で売られているようなピアス。だが、小さいからこそ付けた時に上品さを醸し出すだろう。
薄紫色だというのもより一層に上品さを上げてくれる。

「ありがとう、嬉しいわ。大切に使わせていただきます」彼の手から小さな箱を貰う。

 直貴がタイコに渡したピアスは一時間も雑貨店の中を回って決めたものである。商品券を持ちながら店の中を悩み歩きながら見て回っているのを見かねた店員が声をかけ、上品な女性に合う物を、との要望に店員がお勧めしてきたのがコレである。

 内心、安物ね、と笑われるのではないかとヒヤヒヤしていたが目の前にいるタイコさんが屈託なく喜んでいるのをみて直貴は救われる思いでいる。
0101名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 22:37:43.80ID:oe+6RfUr0
「じゃあ、傘お借りして水曜日にお返しにくるわね。さっき伝えた食材の準備だけお願いね」パンプスに足を入れながら彼に伝える。

「大丈夫です。ちゃんと忘れないようにするんで」水曜までにあらかじめ準備する食材が書かれたメモを指ではさみ横にふる。

「車に気をつけて帰ってくださいね」

「子供じゃないんだから大丈夫よ。プレゼントありがとうね、直貴さん」扉を開けながら彼に手を振る。

「いえ、こちらこそ」目元を細め同じように軽く手を振り、直貴は綻んだ顔でタイコを送り出す。
0102名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 22:47:27.38ID:oe+6RfUr0
 雨が降っているがそんなことは全然気にならないくらい上機嫌で足を進める。とても楽しかった。まるで夢を見ていたようだ。いや、本当はさっきまでが現実で今から戻る場所が夢の中なのでないかと思ってしまいたい。

 でも、そんな都合がいい自分勝手は許されるはずがないと自分に言い聞かせる。本当の現実に戻らなければ。歩みを進めながら緩んだ頬を元に戻し真面目な顔で駅に向かう。電車に乗り自分の住む町に戻る頃には、雨が煩わしいと思っている主婦の顔へと変わっていた。
0103名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 22:56:35.88ID:oe+6RfUr0
 デパートの中へ入り化粧室に入って、彼から先程貰ったばかりのピアスを耳に付ける。とても綺麗だ。似合っていなくても彼から貰ったという理由で付けていただろう。切った髪にすら気づかない人だ。このまま付けて帰っても問題はないだろう。
万が一気づいてもデパートで買ったと言えばいいのだから。

 化粧室から出て早歩きでデパート内の紳士服売り場に足を運ぶ。すぐに注文受付カウンターに直行し店員に呼びかける。

「木曜日に取り寄せをお願いしていた波野です」

「はい、波野様ですね。少々お待ち下さい」紙袋へと入れられた商品を受け取り、支払いを済ませる。
0104名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 23:07:49.20ID:oe+6RfUr0
 木曜日にデパートへ来た時にわざわざ陳列されていない商品をカタログの中から選び、取り寄せをお願いしていた商品を受け取る。同様に子供服売り場、婦人服売り場、靴屋でも取り寄せをお願いしていた商品を受け取る。

 紙袋をいくつも持ち家に帰宅する。これで一日デパートを見て回っていたという行動にぬかりはない。

「ハーイハーイ!」玄関の扉を開けると中部屋からイクラの出す元気な声が聞こえてくる。

「もう駄目だ。疲れたよー」イクラの馬役になっていたノリスケが声を上げている。

「あら、楽しく遊んでいたようね」
0105名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 23:10:12.17ID:oe+6RfUr0
「おう、お帰りー。もうずっと馬役になっててクタクタだよ」イクラを背中から降ろし散らばったおもちゃを片付け始める。

「遅くなってごめんなさい。今、食事の準備をするわね」

「ずいぶん、買ったんだな」床に置いた紙袋を見て言う。

「ええ、おかげさまでゆっくりと買い物が出来たわ」

 いつからこんなに嘘がうまくなったのだろう。平気で口から出る言葉が自分のものではないと感じてしまう。
0106名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 23:15:39.86ID:oe+6RfUr0
 食事を終えてお風呂に入りイクラを寝かしつけたあと、キッチンのテーブルで雑誌に視線を落とすが頭の中では彼との会話、彼の表情、彼の仕草をひとつひとつ思い出す。時間を忘れたように思いふけっていたら隣にノリスケさんが立っていた。
いつの間にか居間のソファから移動していたことに気づかなかった。

「なぁ、タイコ。久し振りにどうだ?」

 顔を上げる前に話しかけられて肩に手を乗せ触れてくる。耐え難い嫌悪感が襲い、寒気が体中に走る。

「ごめんなさい。今日、疲れているから」肩をのけぞらせて彼の手を外そうとするが乗せられたまま手をどけない。

 言葉に出来ない嫌気がする。汚らわしく憎悪が溢れ出そうになる。
0107名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 23:23:01.90ID:oe+6RfUr0
「なぁ、ちょっとだけでいいからさ」服の上から膨れ上がった股間を見せつける。

 下卑た目で私を見下ろしていることに腹が立ち耐えられなくなる。なんて汚らわしく意地汚いのだろう。無様で哀れで淫らで薄汚く非常識な欲望を向けられて苛立つ。

 ノリスケさんが後ろに周り、両肩に手を置こうとしてくるので勢いよく立ち上がる。

「ごめんなさい、本当に今日はもう疲れてるの。もう、寝かせてもらうわ」小走りに扉を開け寝室に入り布団に潜り込む。

 今日あんなにもいいことがあったのに、どうしてこんな陰鬱な気分にならなければならないのだろうか。つらく虚しさが襲ってくる。もう一度彼のことだけを考えながら眠気に身を任せて眠りに入る。 
0108名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/13(日) 23:29:16.17ID:oe+6RfUr0
第三章はこれで終わりです

今の所、起承転結の転に入ったくらいです
もうちょっとだけ続きます

次は明後日の書き込みになりそう、、、
0111名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW 5511-mOCQ)
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2018/05/14(月) 19:32:02.40ID:wMkYh93a0
やーっと読めたー!ww
>>108乙!
続き楽しみにしてます!
0113名も無き被検体774号+ (スッップ Sd43-ZdvW)
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2018/05/15(火) 20:23:52.21ID:XTbAam16d
>>37
0114名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/15(火) 21:59:44.81ID:ubbL5+HW0
今日もちょっとだけ書き込んでいきます
取り敢えず区切りのいいところまで
0115名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/15(火) 22:01:49.85ID:ubbL5+HW0
第四章
 今日は日曜であったがどこにも行かずイクラと家で過ごした。絵本の読み聞かせやおもちゃで遊んでいたらいつの間にか夕方になっていた。ノリスケさんは私との気まずさからなのかイクラと遊び疲れるのが嫌なのか外にパチンコに行ってしまい、夕方頃に帰宅してきた。

 三人で夕食を囲む。何か話をしなければ。

 水曜日が訪れるのは待ち遠しいが、それまでは普通に過ごさなければ。家事や料理は通常どおり滞りなくすませなければならない。
0116名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/15(火) 22:14:57.01ID:ubbL5+HW0
 彼と会う息抜きのような時間は別世界だ。どちらかのためにどちらかを失うとか、そういう世界ではない。彼と会う時間は普段の日常を満たしてこそある。この二つの世界があってこそ、健やかに生きていける。どちらもあって私は満たされる。どちらもないと生きていけない。
完全に分離した、別世界そのものだと錯覚する。

 だけど、これからも二つの世界を持って生きていける自信はない。どこかできっと心の均衡が取れなくなる。

 焦って、安心して、また不安になって、また焦る。いつまでこうしているんだろう。いや、いつまでこうすることができるんだろう・・・・・・。

 ノリスケさんに話す会話を考えようとするが、話すべき共通点が出てこない。とりあえず無難な話をしなければ。
0117名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/15(火) 22:24:07.47ID:ubbL5+HW0
「明日から月曜日。また一週間の始まりね」彼と目を合わせる。

「ああ、そうだな。また長いな。主婦は納期や締め切りに追われなくていいよな。まだ原稿が上がっていない人が多くて大変だよ」気怠げに豆腐を崩しながら言う。

「あら、主婦だって時間に追われているわよ。買い物や家事や子育てで」

 悪気はないのだろうが心の奥底で主婦を軽視されていることに苛立つ。

「満員電車での通勤や上司と作家との板挟みに比べれば楽なものだよ。替われるものなら替わりたいよ」ビールを飲みながらため息を吐く。

 右目の下瞼がひきつりそうになった。どうせ私には労働することが無理だと決めつけての発言。確かに数年しか働いたことがなく、ノリスケさんが抱える負担は想像でしか出来ない。
そのつもりはないのだろうが、俺は有能でお前は無能だと暗に言われたのではないかと思ってしまう。
0118名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/15(火) 22:32:44.28ID:ubbL5+HW0
 お互いの無知からくる誤解だ。共通認識のずれ、今日パチンコで負けて悔しいのだろう、理不尽に怒る必要はないと自分に言い聞かせるがどうしようもなく苛立つ。

「そんな辛い気苦労をしてくれているから、私達はありがたく暮らしているわ。感謝してるわよ」

 変に喧嘩をするのはよくない。冷静にならなければ

「そうだな」面倒臭そうにテレビの方を見る。

「バーブバーブ」ご飯を食べ終わったイクラが始まったアニメを見たいらしく椅子から降りたがる。

「イクラ暴れると危ないわよ。今、降ろすから待ってね」イクラを子供椅子からかかえ降ろしてあげる。
0119名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/15(火) 22:38:29.59ID:ubbL5+HW0
 イクラが食べた食器を重ねて、食事に集中する。

 もし、イクラがいなくてノリスケさんと二人きりだけったら、きっとこの机の真ん中にあるサラダを入れたガラスボールを床に叩きつけて粉々に粉砕してたであろう。ヒステリックに泣き出して喚き散らしていたかもしれない。

 自分が自分で嫌になる。せっかく作ったマーボーナスの味がしなくなる。

 タイコが食器の洗い物をしてお風呂に入っている時にノリスケがイクラに話す。

「タイコ、不機嫌そうだったな」

「バーブ?」何を言っているのかという顔をする。

「イクラも大人になったら分かるさ。大人の問題があるんだよ・・・」

 ここは大人の余裕と寛容さを持って接してあげなければな。タイコは生理なんだろう。

 涼しい顔をして物分りの良い夫の顔を呈する。
0120名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 23db-uCqk)
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2018/05/15(火) 22:47:26.17ID:ubbL5+HW0
今日はここまで
続きはまた近々書き込むのでお待ちを

ドラマ、ゴーストライターを観ながら動力を上げるわ
0122名も無き被検体774号+ (アウアウオー Sac2-XkxN)
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2018/05/17(木) 00:21:50.18ID:yOlDjLCNa
>>120乙!
あまり余計な事言って創作意欲の邪魔しない様に気をつけるわ!お身体大切に!
0123名も無き被検体774号+ (ワッチョイW c639-gQlO)
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2018/05/17(木) 00:42:39.46ID:Q1iy6YUx0
対抗馬さん
0124名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW 0d11-XkxN)
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2018/05/18(金) 14:44:51.09ID:qIchrZyk0
0125名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/19(土) 23:38:22.64ID:XnKahhRd0
書き込みます
dat落ちする前に終わらせねば
0126名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/19(土) 23:40:28.14ID:XnKahhRd0
 今日も家事と掃除をいつも通りにこなす。サザエさんに水曜日、イクラを預かってもらうための電話をする。

「もしもし、サザエさん?突然のお願いになるんだけど、明後日イクラを預かってもらえるかしら?友達のお見舞いに行かなければならなくなってしまって」

「あら、大丈夫よ。何時頃からかしら?」

「十一時頃から十六時頃までお願いしたいんだけど大丈夫かしら?」

「ええ、大丈夫よ。タラちゃんもイクラちゃんと遊べるなら喜ぶわ」

「申し訳ないけど、お願いします。では水曜にお伺いしますね」

 受話器を置き。イクラに喋りかける。

「イクラ、水曜日サザエさん家に行くわよ、タラちゃんと遊べるからね」
0127名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/19(土) 23:41:56.42ID:XnKahhRd0
「ハーイ、ハーイ」イクラが喜んで笑う。

 ノリスケさんは私の言動に対して微塵も疑いは持っていない。不安になることがなくて安堵するがそれと同時に心の底で寂しさが浮かぶ。

 朝、ゴミに出す袋を縛っていた時ノリスケさんが出勤時に捨ててくると言ってゴミ出しを代りにしてくれた。いつもならゴミ出しの曜日もよく分かっておらず関心なんて示さないのに。突然の手伝いに驚いたがノリスケさんはノリスケさんで気を使ってくれたのだろうと思う。

 変な不信感を持たれないためにも水曜までは普段取りに過ごそうと決める。
0128名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 00:06:31.27ID:3uV43OEZ0
 火曜日、イクラと一緒に今日と明日の夕食を購入するために行った商店街の魚屋さんでカツオちゃんと会う。

「タイコおばさん、こんにちは」元気な挨拶。

「あら、カツオちゃん。お使い?偉いわね」

「姉さんが買い忘れてたものがあって僕がお使いで頼まれたんだよ。全く姉さんには困ったものだよ」呆れたような困った顔で答える。

「でも、ちゃんと断らずに買いにきたのは偉いわね」

「まあ、お駄賃を貰ったからね、断るわけにはいかないよ。それより、最近ノリスケおじさんどうです?優しいですか?」

「え、ノリスケさん?いつもと普通な感じだけど?」
0129名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 00:54:35.08ID:3uV43OEZ0
 何を聞かれているのか分からない。何故、急にノリスケさんの話題を出したのだろう。変に顔の表情を変えず聞き返す。

「昨日、マスオさんと帰りにバッタリ会って飲みに行ったらしくて、タイコおばさんが最近家事で忙しいので今朝はゴミ出しをしてきたって自慢してたんですよ」

「そうね。確かに昨日はゴミ出しをノリスケさんがしてくれたので助かったわ」

「姉さんがお父さんにもマスオ兄さんにも家事を手伝って欲しいってボヤいてましたよ」

 どうして昨日の今日でよくもこれだけ人の噂が簡単に広まってしまうのだろう。小さな町で起こる出来事に一喜一憂して、楽しむ。そんな監視社会のような町が煩わしく思ってしまう。皆、寛容と言う名の無関心を貫いていてくれたら楽なのに。
0130名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 00:56:29.19ID:3uV43OEZ0
 ノリスケさんが自慢していたというゴミ出しなんて家事に入らないものだ。あんなゴミ袋一つを捨てにいったくらいで大きな顔をしていることに苛立ちを覚える。

 今回の出来事も他の人達にとっては小さな日常のひとつなのだ。きっと『男たちの家事』という名前で物語でも繰り広げているのだろう。そんなどうでもいいことに関わるのが億劫に感じる。早くこの場を切り上げて去りたくなった。

「あら、そうなの。家事を少しでも手伝ってくれるなら主婦は大喜びよ。カツオちゃん買ったのはお肉?早く帰らないと傷んじゃうわよ」買い物袋にいれてある中に目をやる。豚肉らしきものが入っている。

「ああ、そうだった。ノリスケおじさんに会ったらもっと家事を手伝うように言っときますよ。じゃあ、失礼します」
0131名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 00:57:44.29ID:3uV43OEZ0
「ええ、気をつけてね」

 急いで走っていくカツオちゃんを見送りイクラと一緒に歩く。

「イクラ、今日のご飯はアジよ。パパは早く帰ってくるといいわね」

「ハーイ、ハーイ」イクラが元気よく声を上げる。

 明日は彼と会う。彼に教える予定のサバの味噌煮、ハンバーグ、大根サラダの作り方を思い出す。料理を進める中での大事な所、注意点も合わせて思い出す。

 楽しさもあるが人から必要とされることの嬉しさ、使命感、義務感はいつもの主婦業で味わうものとは別種の感情だ。この欲望に近い感情にずっと触れ、味わっていたい。この感情は万能感をもたらしてくれる。たとえ、無価値で人様から後ろ指を指されようとも・・・・・・。
0132名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 01:06:03.00ID:3uV43OEZ0
ちょっとだけだがここまで
また明日書き込みます
0133名も無き被検体774号+ (スププ Sdfa-oXMj)
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2018/05/20(日) 12:19:42.42ID:oXF1/oUad
保守
0134名も無き被検体774号+ (アウアウオー Sac2-XkxN)
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2018/05/20(日) 17:50:24.32ID:gcNLhO/Sa
>>132乙!
読むの遅いけど読んでるよー
面白い!
0135名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 19:39:07.23ID:3uV43OEZ0
また書き込んでいきます
切りよく書き留められたので第四章の終わりまで書き込みます
0136名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 19:47:34.88ID:3uV43OEZ0
 サザエさん家に寄りイクラを預かってもらう。

「イクラちゃん、お庭で遊びましょう」タラちゃんがイクラに声を掛け庭に向かって走って行く。

「ハーイ」イクラも後を追い走り出す。

「では、サザエさんよろしくお願い致します。十六時前には戻るようにしますので」

「いいのよ、そんなに急がなくても。こちらは大丈夫だから。ノリスケさん、最近家事を手伝ってくれてるんですってね。マスオさんもお父さんも最近手伝ってくれるんだけど失敗してしまうことが多くて逆にすることが増えちゃうのよ」

「でも、ノリスケさんがしてくれたことってホントにちょっとだけなんで家事にもならないですわよ」早くこの会話を切り上げたい。
0137名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 19:49:10.36ID:3uV43OEZ0
「助かる時は助かるんだけどねぇ。あら、傘なんて持って今日は雨の予報だったかしら?」手に持つビニール傘に目を止める。

「いえ、この前に雨が降った時に友達から傘を借りたもので、行く途中で返すものです」

「あら、そうなの。どうぞ、気をつけて行ってきてね」

 サザエさん家を後にして駅へと向かい電車に乗り隣町に着く。すぐに化粧室に入り土曜日に彼から貰ったノンホールピアスを耳に付ける。よく似合っていると、そう思う。

 ピアスだけ付けて化粧は直さずに化粧室を出る。顔や爪先をベタベタ塗り固めるのは好きではないし、わざわざ化粧を改めて会う関係でもない。
0138名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 19:56:31.07ID:3uV43OEZ0
 今日、彼に料理を教えたらしばらくは会わないようにしなくては。毎週毎週二人だけで会えるような予定を作り、時間を捻出するのには無理がある。二週間に一度でも厳しい、一ヶ月に一度ぐらいの頻度で会うようにしなくては。

 この先のことを考えていたら彼のアパートに着く。チャイムを押すと前回と同じく尋ねる声もなく扉が開かれる。

「いらっしゃい、どうぞどうぞ」

「これ借りていた傘、ありがとうね」パンプスを脱ぎビニール傘を傘立てに入れる。

「いえ、雨は振らなかったんで大丈夫ですよ。プレゼントしたピアス付けてくれたんですね。ありがとうございます。凄い似合ってますよ」

「あら、そう?お世辞でも嬉しいわよ」
0139名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 19:57:55.91ID:3uV43OEZ0
「ホントですよ。食材、ばっちり揃えておきましたよ」

「分かったわ。じゃぁ、早速作り始めましょう」カバンを置いて手を洗い出す。

「今日もよろしくお願いします。頑張って失敗しないよう作りますよ!」

 冷蔵庫を開けて彼が揃えてくれた材料を確認する。

「サバ、合いびき肉、玉ねぎ、大根・・・・・・大丈夫ね」

「ええ、ちゃんとメモしてた食材は全部揃えましたよ」

 冷蔵庫を閉じてキッチンに置かれている調味料を見ていた時、パン粉の用意を伝えていなかったことに気付く。

「ハンバーグを作るのにパン粉が必要なんだけど、伝え忘れてたわ。買い置きはある?」

「パン粉はないんですよ。ないと結構、味は左右されます?」
0140名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:02:31.02ID:3uV43OEZ0
「パン粉が肉汁を吸ってくれるから焼いた時に肉汁が溢れ出ないし、ふっくらした出来上がりになるのよ。だからあったほうがいいんだけど・・・・・・」

「じゃぁ、ちょっと今すぐ買ってきます」

「大丈夫?この近くにお店かコンビニあった?」

「十分ぐらいですぐに行ける距離にあるので大丈夫ですよ。すぐに買ってきます」

「家にあるものだと思ってたから悪いわね、気をつけて。準備出来る分は少しだけ進めておくわ」

「ゆっくり進めてもらってて大丈夫ですよ。ちょっと、行ってきます」

 足早に財布を掴んで靴を履いて玄関から彼が出て行く。

 ハンバーグの材料を伝えた時に調味料関係のことも考えておけば良かった。
0141名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:04:20.04ID:3uV43OEZ0
 ひとまず、調理道具の用意や野菜の皮むきだけ進めておこう。サバの切り方や処理の仕方は直接教えるからまだ手を付けず、玉ねぎの皮をゆっくり剥いて彼を待とう。

 調理道具の準備と用意をし終えて取り出した玉ねぎの皮を剥いていた所で扉が開く音がする。

 出掛けてから戻ってくるまで随分と早かった。お店が意外と近くにあったのだろうか。彼のほうを観ると彼とは違う髪型、背丈、服装の男がそこに立っていた。年齢だけが彼と同じくらいだ。

「あれ、直貴は?あんただれ?」眉を釣り上げ、驚いた顔で言う。

「直貴さんは今買い物に行ってて、私は今日料理を教えにきたタイコです」自己紹介をして、頭を軽く下げる。
0143名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:06:28.18ID:3uV43OEZ0
「あっそお。彼女か。あいつ彼女いないって言ってたくせにいるじゃん。直貴はいつ戻ってくんの?」

 自分の説明はせずに靴を脱ぎ始めて上がろうとしている。恐らく直貴さんの知り合いの人なのだろうが失礼な人だ。

「あの、どなたですか、友達?あと私は彼女じゃなくてただ料理を教えにきた知人です」

 彼の茶色く染まり幾重もはねた髪の毛を見ながら伝えるも、王柄な態度で上がり込んでくる。

「俺もただの知人、直貴の友達の友達?ってやつ。ちょっと借りてたものがあって返しにきた所、これあいつに渡しといて」手に持っていたCDケースを渡してくる。

「ええ。分かったわ、もう戻ってくるから渡しておきます」
0144名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:12:27.07ID:3uV43OEZ0
 彼からCDケースを受け取り机の上に置く。この招かれざる客が早く出て行ってくれることを願いながら彼の目を見る。

「ああ、お願い。でさ、女友達でも料理だけ教えにくることってないでしょ。何?彼氏は?」

「ホントに料理を教えにきただけです。それに私結婚してるので」

 威圧的で反抗的な言葉遣いに、出す声に熱が入ってしまう。

「うわ、それって不倫じゃん。何、ヤってんの?」

「だから、ただの友達だって言ってるでしょ。もう失礼してもらっていいですか」

 決めつけて発言してくることに苛つく。どうして男と女という側面でしか人間関係を見れない人がいるのだろうか。
0145名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:20:07.99ID:3uV43OEZ0
 首からぶら下がったアクセサリーを見ていたらアクセサリーが揺れて接近してきた。いきなり男に手首を掴まれる。

「いいよ、隠さなくても飢えてるんでしょ。俺とヤろ。それとも3人でヤる?」

「ちょっとやめて離してよ、触らないで」

 掴まれた左手首を引っ張り、離そうとするが力が込められて振りほどけない。

「何?イヤイヤ言いながらヤるのが好きなの?」全身を舐め回すように見てくる。

「いい加減にしてよ、やめてって言ってるでしょ!」

 蹴り上げた右足が男の右脛辺りに直撃する。ジーパンのごわごわした感触が足先を伝う。

「痛ってぇな。何すんだよ!」いきり立つ怒声。
0146名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:27:00.30ID:3uV43OEZ0
 右手首も男に掴まれて両手首を顔の横に持ち上げられる。

「ちょっとふざけないで!やめてって」

 掴まれた両手首を振りほどこうと揉み合っていた所にまた、玄関の扉が開く音がする。

「すみません、お待たせしました」

 直貴が笑いながら息を切らして入ってくるが異様な光景に目を開く。

「ちょっと、助けて。この人が急に」

「おい、お前。何してんだよ、離せよ!」

 土足で走り込み直貴が男の手を掴み振りほどく。

「いやいや、ちょっと遊んでただけだろ」

「何が遊びよ。ふざけないで、急に掴みかかってきたくせに」声を荒げる。
0147名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:38:26.32ID:3uV43OEZ0
「お前何しにきたんだよ。迷惑かけんな、帰れよ」直貴が声を低めて言う。

「借りてた物を返しにきただけだよ。もう帰るよ、全く冗談が通じねぇんだから」

 男はバタバタと強く歩き、靴を履き乱暴に扉を開けて出ていく。

「タイコさん、大丈夫でしたか。何があったんです?」

「何もなかったわよ。CDを返しに来ていきなり手首を掴まれただけ。驚いたけれど大丈夫よ」深呼吸をして説明する。余計なことは言うも必要ない。

「あいつ友達の知人の晶ってやつです。無礼なやつですいません」玄関口に戻り靴を脱ぎながら謝罪する。

「直貴さんが謝る必要ないわ。あの人が悪いんだから、ホント失礼な人」

 横暴で怒りやすいあんな野蛮な人とはもう関わりたくない。無鉄砲で反抗的。あの男からはなんの良い印象も受けなかった。悪い印象だけが残る。
0148名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:40:20.26ID:3uV43OEZ0
「俺が前もって返してもらってればよかったんですよ、ホントすみません」

 同じ話をずっと続けていても仕方がない。あの男のことは考えないようにしよう。

「もう、良いわ。こんなことは忘れて料理を始めましょう。パン粉はあった?」

「ちゃんとありましたよ。これでハンバーグが出来ますね」

 玄関付近に落としたビニール袋を持ち上げて中から購入してきたパン粉を取り出してくる。

「じゃ、早速始めましょう。道具の準備と玉ねぎの皮しか剥いていないから」

 蛇口をひねりもう一度手を洗い直す。彼も続いて手を洗う。

「はい、お願いします。あいつにはあとできつく言っておきますので」

 嫌なことは料理に集中して忘れよう。彼と居れば忘れられるはずだ。
0149名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:42:20.97ID:3uV43OEZ0
「まずは玉ねぎを切るのとサバの下ごしらえを先にしましょう」

 砂糖入れの横にある菜箸を取った時、肘がみりんのボトルに当たり床に落ちる。床に落ちるのと同時にキャップが緩んでいたのか外れてみりんが跳ねてこぼれ出る。

 落ちたみりんから後ずさりして離れたが少し足に跳ねてしまった。

「あ、布巾、布巾どこ?」

「大丈夫ですか。今すぐ、拭き取りますよ」

 直貴が布巾を取ってしゃがんで私の足首に跳ねたみりんを拭き取る。

「少ししか跳ねてないから大丈夫よ。ごめんなさい、うっかりしてたわ」

 彼が私の足首に軽く何度か布巾を当てて水分を拭き取り、急いで手を動かして床のこぼれたみりんを拭き取り始める。
0150名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:44:46.72ID:3uV43OEZ0
「昨日使った時、ちゃんとフタを閉じてなかったんで・・・・・・すいません」

 直貴の黒い髪に覆われた後頭部とそこからうっすら見えるつむじ、シャツの襟から見える首筋とうなじがタイコの目に入る。目元を細めた印象的な様子も同じく目に入っていく。

 彼の全てが愛おしく感じる。優しさも、真っ直ぐでひたむきな所も、息を切らして走って帰ってきてくれたことも、目元を細めた真剣な顔の中にある悲哀を呈した表情も。存在そのものが愛おしく、狂おしい情愛が溢れ出す。

 立ち尽くしたまま思考が入ってこなくなる。無意識で、考えるよりも体が先に動く。同じようにしゃがみ込み直貴の肩に左手を置いて、潤んだ目で彼と三秒程見つめ合う。彼の顔に流れるように近づき唇を合わせる。
0151名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:46:39.75ID:3uV43OEZ0
 唇に触れるのが唇だけではなくなる。直貴の舌先を受け入れ、私の舌先を受け入れてくれる。

 初めてだった。こんなにも長くキスをして舌を絡めていたのは。男性とキスをしながら目を開けたのも。

 五分、十分いやそれ以上かそれ以下かも分からない。時間が私達二人だけを取り残して止まっていたように感じる。この先どうすればいいか分からないでただただ濃い接吻を続ける。いつの間にか左肩に置いていた手を離して床に置いていた。

 唇が痺れるような感覚と共に自分の唇の感覚がなくなる。直貴に這わせる私の唇と舌、直貴の這わせる唇と舌が混じり合いどちらがどちらのものであるか分からなくなる。口先を通して他者との一体感を初めて感じた。もはや異物ではなく以前からあったもののように錯覚する。
0152名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:48:05.76ID:3uV43OEZ0
 外から子供の甲高い声が聞こえてきた。子供の笑い声。一瞬イクラの顔がよぎるのと同時に甘いみりんの匂いを鼻で感じ取る。

 直貴から体を離して勢いよく立ち上がる。

「ごめんなさい、帰るわ」カバンをすぐさま掴み取り急いでパンプスを履き、扉を開けて走る。

「タイコさん!」直貴が何か叫んでいたが無視して走る。

 とにかく離れなければ。一緒に居たら理性がなくなり取り返しがつかなくなる。

 走り続けて駅が見えてきた所で小走りに変える。駅の化粧室の個室に入り込み鍵を掛けた壁にもたれかかって切らした息を整える。
0153名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:52:40.40ID:3uV43OEZ0
 内ももに何か這っている感覚がした。フレアスカートを下ろすとアソコから流れ出た愛液が皮膚の上をナメクジが這ったように垂れていた。

 初めてだった。こんなにもアソコが湿ってたぎる程、湧き出てきたのは。この濡れるということが肉体的なものではなくて精神的なものからくるということも。

 シたい。アソコに触れて今イきたい、早く頭から離れないうちに。指を股に入れ、這わせて触れる。

 何これ・・・ヌルヌル・・・。こんなに興奮していた事に初めて気付く。指に触れた部分が敏感に反応する。

「・・・はぁ、・・・はぁ、・・・ん、・・・あ」乳首が痛い。

 直貴を思い出す。直貴の声、直貴の顔、キスしていた時の顔、直貴の裸体、引き締まり筋肉の筋が浮いた体、弓なりに反った首筋。私を求め私と性交している姿をありありと思い浮かべる。
0154名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:53:19.88ID:3uV43OEZ0
 気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい。「はっ・・・あ!」すごく、気持ちいい!

 床にしゃがみ込んで荒れた息を整えて宙を見ながら呆然と考える。イクラを迎えに行かないと・・・・・・。
0155名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 5adb-/w+O)
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2018/05/20(日) 20:59:35.49ID:3uV43OEZ0
第四章はこれで終わりです
ちょっと微エロ展開に挑戦した章でした

また書き留めたら後日書き込みます
0157名も無き被検体774号+ (ワッチョイW 4186-oXMj)
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2018/05/20(日) 21:08:04.42ID:cmechFK70
次も期待してるぜ
0158名も無き被検体774号+ (ワッチョイWW 0d11-XkxN)
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2018/05/21(月) 10:37:21.30ID:Qe18YuU+0
>>155乙!
0159名も無き被検体774号+ (アウアウカー Sa4d-JHA7)
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2018/05/22(火) 06:46:00.91ID:LN1HfuHRa
驚愕の事実拡散

創価の魔(仏罰、現証、非科学的な原始的発想)の正体は、米国が仕掛けてるAI

パトカーの付きまとい、咳払い、くしゃみ、芝刈機音、ドアバン、ヘリの飛行音、子供の奇声、これら全て、米国が仕掛けてるAIが、人を操ってやってる。救急車のノイズキャンペーンに至っては、サイレンで嫌がらせにする為だけに、重篤な病人を作り出す冷徹さ

集スト(ギャングストーカー、ガスライティング、コインテルプロ、自殺強要ストーキング)以外にも、病気、痛み、かゆみ、湿疹かぶれ、臭い、自殺、殺人、事故、火災、台風、地震等、この世の災い全て、クソダニ米国の腐れAIが、波動(周波数)を悪用して作り出したもの

創価の活動家は、頻繁に病気や事故に遭う。災難が続くと、信者は仏にすがって、学会活動や選挙活動に精を出すようになるから、クソAlが定期的に科学技術で災いを与える。モチベーションを上げさせる為の、起爆剤みたいなもん

ちなみに創価は、腐れCIA(米国のクソ諜報、スパイ)が日本統治に利用してる宗教団体

真実は下に

http://bbs1.aimix-z.com/mtpt.cgi?room=pr02&;mode=view&no=46

https://shinkamigo.wordpress.com
0160名も無き被検体774号+ (アウアウカー Sa4d-JHA7)
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2018/05/22(火) 06:46:33.82ID:LN1HfuHRa
驚愕の事実拡散

創価の魔(仏罰、現証、非科学的な原始的発想)の正体は、米国が仕掛けてるAI

パトカーの付きまとい、咳払い、くしゃみ、芝刈機音、ドアバン、ヘリの飛行音、子供の奇声、これら全て、米国が仕掛けてるAIが、人を操ってやってる。救急車のノイズキャンペーンに至っては、サイレンで嫌がらせにする為だけに、重篤な病人を作り出す冷徹さ

集スト(ギャングストーカー、ガスライティング、コインテルプロ、自殺強要ストーキング)以外にも、病気、痛み、かゆみ、湿疹かぶれ、臭い、自殺、殺人、事故、火災、台風、地震等、この世の災い全て、クソダニ米国の腐れAIが、波動(周波数)を悪用して作り出したもの

創価の活動家は、頻繁に病気や事故に遭う。災難が続くと、信者は仏にすがって、学会活動や選挙活動に精を出すようになるから、クソAlが定期的に科学技術で災いを与える。モチベーションを上げさせる為の、起爆剤みたいなもん

ちなみに創価は、腐れCIA(米国のクソ諜報、スパイ)が日本統治に利用してる宗教団体

真実は下に

http://bbs1.aimix-z.com/mtpt.cgi?room=pr02&;mode=view&no=46

https://shinkamigo.wordpress.com
0161名も無き被検体774号+ (アウアウオー Sac2-XkxN)
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2018/05/23(水) 23:01:30.52ID:XSjoJvbna
ほし
0162名も無き被検体774号+ (スププ Sd33-TNL7)
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2018/05/24(木) 18:38:08.72ID:iRhyf642d
保守
0163名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/24(木) 23:22:29.36ID:4LJpI+OF0
保守感謝
とつとつと書き留めておりますのでもうしばしお待ちを
0164名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 11:47:57.87ID:7rXzYp1F0
また書き込んでいきます
0165名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 11:51:22.70ID:7rXzYp1F0
第五章
 どうしよう。考えを巡らすが何をどうすればいいか分からない。もう直貴とは会えない。また会ってしまえばお互いに結びつき情事を最後までしてしまう。次はない、絶対にもう会わないと決めるが、どうしようもなく会いたいと、考えが矛盾する。

 昨日はイクラを迎えに行き帰宅していつもどおり家事を済ませたが、意識が遠のき何も考えられなかった。

 次で会うのを最後にすればいいのではないかと浮かぶがそんな甘い考えは許されない。次に会って肉体関係になれば、もっと直貴を知りたい、もっと直貴と一緒にいたい、もっと、もっと、ってずるずると不倫の道を歩む事になる。不倫にゴールはない。一度踏み入れれば最後。
どちらかが破滅するまで終わらない。キスをして彼を思って果てた時点で不倫ではないかという非難が頭の中でするが無視し続けている。
0166名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 11:58:19.48ID:7rXzYp1F0
 また、何の変哲もない日常に戻らなければ、そうすれば直貴との出会いは幻になる。いつもの家事をして料理をして家族の出来事に一喜一憂していれば、後悔や苦しさは薄れて平穏な毎日の日常に置換されるはずだ。

 一連の出来事は平凡な主婦が見た一瞬の夢。そう考え納得しようとするが直貴との様々な記憶が頭の中で浮かんでは消える――。

 いや夢なんかじゃない。ただの夢ならこんなに苦しく辛いはずはないのだから。

 納得出来る答えなんて浮かばないのに同じことを考え思いを何度も巡らすのに飽きてくる。
0167名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 12:09:32.61ID:7rXzYp1F0
 食事を終えてから机の上にあるチラシをずっとめくり続けていた。何回も何回も同じチラシを三分おきに表と裏を繰り返しめくり続けて、惑溺していたらいつの間にか十五時になっていた。

 昼寝をしているイクラを見る。毛布はかかったままで温かい顔で寝ている。

 今日の夜ご飯は何にしよう。味噌汁、コロッケ、ほうれん草のおひたし。あのまま帰った後、直貴が用意したサバやハンバーグの材料はどうなったのだろうか。とりとめのないことが浮かんできてしまう。忘れないと。

 チラシを片付け洗濯物を取り込もうとベランダに出ようとした時、電話が鳴る。恐らく直貴だ。確信に近い直感を抱き電話を取る。

「――はい。波野です」
0168名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 12:09:32.87ID:7rXzYp1F0
 食事を終えてから机の上にあるチラシをずっとめくり続けていた。何回も何回も同じチラシを三分おきに表と裏を繰り返しめくり続けて、惑溺していたらいつの間にか十五時になっていた。

 昼寝をしているイクラを見る。毛布はかかったままで温かい顔で寝ている。

 今日の夜ご飯は何にしよう。味噌汁、コロッケ、ほうれん草のおひたし。あのまま帰った後、直貴が用意したサバやハンバーグの材料はどうなったのだろうか。とりとめのないことが浮かんできてしまう。忘れないと。

 チラシを片付け洗濯物を取り込もうとベランダに出ようとした時、電話が鳴る。恐らく直貴だ。確信に近い直感を抱き電話を取る。

「――はい。波野です」
0169名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 12:14:41.62ID:7rXzYp1F0
「もしもし・・・・・・直貴です」くぐもった彼の声。

「・・・・・・・・・・・・」何を話そうかと考えるが浮かんでこない。何をどう伝えようか思い悩む。

「・・・・・・タイコさん、聞こえます?」声がはっきりとしてくる。

「ええ。聞こえてるわ。ダラダラ話して弁解をするのも駆け引きをするのもはっきりしない態度になるから、率直に言うわ。もうあなたとは会えない。次、会ってしまえばまた会うことになる。そのまま、お互いドロドロの関係になるから」

 よく考えることはせず、心の思うままに直接思いと気持ちを伝える。
0170名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 12:17:25.22ID:7rXzYp1F0
「そう――ですよね。本当は会う関係になれない、もう会うべきではないって俺も思ってるんですど。最後に直接会って話したい。料理を最後に教わるのでも、少し話をするだけでも会いたいんです。駄目ですか?」

 直貴の伝えようとすることは分かる。何事もなかったかのように会って料理だけを最後に教えることは出来るのかもしれない。前回の出来事はお互い、暗黙の了解でなかったことにして平穏な関係のまま終わらせたい。でも、きっと無理だ。
帰ろうとする段階になってお互いを求め、タガが外れるか嗚咽して泣くことになり二度と忘れられない情操を体験してしまい、心に刻まれてしまう。
0171名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 12:18:35.28ID:7rXzYp1F0
 その感情は喜怒哀楽といった単一的な感情の突出とは違う、水の中で何色ものインクが溶けて複雑に幾重にも折り重なって交わるようなもの。そんな感情体験をしてしまえば、お互いを忘れた平穏の日常に戻ることは出来なくなってしまう。

 麻薬をやめられない人や万引きをやめられない人の気持ちなんて理解出来ず分からなかったが、きっとその禁忌を犯す気持ちが私にも分かるようになってしまう。

 直貴と会いたいけれど会いたくない。話しをするだけでも想うことですらも許されない関係にまで進んできてしまっている。これ以上はもう引き返せなくなる。先にあるのはただの茨の道。もがき苦しんでもだれも助けてはくれない道。
0172名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 12:20:47.07ID:7rXzYp1F0
「ごめんなさい。私はあなたが私を思っているのと同じくらい辛く、苦悩しているわ。だからあなたの気持ちは分かるけど、無理。会うことはおろか、もう料理を教えることも出来ない関係なのよ」目元は潤むが何故か声はいつもと変わらず出る。

「・・・・・・分かりました。そうですよね、お互いのためにならないですから。もう話すことも電話もしません。タイコさんに教わった料理だけは忘れないようにします」

「ええ、ありがとう。――さようなら、直貴さん」

 聞く言葉、話す言葉に感情が追いついていかない。まるでテレビでも見ているような他人事の気がする。

「ええ、失礼します」直貴の声が最後に聞こえたのと同時に、ガタッという音が向こうでして何も聞こえなくなる。
0173名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 12:32:20.63ID:7rXzYp1F0
「――直貴さん? 聞こえる?」

 受話器を戻したつもりがしっかりと収まっていないのだろうか。電話が切れていない。

「電話、切れてないわよ? もしもし?」

 このまま切ってしまおうかと思ったが声がまた聞こえてくる。

「何だよ直貴、駄目だったのかよ。結局、次は会わねぇの、あの女と?」

 いや、直貴の声ではない。別の男の声。

「ああ、やっぱ断られちまった。次会ったらぜってぇヤれると思ったのに」陽気な直貴の声。
0174名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 12:39:36.35ID:7rXzYp1F0
「マジで残念だわー。めっちゃスタイルよくてタイプだったのに。直貴がヤッた後俺もヤりたかったわ」

 この威圧的に話す声は直貴の部屋に上がってきた晶とかいう男の声だと気付く。

「・・・・・・しょうがねぇよ、他の女探すわ。尻が軽い女なんて他にいくらでもいるんだからよ」

 信じたくない、思いたくはないが直貴の声だ。直貴と晶の卑猥な話しが受話器を通して聞こえてくる。

 聞いていたくない、聞きたくない。受話器を力任せに思いっきり電話機に叩きつけて電話を切る。大きな音に驚きイクラが目を覚ましてぐずりだした。泣き起きたイクラを抱っこしてあやす。
0176名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 12:51:22.02ID:7rXzYp1F0
 所詮、直貴にとって私との関係はただの遊びだったのだ。既に結婚している私に恋心のようなものなど求めるはずがない。料理を教えてくれて自分の体の欲求を満たしてくれる都合のいい女としか見られていなかったのだ。
絶望感や虚無感が襲ってくるが苛立ち、胸糞らしさも襲ってくる。どうしようもない程、哀れだ。

 直貴も憎いしそんな彼に惹かれて浮かれて思い悩んでいた自分に対しても憎らしい気持ち、滑稽感が込み上げてくる。

 一人で高まる熱に浮かれていたことが今更ながら恥ずかしくなる。ただ、非日常にボケていただけだったのだ。もう忘れよう、いや考えないようにしなければ。普段の毎日に浸り、頭の中に湧く嫌な思いを認知しないようにし続けて、忘れようと決心する。
直貴との関係は終わったのだ。


 私と彼、二人の物語はこれが最後で幕を閉じるはずだった。だけど、終わってなどいなかった。閉じたのは第一幕に過ぎなかったのだ――。
0177名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/26(土) 12:52:47.63ID:7rXzYp1F0
今日はここまでです
また明日、続きを書き込みます
0178名も無き被検体774号+ (アウアウオー Sa63-Bffi)
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2018/05/26(土) 15:40:29.72ID:I5gmr39aa
>>177乙!
お疲れさまです
0179名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:18:51.01ID:v8ZV0SQ+0
書き留めが終ったのでどんどん書き込んでいきます
ついに完結します
0180名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:23:47.52ID:v8ZV0SQ+0
 直貴と電話を最後にしてから二週間が経過した。家事をしていても三日間は直貴のことが頭の中にずっとちらついていた。その度に別のことを考え頭の中から存在を消し続けた。

 少しずつだが確かに普段の日常に戻ってきた。新鮮さというより味気なさのほうが強く感じる。心にしこりのように残っている気持ちはあるが徐々に薄れてきている。このまま行けばずっと思いにフタをしたまま、フタをしたそのものを忘れることが出来る気がする。
ノリスケさんやイクラとの一喜一憂する日々をこの先も過ごして行けるはずだ。

 誰でもない自分自身に言い聞かせてそう暗示する。

 平日、大きな公園に行きベンチから他の団地の子達と遊んでいるイクラを見守る。晴れやかな気持ちいい風に吹かれてとても気分が爽快になる。ハンモックでもあればそこでうたた寝でもしていたくなる陽気だ。
0181名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:25:24.90ID:v8ZV0SQ+0
 後方の少し先にある木々の中を見ると木漏れ日が幾重にも出来ている。とても綺麗な光景だ。その中の一本の木の陰に一人の男が隠れてこちらを見ていることに気付く。

 幾重にもはねた茶色い髪の男――晶だ。

 右目の下瞼がひきつる。とても嫌なものを視界に入れてしまった。折角の心地よい気分が消え失せる。せっかく時間と手間を掛けて作っていたシチューにゴキブリが入り台無しにされた気分だ。嫌悪感と同時に怒り、腹立たしい気持ちが募りだす。

「ごめんなさい。ちょっとお手洗いに行ってくるわ。イクラを見ていて頂いても大丈夫かしら?」

 立ち上がりながら隣のベンチに座っていたママ友に伝える。
0182名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:27:43.81ID:v8ZV0SQ+0
「ええ、大丈夫よ。トイレの看板があったから矢印の方向にトイレはあったはずよ」後ろの一本道のトイレの看板に視線を送る。

「ごめんなさいね、すぐ戻りますから」足早に歩き一本道に入る。

 晶を横目で見ながら舗装されていない一本道を晶に近づくように早歩きで進む。

 私が近づいてきていることを晶が分かると、踵を返して木々の奥の方に入っていく。何度も後ろを振り返り、私がついてきているのを確認する。人目につかない所に行くつもりなのだろう。彼と二人きりで対峙する怖さや恐れはない。
それ以上に苛立ち、気分の悪さのほうが上回っている。
0183名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:29:58.11ID:v8ZV0SQ+0
 人通りがなくなってきた所でけもの道から外れ、直接彼の後ろを歩き追いかける。距離にして約二十メートル、早歩きで彼との距離を縮めていく。彼を見失わないか心配であったが少し歩いた所で彼が立ち止まり私のほうに振り返っていた。

 辺りに木々が点々と生え、木で作られた簡易的なベンチが所々に点在している。人気はないが全く人がこないという場所でもない。人目に付く前に早く話を付けて追い返し、戻らないと。

 彼に近づくなりまくしたてるように喋る。

「何、何の用なの? 気持ち悪い。直貴から電話があった後、電話が切れてなくてあなたと直貴が話す会話を聞いたわ。もう関わるつもりはないからさっさと消えて――」

「違う。別にあんたをひかやしに来たのでも誘いにきたわけでもねぇよ。ただ聞いてほしいことがあって・・・・・・」最後まで話す前に遮られ、真剣な眼差しを向けてくる。
0184名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:31:44.05ID:v8ZV0SQ+0
「その前になんで私がこの公園にいるって分かったの? 直貴に住所は教えてなかったわよ」

 聞いてほしい話しがあろうとなかろうと私には関係ない。ただの作り話しか嘘としか思えない。両手を組み、まず頭の中にある疑問をぶつける。

「俺、新聞の印刷所で働いてて印刷し終わった新聞やチラシを配達所に届けることがあんだよ。それで、配達して事務所に誰もいない時さ、あんたの名前からあんたの住所を調べたんだ。それで、あんたの家には直接行かず周辺の行きそうな所を見て回ってたんだよ。
そしたら公園の中に入っていくのを見たから――」

「私の場所を知ったわけは分かったわ。それで、私になんの用なの?」
0185名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:33:27.42ID:v8ZV0SQ+0
 早く話しだけを聞いて罵倒して追い返したい。彼は真面目な表情を作ってはいるが騙されないように男を睨みつける。

「俺と直貴が話してた内容は嘘なんだよ。直貴がわざと電話を切らないで、電話をする前に決めていた話をしてさ、あんたを騙したんだ」

「何言ってるの? なんでそんな嘘を付いったってのよ?」彼の話した内容に驚く。

 彼の言うことを信じようとしたが、ただの嘘なのではないかと勘ぐる。

「あんたと別れるためだよ。俺、アンタと直貴がキスした話を聞いたよ。直貴はあんたのこと好きでいたけどもう会うわけにはいかない、あんたの家庭を壊してしまう、俺もタイコさんも壊れてしまうって。だから嘘をついてもう会わないようにするため、わざと悪役になったんだ」
0186名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:35:05.16ID:v8ZV0SQ+0
 言っていることに真実味は感じられるが半信半疑だ。もし本当にそうだとしたら何故わざわざ言いにきたのだろうか。

「もしその話が本当だとして、どうしてわざわざ私に言いにきたのよ?」

「本当は言うつもりなんてなかったよ・・・・・・。直貴が最後に電話した時、ホントはあんたともう会うつもりなんてアイツにはなかった。でもアイツ、電話が切れたのを確認した後、体を丸めてむせび泣いてさ、本当に苦しそうだった。本当に愛してたんだなって思ったよ。
まるで、家族や大切な人が死んだみたいに泣いててさ、あんな姿初めて見た」

 正直に真面目な表情で私に語りかける。王柄な態度からは想像が出来ない真剣さだ。この単純で短絡的な性格の人が私を騙すためにこんな嘘の演技が出来るとは思えなかった。彼が告白したことは本当なのだろう。
0187名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:37:07.16ID:v8ZV0SQ+0
「直貴のホントの気持ちをあんたは知っておいたほうがいいって思ってよ。直貴の気持ちを誤解されたままにしておきたくなくて――だから言いにきた。それにあいつ明日で引っ越すんだよ」

 彼がわざわざ私の所に来てまで伝えたかったことは分かった。直貴の性格を考えればあの電話の内容は今、彼が言った真実で納得がいった。

「引っ越すって、どこに?」

「地元に帰るって。元々、こっちに出てきたのは技能を磨くためで、ある程度力をつけたら帰るつもりだったって。ずっと町にいるのはよくない、別れてもまたどこかで会えるかもって、一瞬でもあんたの顔を見ることあがるかも知れないからって。
もしそうなったら、俺もあんたも辛いからって言ってた」
0188名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:38:47.56ID:v8ZV0SQ+0
 涙腺がゆるみ出す。やはり、私と直貴は同じ気持ちだった。

「そう・・・・・・でも、もう直貴とは終わったの。彼に別れの言葉は電話でしたから」湿った声を出さないように落ち着いて伝える。

「直貴と直接会って最後の別れを言えよ。それであいつも踏ん切りがつくか――」

「踏ん切りなんてつくわけないでしょ! お互いに泣いて、今よりももっと苦しく辛くなるだけよ。直貴がわざわざあなたとそんな演技をしてまで私を騙したのは、直接別れ話をして普通に別れるのが辛かったから。もう二度と接点を持つことがないようにするためだったのよ」

 どうしようもない心苦しさ、哀しみが込み上げて私の心の中を支配していく。感情を抑えて話すが全ては抑えきれず熱い感情が漏れてしまう。
0189名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:40:51.65ID:v8ZV0SQ+0
「それでも、ちゃんと会って話したほうが気持ちが伝わるって思うけど・・・・・・」

 あなたは何も分かっていない。部外者だからそんな他人事のように言えるのよ。お互いがお互いをどれだけ思っているか知ってしまうのは純愛なら素晴らしい関係だ。でも私達の場合は不倫関係、綺麗事だけでは済まされない。

 一人の女に二人の男。そこに戸籍なんて関係ない、どちらの愛が強いかただそれだけなんて話は、映画の展開だ。映画はハッピーエンドで終えられても現実は違う。何年も何十年も先を生き続けなければならない。私には死ぬ思いで生んだイクラもいる。
築いてきたものを簡単にゲームのように壊して作り直すことなんて出来ない。私はそんなに強い人間でもなければ強靭な神経も楽観的な考えも持っていないし、この先も持てない。
0190名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:45:35.68ID:v8ZV0SQ+0
「直貴の気持ちは分かったから、もう――いいわ。わざわざ伝えてくれて、どうも。あなたももう、私には関わらないで」無味な感情をなくした言葉で伝える。

「ああ、分かってるよ。もう関わらない。俺は消えるよ」

 私の横を通って、来た道をトボトボ歩いて彼が去っていく。私一人だけが取り残される。

 一人きりになると抑え込んでいた感情が溢れ出てきた。とめどなく流れ出てくる気持ちを受け止めることが出来ずに涙がこぼれる。立っていることも出来ず、木に寄りかかりしゃがみ込んで嗚咽する。

 私は大きく声を出して泣きたかったが、手に口を当てて周りに漏れ出ないようにして声をつまらせて泣いた――。
0191名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:46:54.31ID:v8ZV0SQ+0
 ベンチに戻るとイクラを見てくれていたママ友が赤くなった目を見て尋ねてくる。

「タイコさん、どうしたの? 目が真っ赤よ?」

「トイレに大きな虫がいて、凄くびっくりしちゃって。ちょっと、それで・・・・・・」

「あら、やっぱり公衆のトイレだと綺麗にしてても虫が入ってくるのね。嫌だわ。刺されたりしなかった?」

「ええ、大丈夫よ。時間がかかってしまって申し訳なかったわ」

「そんな大丈夫よ。イクラちゃんも他の子達と仲良くずっと一緒に遊んでいたわ」

 イクラを見ると、さっきは数人でおままごとをしていたが今はボール遊びに夢中になって楽しんでいる。ベンチに腰を降ろしてイクラをまた見守る。
0192名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 14:53:25.93ID:v8ZV0SQ+0
 私にはイクラがいる。ノリスケさんに苛つき怒りをあらわにしようとした時はイクラがそばにいたから止められた。直貴と一線を越えようとしていた時も子供の声を聞いてイクラを思い出したから先に進まずとどまれた。イクラは常に私の中にいた。
直貴と先に進むことはできないのだから、今いるイクラを大切にして失わないようにしなくては。全てを破壊する許されない恋にもう終止符は打たれている。明日、引っ越す直貴に会いに行くことも電話をする必要もない。

「ハーイ、ハーイ」イクラが笑顔で近寄ってくる。

「沢山遊んだわね。そろそろ帰ろうね、イクラ」

 両腕を広げ歩み寄ってくるイクラを私の腕と胸の中に包み込み抱き寄せる。暖かな包容力を感じて、イクラはご機嫌でキラキラした目で私の瞳を見詰めてくる。そう、ただイクラだけを見ていなくては。
0193名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 15:01:51.49ID:v8ZV0SQ+0
 食事の洗い物を終えてテレビをぼんやりとノリスケさんと見ていた時、電話が鳴った。

 立ち上がり電話機の前に向かう。まさかとは思うがきっと彼だろう。受話器を取り相手の声に慎重に耳を傾ける。

「もしもし、波野です」

「俺です、直貴です。もう電話しないって言ったのに突然電話してすみません。あの、俺と話すのが難しそうならすぐ電話切っても大丈夫です。もしくは適当に相槌でも打って聞いててください」

 久し振りに聞く彼の声。今すぐ声を出して語りかけたかったがその言葉を飲み込む。後ろのソファーにはイクラとノリスケさんがいる。

 ずっと適当に相槌を打っているだけでは怪しまれてしまう。何かの話しをしているようにしなければ。頭の中を逡巡し彼に話す内容を決めて喋りだす。
0194名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 15:03:43.95ID:v8ZV0SQ+0
「きんぴらゴボウの作り方?いいわよ教えてあげる」

 料理の仕方を友達が電話で聞いてきていることを醸し出す。ノリスケさんのほうを振り返る。ノリスケさんは終盤に入ったテレビドラマを熱心に見ている。こちらには関心がないようだ。

「――ええ。その調子で続けてもらえればいいです。俺が一方的に話すので」

「まずは最初にゴボウを水洗いして皮をこそぐのよ」

 彼の家で教えたきんぴらゴボウの作り方をまた初めから伝えていく。この話なら怪しまれないし長く繋ぐことが出来る。
0195名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 15:06:21.02ID:v8ZV0SQ+0
「さっき電話で晶から今日タイコさんの所に行き、あの時の本当の事を話したって聞きました。申し訳ありません、あいつ考えが浅くて頭で考えるより体が先に動いちゃうやつなんです。悪気はないかもしれないけど、いつも空回りしてるみたいで。
もう絶対に行くなって俺からも強く言っておいたんで」

 彼に伝えたいことが山ほど出てくるが考えと思いを潰して話を続ける。

「そうね。ゴボウの皮をこそいで次にゴボウをささがきにするわ」

「晶が言ったとおり、電話が終わった後に話してた内容は嘘です。タイコさんを傷つけると思った。だけど俺の頭じゃ関係を断ち切れる方法はあれくらいの考えしか思い浮かばなくて・・・・・・」
0196名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 15:07:31.94ID:v8ZV0SQ+0
「それでゴボウのささがきを終えたら水の入ったボウルにいれて、水にさらしてアク抜きよ」

「すみませんでした、変に傷つけたこと。でも電話した時、タイコさんも俺と同じ気持ちっだって聞いて嬉しかったです。でも、だからこそ別れないとって思って、あの演技をしました」

 目元が潤み手が震えだしそうになる。ゆっくり深呼吸をして息を整える。

「そしてアク抜きをしている間に人参を千切りにするわ」

「引っ越しの話しも聞いたと思います。明日、地元へ返ります。タイコさんのせいじゃありませんから、本当に。もともと、美容師の技術を高めたら地元に戻るつもりだったんで、それをちょっと早めただけなんで」
0197名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 15:08:58.11ID:v8ZV0SQ+0
「次に、切ったゴボウをザルに上げて水気を切って人参と炒めるのよ」

「こんな形でしか終わらせられないこと、すみません。タイコさんに教わったきんぴらゴボウの作り方や親子丼、しょうが焼き、他の料理の作り方などは絶対に忘れないようにします」

 彼の言葉が湿り涙ぐんできていることが分かる。

「後はこの前に教えたとおり鍋で炒めて砂糖、酒、みりん、醤油を加えて炒めればいいわ」

「これで話しは終わりにします。もう二度と話すことはしません。もし万が一どこかで会っても他人のフリをしますから安心して下さい」

「――分かったわ。また料理の作り方で迷ったら料理雑誌で調べたり、他の人にも聞いてみてね」
0198名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 15:11:39.47ID:v8ZV0SQ+0
 簡単に好きとか愛してるとかいう言葉を交わせない関係がこんなにも辛く苦しかったことをこの年まで知らなかった。もう切らないと、泣いてしまい真の心情を明かしてしまう。

「本当にありがとうございました。――さようなら」

「――いいえ、こちらこそ。失礼するわ」受話器をそっと戻して電話を切る。

 今すぐにでも家を飛び出して彼に会いに行きたくなるがその思いを殺す。

「友達から・・・・・・料理で作り方が分からなくなったって、電話だったわ」

「おお。そうか、大変だなー」テレビから視線を変えずに答えるノリスケ。

 今もこの鈍さがありがたく感じ、助かっている。今、涙ぐんだ私の顔を見られれば不審に思われてしまっていただろう。

 ただ、イクラだけが私の顔を見て慈悲を持った目で微笑んでくれた――。
0199名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 15:13:15.39ID:v8ZV0SQ+0
寺尾直貴は数年前に都内から地元へ戻り、理髪店で働いていた。腕がよく近隣の人から盛況で隣街からもお客が足を運び予約は常に満員の状態である。店長代理を任され今は数名のスタッフと料理が上手な奥さんとで切り盛りをしている。

もし、波野タイコという女性を知っている人が寺尾直貴の妻と会ったら皆、こう言うだろう。髪型や髪色、身長、外見は違うが雰囲気はどことなく波野タイコに似ていると――。

(終)
0200名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 15:15:50.91ID:v8ZV0SQ+0
これで『錆びた日々』は終わりです

ここまでこの稚拙な三文小説をお読み頂いた皆様、ありがとうございました
0203名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 18:02:19.18ID:v8ZV0SQ+0
>>201
皆が想像しやすくイメージしやすい国民的アニメのサザエさんの中から主人公を選ぼうと思ったから

>>202
ありがとうー
0204名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 18:06:00.86ID:v8ZV0SQ+0
元々はSS形式で書いてくつもりだったが登場人物の名前をずっと出し続けるのが面倒になって小説形式にシフトチェンジしました

でもまさかのこれが結構難しかった。描写、心理表現、文体などなど、、、
0206名も無き被検体774号+ (スププ Sd33-TNL7)
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2018/05/27(日) 18:30:29.06ID:ph45zuwed
面白かった
また期待してる
0207名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 19:19:42.31ID:v8ZV0SQ+0
>>205
今の所続編・新編の予定はありません

>>206
ありがとう
0208名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 19:21:55.52ID:v8ZV0SQ+0
落ちるまでは質問等があれば答えていきます

あとはぼちぼち創作小話でも書いていきます
0209名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 19:25:33.33ID:v8ZV0SQ+0
GW後半、暇になってこの話しを書こうと思って第二章くらいまでは書き留めてました

すぐに完成するだろうと思って全部書き留め終わる前にココに書き込み始めたんだけど途中から詰まりだして結局半月以上かかってしまいました
最後までなんとか書けたのは保守してくれた人たちのおかげです
0211名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 19:34:50.22ID:v8ZV0SQ+0
>>203
特にモデルはなし
適当に小説開いて出てきた名前と苗字をくっつけました
0212名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 19:35:36.22ID:v8ZV0SQ+0
間違えた>>210だった
0215名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 19:49:32.47ID:v8ZV0SQ+0
>>213
残念ながら男
たいした恋愛もしてないです

話の中では所々、ドラマ「昼顔」の響いた言葉などをいくつか多用しました
0216名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 20:05:05.04ID:v8ZV0SQ+0
ちなみに考えてた他の展開としてはいくつかありました

・ノリスケも浮気をしだす
→ありがちで安っぽい展開になるから却下

・サザエに不倫を誘い互いに共犯関係になる
→サザエの性格から不倫行動をさせるのが厳しかったのとサザエさん一家の各家族との会話、心理戦、駆け引きが面倒臭そうになりそうだったので却下

・直貴だけではなく晶とも関係を持ち三つ巴の三角関係
→ただの官能小説になるのとバッドエンドにしからならなそうだったから却下

・直貴に付き合っている人か婚約者がいる
→ドロドロの修羅場になり収束が難しそうだったので却下
0217名も無き被検体774号+ (アウアウカー Sa95-aFdU)
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2018/05/27(日) 20:07:30.02ID:IOtIVFxSa
面白かった
乙です
0219名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 20:14:51.11ID:v8ZV0SQ+0
>>217
ありがとうございます

>>218
ちなみにきんぴらゴボウの作り方は各種料理サイトと動画サイトを参考にして書いたので一応はちゃんと作れるようになってます!
他の料理も話の中で書こうと思ったけど各要所を列挙して話しの中に織り込むのが結構大変だったのでやめました
0220名も無き被検体774号+ (ワッチョイ 13db-HY9j)
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2018/05/27(日) 20:46:29.11ID:v8ZV0SQ+0
他、小説投稿サイトでなく5chに書き込んだのは読んだ人の感想が聞きやすいかなーと思ったのと小説家になろう、とかだと感想やレビューに会員登録が必要だし作品が膨大過ぎて読まれないかと思ったから
0221名も無き被検体774号+ (ニククエ Sa63-Bffi)
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2018/05/29(火) 14:10:47.62ID:wEa7KB86aNIKU
>>220乙!
やっと読めた!面白かった!!
作者の思惑通りタイコさんがモデルになってる事でイメージが湧きやすかったわ
修羅場にしなかった事もイメージを崩さなくて良かったね!
足早に終わらせるより料理を作るシーンをもっと具体的にしても良かったんじゃないかとは思うけど創作意欲にも関わるからねー
また面白い話思いついたら教えてくれな!
お疲れさま!ありがとう!
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