ロシア軍によるウクライナ侵攻の長期化で西側各国で厭戦(えんせん)ムードが出つつある。しかし、ロシアの占領を許したまま停戦することは日本にも負の側面が多い。ウクライナ国民が求める限りは支援を続けるべきだ。

戦況は膠着したままだ。2023年6月に始まったウクライナ軍による反転攻勢も成果は乏しい。

最大の軍事支援国である米国からは議会の混乱で新たな兵器供与が止まった。今年11月の大統領選でトランプ候補が当選すれば、ロシアに有利な形でウクライナが停戦を迫られる懸念も出ている。

そうなればこれまで継続してきた支援の成果が台無しだ。国家の主権、領土の一体性、人権の尊重という基本的原則が崩れ、同じことがアジアでも起きる可能性を覚悟しなければならなくなる。

中略

エネルギー調達先の多様化や、再生可能エネルギーへの転換に向けた過渡期を乗り越えるためにロシアは重要な存在と位置づけられたが、このままでは国益を損ない続けることになる。

平和条約交渉も棚上げが続く。プーチン大統領は「制裁を科したのは日本からで対話の再開は日本次第」との立場だが、過去の経緯から判断してプーチン政権が日本に歩み寄ることは期待できない。

現在、北方領土へのビザなし交流は打ち切られ、旧島民は墓参さえできない。同政権は不法占拠の既成事実化を進めるつもりだ。日本にとっても割に合わないロシアの勝利を許すべきではない。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK012A90R00C24A2000000/