石川県産の高級ブドウ「ルビーロマン」が、開発当初の2007年から日本国内で商標登録できず、名称を誰でも使える状態になっている。登録制度に関する県職員の理解不足などが原因。同様の問題は他品種でも起きており、国は農産物に関する制度の啓発に力を入れる考えだ。

農産物には、種苗法の「品種登録」と、商標法の「商標登録」がある。品種登録は、第三者の無断による生産・販売を規制する制度で、農林水産省によると、石川県は05年3月に「ルビーロマン」の名称で出願し、07年3月に登録された。

これに対し、商標法は、品種登録された名称では商標登録はできないと定めている。品種登録をした開発・生産者とは別の人物が同名で商標登録することを認めれば、商標権を持ったその人物に利益が集中し、開発者や生産者の権利が守られない状況になる恐れもあるためだ。このルールにより、ルビーロマンは品種登録された時点で同名での商標登録ができなくなった一方、第三者が別のブドウをルビーロマンの名称で売っても商標権に基づく差し止めはできない状況となっている。

石川県では品種登録と商標登録を違う部署が担当しており、馳浩知事は「縦割りの弊害で、県庁内で制度への理解が乏しかった」とミスを認めている。

ルビーロマンと同様に、高級ブドウの「シャインマスカット」やイチゴの「とちおとめ」もこの名称で品種登録したため、同名で商標登録できずにいる。一方、福岡県開発のイチゴ「あまおう」は「福岡S6号」の名称で品種登録し、「あまおう」で商標登録した。

農林水産省は農産物の知的財産保護のノウハウ不足が課題とみており、特許庁と石川県の3者で4月、生産者らを含めた研修会開催に向けた連携協定を全国で初めて結んだ。知的財産保護に詳しい富山大の神山智美教授(環境・行政法)は「日本は知財保護の後進国。こうした取り組みを全国に広げ、底上げを図るべきだ」と指摘している。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20230922-OYT1T50134/