井崎脩五郎のおもしろ競馬学 「銭無しの親分」で大笑い
長老記者が言う。
「昔、アラブの競馬に、ゼニガタヘイジという馬が出ていたことがあるんだよ」
「へえ~」
「これが、逃げてるヤツをつかまえるのが得意かというと、違うんだよ。いつも自分が逃げてんの」
「ゼニガタヘイジが逃げちゃうんですか!?」
「そうなんだよ。場内放送で、今日もゼニガタヘイジが逃げてます。あっ、あっ、ゼニガタヘイジつかまったあ! もうそれが決まり文句だったな」
そのゼニガタヘイジという馬、小説「銭形平次」(原作・野村胡堂)、あるいは映画「銭形平次」に関係のある人が所有していた馬なのだろうか。
銭形平次は戦前から映画化されており、戦後でいうと、終戦間もない1949年の「平次八百八町」は、平次を長谷川一夫、恋女房のお静を花井蘭子がつとめている。シリーズ化され、お静は山本富士子だったことも。
テレビ映画の銭形平次は、大川橋蔵と八千草薫。
いま、BSフジで再放送されている銭形平次は、北大路欣也と真野あずさ。前に見たことがあるのに、やってるとまた見ちゃう。ところどころ忘れているので、飽きない。
じつは長老記者には、競馬でコテンパンにやられても、一文無しで飲みに行ける小料理屋が、競馬場の近くに一軒ある。ツケがきくのだ。
店の戸を開けると、中から大女将が、「あら、銭無しの平気親分、いらっしゃい」と迎えてくれる。
銭形平次をもじって、銭無しの平気親分。うまいこと言うもんだなあ。
この店の常連には、万馬券ばかり狙ってハズれ、質屋通いをしているということで、万質(まんしち)親分と呼ばれている記者もいる。言うまでもなく、銭形平次のカタキ役、万七(まんしち)親分のもじり。
店からの帰り、夜道で「♪今日もなけなしの、今日もなけなしの、銭が飛ぶ」と歌うのが、いつものこと。みんなで大笑いしている。(競馬コラムニスト)
https://news.yahoo.co.jp/articles/28201ebb69f67f101d30518b80b64a52c5f53447