ドドッ、ドドドドドッ─。熊本県玉名市岱明町の木造民家で、夜中に天井から激しい物音がしたのは4月上旬。家主の男性(66)は「眠れないくらいの大きな音。2年前にイタチが侵入したことがあったが、その時とは明らかに違う音だった」。アナグマかハクビシンと考え、地元猟友会員に屋根裏に箱わなを仕掛けてもらった。
4月22日、捕獲した2匹の動物の尾には黒と白のしま模様があった。正体は体長20~30センチのアライグマの子ども。翌日、体長約50センチの成体の雌1匹もかかった。屋根裏の断熱材は無残に引き裂かれていた。
「県内の民家で繁殖が確認されたのは初めて。ふん尿に触れることで感染する病気もある。アライグマ回虫が人に感染すると、重症の脳障害を引き起こすこともある。非常に危ない害獣だ」。アライグマの駆除を進めるNPO法人・くまもと未来ネット(熊本市)の歌岡宏信さん(67)は警鐘を鳴らす。
男性は、住宅の増築部分の隙間から侵入した可能性が高いと考え、コンクリートで埋めた。「アライグマが狂犬病も媒介することを後で知った。屋根裏を点検した際にかまれていたらと思うとゾッとする」と顔をこわばらせた。
環境省が特定外来生物に指定しているアライグマ。日本にはペットとして輸入された。かわいらしい姿とは対照的に気性は荒く、どう猛。捨てられたり、逃げ出したりして野生化した。雑食で環境適応能力と繁殖力が強く、生息域を全国に広げている。九州では沖縄県を除く、全県で確認されている。
県内では、10年に熊本市南区城南町で初めて見つかった。県自然保護課によると、22年度に県内で捕獲されたのは11匹。カメラで撮影されたものなどを加えた確認件数は121件で、3年前と比べて3倍と急増している。今年3月現在、熊本市や天草市、阿蘇市、水俣市など県内24市町村で確認されている。
https://nordot.app/1041124288476102656