2月22日、小諸市の小諸家畜市場。男性係員に綱を引かれてホルスタインの雄の子牛が会場に現れた。脚が悪く、競りは2千円から始まった。
雄は乳を搾れないため一般的に肉用牛として飼育される。

 「2千円、2千円、2千円…」。競りを仕切る男性の声が響くが、集まった肥育農家で、値段を引き上げて購入しようとする人はいなかった。結局、2千円で落札された。

 ハンチング帽子をかぶった肥育農家の高齢男性がつぶやいた。「1年前なら10万円はしてたんだ」

 この日は子牛10頭が出品された。群馬県の肥育農家の男性(53)は、黒毛和牛とホルスタインを掛け合わせた「F1」と呼ばれる交雑種の
雄1頭を1万5千円で競り落とした。子牛はヘルニアを患っていたが、落札価格を抑えられるためあえて購入。自ら治療するという。1年前なら18万円ほどになったとみる。

 男性によると、交雑種は子牛で仕入れてから出荷するまでの約2年間で、1頭当たり5、6トンの配合飼料を食べる。飼料の仕入れ代金はこの2年でほぼ倍増し、
1トン8万~9万円ほどになった。1頭を出荷するのに必要な配合飼料費は、単純計算で30万円ほども負担が増えたことになる。

 加えて灯油代や電気代、牛舎に敷くおがくずの購入費用…。コストは軒並み上昇しており、経営は「完璧な大赤字」。乗り切るには子牛の仕入れ値を抑えたり、
飼育頭数を減らしたりするしかない。

https://news.yahoo.co.jp/articles/e1366e581e97babd71d98a8d49e7b41d43b16886