武藤がプロレス人生のエンディングでサプライズを仕掛けた。内藤のデスティーノで敗れ大の字になったリング上。
マイクを持つと「39年間、続けてきたプロレス今日で引退しますが、武藤敬司のプロレス人生最高に幸せでした」
とあいさつし「プロレス界はますます驀進していきます」と絶叫。そして叫んだ。
「エネルギーも残っているし、まだ灰にもなってねぇや。やりたいことがひとつあるんだよな。蝶野!オレと戦え!」
放送席でゲスト解説した同期入門で84年10月5日にデビュー戦で戦った蝶野を呼び込んだのだ。
武藤は引退を決断する前から「最後は蝶野とやりたい。デビュー戦の相手と引退試合で戦うなんて過去に例がないからさ」
と熱望していた。しかし蝶野は、せき柱管狭さく症の手術で腰を負傷し思いはかなわかったが、
あふれる情熱は止まらなかった。蝶野も戦友のラブコールに呼応し杖をついてリングイン。
来場していたタイガー服部氏が私服姿でレフェリーを務める。放送席はゲスト解説していた辻よしなりアナウンサーが実況を担当。
平成のプロレス黄金時代の瞬く間によみがえるとドームを埋めた3万観衆から大歓声が沸き起こった。
黒い上着を脱ぎサングラスを外した蝶野と武藤は対峙。ゴングが鳴るとロックアップで
二人は歴史を回想するように組み合った。前代未聞の引退試合の番外マッチは、
蝶野がシャイニングケンカキックからSTFで絞め、武藤がギブアップ。
放送席に戻った蝶野が「なんであれでギブアップしたんだろう」と苦笑いしたビッグサプライズ。
バックステージに長州力と自身のイラスト付のTシャツ姿で表れ
「おかげさまで自分の足で…そこまで車椅子で来たんだけど(笑)…自分の足で帰りました」と笑い、
蝶野との番外マッチを「どうしてもやりたかったことなんだよ。締めくくりは蝶野にしたかった。
よくアイツあそこまで動けたよ。アドレナリン出てたよ。嬉しかった期待に応えてくれて」とかみしめた。
常に「見ている人を驚かせたい」と明かす。ケガを抱え試合ができない蝶野を引っ張り出しことは、
まさにビッグサプライズでプロレスならではの世界観だった。
38年4か月に渡りプロレスを骨の髄までしゃぶり尽くした男にふわしいエンディングでプロレス人生の幕を閉じた。
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