「上級国民だから逮捕できない」はデマだった…大炎上した「高齢ドライバー事故」の知られざる実態
https://news.yahoo.co.jp/articles/fa98ee8c6f5fe1690f67555745998345463e2745?page=1



2019年4月、東京・東池袋で2人が死亡、9人が負傷する事故が起きた。この事故の加害者家族に話を聞き、『家族が誰かを殺しても』(イースト・プレス)を書いた阿部恭子さんは「加害者家族は自分が起こした事故のように罪責感に苦しんでいた」という――。(第2回)

【写真】阿部恭子氏の著書『家族が誰かを殺しても』(イースト・プレス)

 ※本稿は、阿部恭子『家族が誰かを殺しても』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

■「人殺し!」という声が響き渡った法廷

 「人殺し……、人殺し!」

 2021年2月、東京地方裁判所102号法廷。被告人が退廷している最中、中年女性の声が法廷に響き渡った。被告人席の目の前の傍聴席にいた私は、まるで後ろから矢を打たれたように、一瞬、息が止まる思いがした。「そこの人、発言を控えなさい!」職員が口々に、叫んでいる女性の発言を止めるよう叫び、法廷は一時、騒然となった。

 2019年4月19日、東京・東池袋で当時87歳の被告人・飯塚幸三が運転していた車が暴走し、2名が死亡、9名が負傷する大惨事となった交通事故の刑事裁判。私は被告人である彼の目の前の特別傍聴席にいた。被害者とその家族、支援者、そして多数の報道陣が記者席に詰めかける中、私は針の筵(むしろ)に座る思いだった。

 毎回、公判期日の前日は一睡もできず、緊張のままその日を迎えていた。重大事件とあって法廷は厳戒態勢が敷かれ、傍聴人の入廷から出廷まで複数の職員が対応していた。私はいつも、何か起きたら助けてほしいとの思いでそばにいる職員を確認し、席についた。