国内債券市場で決済日までに国債を受け渡しできないフェイル(決済不成立)が急増している。日銀によると、6月の国債のフェイル金額は3兆5264億円と米リーマン危機時の2008年9月に次ぐ規模になった。その裏には金利上昇に懸けて国債を売る海外勢と国債買いで応戦する日銀の攻防がある。

フェイルは証券の売買で受渡日に約束した証券を用意できず、決済できないことを指す。円滑な市場取引のため、信用力の問題に起因する「債務不履行」とは区別し、ある程度は容認する慣行がある。

6月は金融政策決定会合にかけて海外ファンドなどが国債売りを強めた。先物の売り方が決済時の受け渡しに必要な残存7年の現物国債を確保しようとしたが、日銀が市中の国債を買い増したため、流通量が激減してフェイルが多発したとみられる。

外資系証券のトレーダーは「日本の決済慣行も知らないような初参加の海外勢が大挙していた」と打ち明ける。

日銀は保有国債を一時的に金融機関に貸す「国債補完供給」で連続して使える日数を増やしたほか、日銀への返却が難しい場合に金融機関による買い取りができるよう要件の緩和を行った。実際、残存7年の国債では金融機関が1700億円ほどを買い取ったようだ。

今後も海外勢の売りが続くようなら「国債不足」は解消しない可能性がある。フェイルの動向は攻防の激しさを測るバロメーターになりそうだ。
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