外見へのジョークでも許容されるワケ

日本では、他人の外見、とりわけ病気による外見をジョークのネタにしたロックへの怒りが強いように見受けられる。
だが、アメリカではそこへの抵抗は薄い。コメディアンらは一斉にロックへの支持を表明したし、この出来事の後、ロックのショーの
チケットの値段が高騰したことを見れば、一般人の多くもロックの味方であることがうかがえる。

なぜなのか。ロックが言ったジョークは、悪趣味かもしれない。しかし、強者が弱者を笑うものではないからだ。もしロックが白人
だったなら、彼は大バッシングを受け、しばらく仕事を干されることになったはずである。アメリカではここのところがとても重要だ。

黒人が白人をからかうジョークは問題ないが、逆は絶対にだめ。ストレートがLGBTQをネタにするのもトラブルの元。スタンダップコメ
ディアンのデイブ・チャペルは、最近それで問題になったばかりだ。

だが、権力と富がある人、たとえば政治家やセレブリティーは、思いきりネタにしてもいい。いや、コメディアンからネタにされるこ
とを許容できないなら、政治家やセレブリティーになるなと言っていいくらいだ。

長寿番組「Saturday Night Live」などは、毎回、実在の政治家やセレブリティーのパロディーをやっている。誰かが自分を演じてバカ
なことをやっているのを見て、不快に思う有名人もいるだろう。しかし、そんなことで文句を言うのは、「小さい」のである。

イギリス人コメディアンのリッキー・ジャーヴェイスも、本人がいる前で大物セレブを容赦なくネタにするのが大得意だ。2020年の
ゴールデン・グローブ授賞式では、ジョー・ペシをベイビー・ヨーダと呼んだり、マーティン・スコセッシの身長をネタにしたりして
いる。
テレビに映る表情を見るかぎり、そういったジョークに抵抗を持ったセレブも明らかにいたが、ジャーヴェイスは「ただのジョークだ
よ。それを忘れないで。僕たちはみんなすぐ死ぬんだから」と言いつつ、遠慮なく続けた。

セレブの「お説教」に一般人はうんざり

名声にまかせてなんでも自分の思うままにしてきたハリウッドのセレブリティーが偉そうに社会問題を説教することに、一般人がうん
ざりしているのをジャーヴェイスは知っている。
だから一般人を喜ばせるためにそれをやるのだと彼は語っている。彼のターゲットにされたセレブリティーが、彼のジョークを気に食
わないからと、舞台に上がって彼に平手打ちをしたことがあっただろうか。
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