北海道新聞は「調査報告の体をなしていない」元記者の識者が批判
7/7(水) 21:12
配信
毎日新聞

 北海道新聞の女性記者(22)が取材の際、国立大学法人旭川医科大(北海道旭川市)の建物内に無断で侵入したとして建造物侵入容疑で現行犯逮捕された事件で、同社は7日、経緯や見解をまとめた「社内調査報告」を公表した。この調査報告について、北海道新聞の元記者で、北海道警裏金問題の取材班代表として新聞協会賞などの受賞歴がある高田昌幸・東京都市大教授(調査報道論)は毎日新聞の取材に「調査報告の体をなしていない。市民の支持を得る気がない」と批判した。理由を詳しく聞いた。【山下智恵/デジタル報道センター】

 ――北海道新聞が調査報告書を公表しました。どう評価しますか。

 ◆まず最初に、調査報告なのに調査の主体が書かれていない。誰が調査したのかわからない。もし本来は調査対象であるはずの編集局幹部が調査の主体であれば、もはや調査と言えません。調査報告の体をなしていません。

 調査報告を紙面とホームページ上の会員向け記事でしか公表していないことも問題です。いわゆる公に知らせていないのです。この問題を道民や道外の市民、報道界、問題に関心を持つ人に広く知らせようとする意思を感じません。

 このネット全盛時代に何を考えているのか。紙面で報告すればよいとはならない。問題を小さく小さく終わらせたいという会社幹部の意思があまりにも露骨で情けないです。

 ――調査報告は、逮捕を遺憾とし、取材手法に問題があったとの見解です。

 ◆「遺憾」とは「思い通りに行かずに残念に思うさま」です。では思い通りとは何なのか。無事に見つからずに取材ができることなのか、見つかっても逮捕されないことなのか。見つかりさえしなければよかったのか。よく分かりません。

 そして取材活動中の記者が逮捕されたという事態について、当事者でありながら、事案に対する評価が書かれていません。逮捕は不当なのか、やむを得なかったのか。評価のないことが報告書の最大の欠点です。

 取材経緯も説明になっていません。例えば、現場となった4階に記者を行かせる指示を誰がしたのか「はっきりしません」と。その程度の社内取材もできないなら、報道機関を名乗る資格などない。もはやお笑いです。

 逮捕されたのは試用期間中の新人記者です。調査報告には「キャップや別の記者から、校舎内で身分を聞かれても、はぐらかすように言われていた」と記されています。こんな指示を現場で受けたら、新人は普通言い返せません。それを分かっていながら「経験を積ませたかった」と言って行かせたと。一種のパワハラだと思います。

 大学職員に見つかった際、記者が名乗らなかったのも、こうした指示を守ろうとしたからでしょう。これは会社全体の問題です。

 それなのに、調査報告は責任を旭川支社報道部のキャップや記者に押し付け、そのうえで記者教育が必要だと言っている。現場にしたら「冗談じゃない」と叫びたくなるでしょう。一連の取材行為と逮捕という事態をきちんと自己評価できない幹部にこそ問題があると思います。教育が必要なのは幹部でしょう。

以下ソース
https://news.yahoo.co.jp/articles/91c92dc40fc7dfcdc4bbd1a7bb2b01f718aa974f