私は、明治以来約100年に渡って続いた日中の「力関係」のイメージから、日本人がまだ抜け出せていない、という原因が大きいと考えている。ある程度以上年配の日本人にとって中国は、自分が生まれた時から「日本よりずっと遅れた国」だった。それよりいくぶんか若い世代にも「日本が上、中国が下」という認識のパターンが残っているのではないか。
国の経済力の指標として代表的なものに国内総生産(GDP)がある。もちろんGDPだけで国の総合力を判断することはできないが、大雑把な指標としては重要と考えてよいだろう。さて、2020年時点で中国のGDPは101兆5986億元(約1726兆円)で、日本は539兆1000億円だった。つまり、中国の経済規模は日本の3倍以上になった。中国が日本をはるかに上回る経済大国に成長したのは事実だ。
ここで、中国関連のニュースに寄せられるコメントの傾向を、もう一度、考えてみよう。中国の発展を素直に認める投稿も少なくはないが、「主流」とは言えない。まず目立つのは、中国の体制を批判するコメントだ。「中国人は割と好きだが、中国共産党は諸悪の根源」と主張する投稿も珍しくない。
もちろん、中国国内にはさまざまな問題や矛盾が存在する。政策面について私自身、「その方法はマズいよなあ」と思うこともよくある。ただし、改革開放が始まって以来の共産党の牽引(けんいん)により、中国人のかなりの部分が豊かな物質生活を手に入れたのは事実だ。「人はパンのみにて生きるにあらず」とも言うが、まずは飢える心配がなく、自分自身がさらに豊かになるために努力することに意味を見出せる社会を「政治体制に納得がいかない」という理由だけで非難するのは、「客観的事実に準拠して」というよりも、心の底の“情念”に突き動かされた面が大きいのではないか。
もう一つ目立つのは、中国と絡めて日本人の「民度」を絶賛する意見などだ。確かに、日本人の秩序を重んじ、公衆道徳を大切にする習慣などは、世界に誇ってよいだろう。中国人の「民度」が平均すれば、日本人より低いのも事実だろう。ただ私には、中国発の「トンデモ記事」に対して「それに対して日本人は……」と指定するコメントが多いことには、日本人が自らのプライドをなんとか保とうとする「心理的反応」が影響しているように思える。
続く
https://www.recordchina.co.jp/b876564-s111-c60-d1111.html