「安倍さんを担ぎたい」 耳疑った
 私が菅氏を取材するようになったのは2012年2月。当時の自民党は野党で、総裁は谷垣禎一氏。幹事長は石原伸晃氏で国会対策委員長が岸田文雄氏でした。菅氏はといえば、党の組織運動部長といって、
業界団体などと党の窓口役のようなポストでした。お世辞にも主流派とはいえず、派閥にも属していないので目立つ存在でもありませんでした。当時、政界の関心事の一つが、その年の秋にある自民党総裁選でした。
順調にいけば谷垣氏の再選でしたが、菅氏はこう言っていました。

 「俺は安倍(晋三)さんを担ぎたい」

 私は耳を疑いました。安倍氏はその後歴代最長政権を築いたとはいえ、当時は第1次安倍政権を途中で投げ出したというイメージがついていましたし、自民党内でも民主党に政権を明け渡した「戦犯」と
見られていたからです。当時は再選をめざす谷垣氏のほか、石原氏や地方で人気があった石破茂氏らが有力な候補者として名前が挙がっていました。政権奪還の顔はさすがに安倍氏ではないだろうという
受け止めが大勢だったのです。ただ、菅さんの中では谷垣氏や石原氏、石破氏はピンときていないようでした。誰を担ぐべきか、という観点から総裁選を捉えていたので、私は真意を探るために、こう聞いたことがあります。

 「菅さん本人が総裁選に打っ…

https://www.asahi.com/articles/ASP5863MQP57UTFK00K.html