日本が世界5大ウイスキーに入った衝撃的理由

(略)ところで、ジャパニーズウイスキーは世界の5大ウイスキーの1つと
されていますが、スコッチ、アイリッシュ、アメリカン、カナディアンに
比べると歴史が浅いのは明らかです。2001年のベスト・オブ・ザ・ベスト
でシングルカスク余市10年が総合1位を獲ってようやくジャパニーズウイ
スキーの存在を知り、「日本でもウイスキーがつくられているのか!」と
驚いた海外のウイスキー関係者も大勢いたはずです。

ではいったい、誰が、いつ、ジャパニーズウイスキーを「5大ウイスキーの
1つ」というようになったのでしょうか。
実はこれ、謎なのです。私がウイスキー関連の書籍をはじめて上梓したのは
1992年です(『スコッチ・モルト・ウィスキー』新潮社/共著)。この本で
私は「ジャパニーズウイスキーは5大ウイスキーの1つ」という表現を使って
います。
ただし、これは私の考案ではありませんから、おそらく、このとき参考にした
文献に「5大ウイスキー」という記述があったのでしょう。そう考えると、
1970年代から1980年代には、5大ウイスキーという呼称がすでに使われていた
と考えられます。
1960年代、サントリーやニッカウヰスキーはウイスキーを海外へ輸出して
いました。したがって、海外にもジャパニーズウイスキーを知る人はいた
のでしょう。だからといって、スコッチやアイリッシュの関係者たちが、
ジャパニーズウイスキーを自分たちのウイスキーに並ぶものと認識していた
とは到底思えません。
そう考えると、「世界の5大ウイスキーの1つ」というジャパニーズウイスキー
の肩書きは、当初は“自称”だった可能性が非常に高いのです。

しかしながら今、ジャパニーズウイスキーが世界5大ウイスキーの1つである
ことに疑念を呈す人はいないでしょう。ウイスキーファンならご存じでしょう
が、台湾にカバランという蒸留所があります。カバラン蒸留所は、2006年に
オープンした台湾初の蒸留所です。
2008年に初のシングルモルトをリリースするとその実力が高く評価され、
以来、世界の蒸留酒の品評会で多くの賞を受賞しています。そのカバラン
蒸留所が以前、「台湾のウイスキーを世界の6大ウイスキーとしたい」と
いっていました。
はじまりこそ“自称”だったかもしれませんが、ジャパニーズウイスキーが
5大ウイスキーの1つであることは、ウイスキー業界ではもはや常識となって
いるのです。
https://toyokeizai.net/articles/-/419858