受け手に求められる「コンテンツ読解力」

NYNJ続木:ナイキのCMをはじめとしてメッセージ性の高い広告は、共感の声が上がる一方で、炎上するなど日本では打ち出し方が難しいのではと感じます。メッセージ性の高い広告を打ち出す際の障害や壁となるのはどんなことなのでしょうか。

田中:ナイキの広告が炎上した時に残念だったのは、SNSで拡散されるうちに否定的な意見にひきずられていったことです。あのCMは、批判する人々が主張していたように「日本人全員」が人種差別をしている、というような主語の大きな物語ではありません。解釈によっては3人の女の子のうちのひとりは、エスニック・マイノリティであるかどうか分からない設定であるようにも見えます。

だから日本人が日本人をいじめていたのかもしれないし、もしかしたらいじめていた側にエスニック・マイノリティが含まれていたかもしれない。実はもっと複雑なCMであったかもしれないのに、より単純な意見にどんどん引っ張られる悪い風潮がSNSにはあると思います。でもナイキは全然めげてないと思いますよ。そのメッセージが社会にとって重要で正しいという信念があれば、作り手は怯えずに作っていくことが大事だと思います。

https://forbesjapan.com/articles/detail/40388/3/1/1