中国のワクチンばら撒き“魂胆バレバレ” 北京五輪ボイコットさせないための伏線、ウイグル人弾圧が払拭できればと画策か
3/16(火) 16:56
配信
夕刊フジ

 国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長がクセ球を投げてきた。中国オリンピック委員会から、東京五輪と来年の北京冬季五輪の参加者向けに、新型コロナウイルスのワクチンを提供する申し出があったと突然明らかにしたのだ。欧米では、中国当局によるウイグルでの人権弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定し、「北京五輪ボイコット」を求める声が浮上している。中国の軍事的覇権拡大への批判も根強い。日本と米国、オーストラリア、インドによる戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」の首脳会合(12日夜)では、ワクチンの生産拡大を加速させる連携が確認された。中国が「ワクチン外交」によって、五輪の政治利用を画策しているとすれば、許してはならない。

  「(中国の)連帯の精神に基づく提案に感謝する。東京大会の安全性を確保するうえで新たな画期的なことだ」

 バッハ会長は11日のIOC総会第2日の審議で、中国の申し出について、こう語った。「感謝」「画期的」といった言葉に、バッハ会長の立ち位置が透けてみえる。

 丸川珠代五輪相は12日の記者会見で、「(中国のワクチン提供は)事前に伺っておらず、調整もなかった」と不快感をあらわにし、「中国製ワクチンが承認された国で判断されるものと思っている」「いずれにしても、(東京大会のコロナ対策は)ワクチン接種を前提としないという原則は変わらない」と語り、日本は対象にならないとの認識を示した。

 ただ、現時点で、日本で承認されて接種が始まっているのは米製薬大手ファイザーが開発したワクチンだけだ。

 IOC総会でも、日本側の対応遅れを不安視する声が挙がった。

 ある委員からは「2月中旬に東京でワクチン接種が始まったと言っていた。(日本)代表選手が打つのは、いつになるのか」と情報を求める声が挙がったという。

 中国製ワクチンの信頼性などについて、専門家はどうみるか。

 東北大災害科学国際研究所の児玉栄一教授(災害感染症学)は「臨床試験第2段階の結果は、有力な英医学誌『ランセット』に掲載され、大きな問題があるとは思えない。ただ、最終段階での具体的な結果の公表や論文がなく、信頼性は不透明なのが実情だ。ワクチンは承認されれば、副作用の補償や公費の補助を受けられるなど利点がある。一方で、承認されなくても接種自体は自由診療で可能だが、補償もなく、リスクが高い。日本は明確な情報開示がない限り、認可しないだろう。選手による承諾や自由診療を請け負う医師の確保、十分な量の供給の条件がそろえば五輪までに間に合うかもしれないが、現実問題としてハードルが高く、難しい」と語った。