東芝が「世界初」の水系リチウムイオン電池を開発、低温対応と長寿命を実現


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今回開発した水系リチウムイオン電池では、正極活物質として一般的なリチウムイオン電池で用いられているリチウム酸化物材料を、
負極活物質として東芝が燃えないリチウムイオン電池として提案を強化している「SCiB」で用いているリチウムチタン酸化物(LTO)を採用した。
電解液となる水に、塩化リチウムや硫酸リチウムなどの水に溶ける電解質を高濃度で溶解させている。

このような水を電解液とする水系リチウムイオン電池は、電池電圧が2Vを超えると水の電気分解が進行して水素が発生し電池動作が困難になる。
また、長期間運用する際には、電解液の電気分解反応が進行してしまい充放電反応が進まなくなるという課題もあった。

東芝はこれらの課題を解決するために、一般的なリチウムイオン電池で用いられている多孔質のセパレータに替えて、
リチウム金属酸化物から成る固体電解質セパレータを採用した。
これにより、充電時に正極側から負極側に水素イオンが移動して、負極上の還元反応で起こる連続的な水素の発生を抑制できるようになった。
電池電圧が2V以上でも、固体電解質セパレータの間を移動するのはリチウムイオンだけであり、水素イオンの移動はほとんど起こらないという。
1Cの充放電曲線からは、2.4V電圧での動作を確認している。

水系リチウムイオン電池は、0℃以下の低温だと電解液の水が凍結してしまい充放電できなくなることも課題になっていた。
新たに開発した水系リチウムイオン電池は、この課題も解決しており、−30℃の環境下でも安定して充放電が行える。
その上で、寿命についても、従来の水系リチウムイオン電池では25℃環境下で200回前後の充放電サイクルで容量劣化が起きていたのに対して、
新開発品は2000回以上でも劣化が見られないという。

これらの評価結果は小型試験セルによるものだ。固体電解質セパレータの厚さは150μmと
「かなり分厚い」(東芝 研究開発センター シニアエキスパートの久保木貴志氏)。
今後の顧客評価用サンプルを開発する際には、固体電解質セパレータをより薄くできる見込みだ。




https://news.yahoo.co.jp/articles/bc5a3c0257417c131163bb314a83baa15cb71978