防衛省が電磁波を使う電子戦専門部隊を来年度末に陸上自衛隊朝霞駐屯地(東京都練馬区)へ新設する方針を固め、来年度予算概算要求に関連経費を計上することが20日、分かった。
北海道と熊本県に続く専門部隊で、全国3カ所を拠点に電子戦で先行する中国とロシアに対抗する態勢を敷く。
朝霞には3部隊を統括する司令部機能も新設し、陸自の全国の部隊を指揮する陸上総隊の傘下に置く方針だ。

電子戦は電波や赤外線などの電磁波を使用する通信機器やレーダー、ミサイル誘導で相手の電磁波利用を妨げ、自国の電磁波利用を防護する。
平素から相手の通信やレーダーで使われている電磁波の周波数を把握し、有事には同じ周波数の電磁波を発射して混信を起こさせ、無力化することで作戦全体を有利に進める。

陸自には電子戦部隊として第1電子隊が東千歳駐屯地(北海道)にあり、今年度末には健軍(けんぐん)駐屯地(熊本県)に80人規模で部隊を発足させる。
朝霞に新設する部隊も健軍と同じ規模を想定している。

電磁波のうち地球の裏側まで伝わり、長距離通信に適している短波(HF)は日本のどこからでも中国とロシアの全域で両国軍が使用する通信の状況が把握できる。
日本周辺に展開してくる艦艇と本国の司令部などとのHF通信を確認することも可能だ。

電磁波は複数の拠点で収集することにより電磁波を発する相手の部隊や装備の位置を詳細に特定でき、相手が移動している場合は移動方向も確認しやすくなる。
陸自が専門部隊の拠点を増やすのはそのためだ。

個々の艦艇や航空機ごとに通信などで発する電磁波には指紋のような特徴もある。
平素から収集した電磁波の特徴と装備をひもづけして相手の動向把握や作戦形態の分析に生かし、有事には効果的に妨害電磁波を発射して無力化する。

収集と分析を重ねた電磁波の特性を蓄積してデータベースも構築する。
有事にどの周波数を使って相手の通信やレーダーを妨害するか備えておくためで、電子戦部隊の司令部機能がそうした役割を担う。

https://www.sankei.com/politics/news/200920/plt2009200013-n1.html