町工場でもテレワーク 自宅で溶接、オンライン営業

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新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、現場重視の町工場でもテレワークを導入するケースが増えてきた。
職人が自宅で溶接作業をこなしたり、オンラインで商談を進めたり。コロナ禍で経営環境が厳しさを増すなか、町工場も「新常態」を模索している。

「きょうはこの溶接作業をお願いします」。東京都北区にある溶接工の市原萌さん(27)の自宅に設けた1畳ほどの作業場に、勤務先の町工場から指示が飛んだ。

火花が飛ばない家庭用溶接機を操作し、溶接マスクについたカメラで作業内容をリアルタイムで町工場に送る。
勤務先のクリエイティブワークス(東京・江戸川)はビデオ会議システムで会社と自宅の職人をつなぎ、緊急事態宣言中も生産を続けた。

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あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の溶接キットは、同社の宮本卓社長がもともと技術指導のために開発した。
業界では技術継承や人材育成が課題だが、宮本社長は「キットを使えば、場所を問わず仕事ができる可能性を見いだせた」と手応えを語る。
市原さんは現在、工房に戻っているが第2波がくればテレワークの再開も検討する。

東京都が都内の企業約400社を対象に実施した調査によると、従業員数30〜99人の企業で3月時点にテレワークを導入していたのは19%だったが、4月に54%となった。
従業員数100〜299人の企業でも4月で71%に達した。

業種別に見ると、現場作業や対人サービスが中心の業種での導入率は4月で55%で、3月と比較すると3.7倍となっている。
導入が遅れていた中小企業でも新型コロナを機に急速に進んでいることが分かった。

コロナによる緊急事態宣言や外出自粛要請の影響で、現場ありきだった町工場もテレワークに踏み出し始めた。

照明器具製造・販売のキテラス(埼玉県戸田市)は3月末から、15人の従業員のうち設計部門や経理などの半数以上は在宅勤務にし、出社人数を最大3分の1まで絞った。

毎日の昼礼やミーティングはビデオ会議システムで実施。社員に好評で、佐久間茂社長は「環境を整えれば人数が少なくてもリモートでできることが分かった。今後も続けていきたい」と語る。

オンライン営業に取り組む動きもある。
金属加工・機械装置組み立ての三松(福岡県筑紫野市)は県外移動が制限されていた4、5月に新規客向けの工場見学をオンライン中継で行い、平時の7割ほどにあたる20回実施した。
本来は設計者や技術者が客先に出向いて行う技術相談会もウェブ上で実施。オンラインの工場見学と技術相談会は6月に5回実施した。

回線を常時つなげて出入り自由にしたことで、忙しい技術者が参加しやすくなるメリットも。
田名部徹朗社長は「日程調整や出張の必要がなくなり、よりスピーディーに商談が進むようになった。営業は足だけで稼ぐ時代ではなくなった」と話している。

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