“5Gで先行”中国が次に狙う米国の牙城「クラウド」
7/2(木) 9:30
毎日新聞

 5G(第5世代移動通信システム)で世界をリードする中国が次に狙うのは、現在は米国が圧倒的に強い「クラウド」分野だ。ジャーナリストの高口康太氏がリポートします。【週刊エコノミスト編集部】

 ◇米国が恐れるファーウェイ

 米商務省は5月15日、中国通信機器・端末大手ファーウェイへの制裁強化案を発表した。1年前の制裁では、米企業による製品やサービスの供与を禁じ、第三国企業であっても一定以上の比率で米国由来の技術が含まれた製品は供与できないとした。新たな制裁案は、米国製の製造装置を使って製造された半導体の、ファーウェイへの輸出を禁止する。ファウンドリー(半導体受託製造)大手の台湾TSMC(台湾積体電路製造)とファーウェイのつながりを断つ狙いだ。

 米国はなぜ、これほど執拗(しつよう)にファーウェイを狙うのか。

 過去10年近くにわたり、技術がもたらす成長を主導してきたのはスマートフォンなど「モバイルインターネット」だった。今、次なる技術トレンドの主導権をめぐる争いが激化している。ファーウェイが世界トップの技術力を持つ5Gが一つの柱だが、それだけではない。

 ファーウェイはもともと自らの事業を「コネクト」、すなわち通信と規定していた。その企業姿勢を示す言葉に「上はアプリに触らず、下はデータに触らず」がある。クライアントのデータにはノータッチで企業秘密を侵さぬように配慮し、各種アプリの開発はパートナー企業の縄張りとして侵犯しない。真ん中の通信だけに特化する、という意味だ。こうしたすみ分けを守ることが高成長の後ろ盾となってきた。

 だが、現在は「コネクト+インテリジェント」とその領域を拡大している。 インテリジェントとは、コンピューター端末がデータ処理能力を持つことで、AI(人工知能)がこれに当たる。そこへの参入は、アプリやデータにも触らざるを得ないことを意味する。ファーウェイが安くて高品質の通信を世界にもたらしてくれれば、その土台の上で米国IT企業はビジネスができるというウィンウィンの関係だった時代から、変化した。

 この事業範囲の拡大は、技術トレンドによって必然的に導かれたものだ。

 5Gとは単なる「4Gより高速な通信手段」ではない。デバイスやセンサーなど、あらゆるモノがインテリジェントな能力を持ちネットにつながる世界を実現する規格だ。

 ◇米国勢がシェア握るクラウド

 技術トレンドにおいて、もう一つ重要な柱となるのがクラウドコンピューティングだ。5Gというコネクトによって収集されたデータを集め、分析し、活用する新時代のインフラとして決定的に重要な役割を果たす。自動運転やスマートシティーで、クラウドは必要不可欠な存在だ。