■自国の国家主権を守りたいなら他国の国家主権も尊重せよ

 国家主権とは、他国という外野からとやかく言われないことにこだわりをもつことがその基礎となる。それを持つのが独立国家というものだ。他国にとやかく言われることを安易に認めてしまうと、ゆくゆくは国家の独立性を失ってしまう。
 もちろん国際社会で確立されたルールや、国家間で合意したルールに従うことは当然であり、その範囲では他国から干渉を受けることになるが、それも国家主権に基づいた自らの判断である。
 これは大国だけでなく北朝鮮のような国であっても、他国から圧力を加えられることを拒否することにこだわっている。国力のない北朝鮮は、核兵器を開発することで貧弱な国力を補う戦略だ。
 台湾も中国に飲み込まれないように、独立性を保つことに必死になっている。
 どの国も、他国から「干渉されたくない」という国家主権を守るのに必死なのである。
 日本ももちろんそうだ。
 そして自国の主権を守ろうと思えば、すなわち自国の主権を他国に尊重させようと思えば、他国の主権も尊重しなければならない。
 これが《フェアの思考》だ。
 自国の主権を他国に尊重せよと迫りながら、自らは他国の主権を尊重しないなら、それはアンフェアの思考の典型例だ。

■もし中国に「沖縄県民の声を尊重せよ」と言われたらどうするか
 日本の政治家や一部インテリたちは、香港問題について「香港市民の声を尊重せよ」と中国を批判する。
 では、他国から逆に「沖縄県民の声を尊重せよ」と言われたら日本はどうするか。在沖縄米軍基地普天間飛行場の辺野古移設について、沖縄県民は繰り返し反対の声を上げてきた。国政選挙や沖縄県知事選挙、そして先日行われた県民投票でも、辺野古移設にNOの県民の声が圧倒的に勝っている。
 このことを捉えて、他国、特に中国が「沖縄県民の声を聴け! 」と言ってきたら、日本国民はどう対応するだろうか? 
 普通なら「それは日本で決めるので、放っておいてくれ! 」と言い返すだろう。それこそ、香港問題で中国を辛辣に批判する政治家たちに限って「中国は黙ってろ!  日本のことに干渉するな! 」と言うだろう。
 このような事情を踏まえて、フェアの思考に基づくならば、香港問題についてどう考えるべきか。
 それは、中国の香港への主権は最大限尊重しなければならないし、もし一国二制度について中国が主権を取り戻す試みをするのであれば、その心情を一蹴するわけにもいかない。
 1997年に香港が中国に返還されることを合意した、1984年の中英共同声明3条1号では、香港は中国憲法31条に基づき「中国の特別行政区になる」ことが定められている。
 その後、1990年に香港基本法が成立した。重要なのは、ここで香港に適用される法律の制定者や権限について以下のような条項が定められていることだ。
 同18条の規定は次のようになっている。

続く
https://news.yahoo.co.jp/articles/2810c62385b0206592e8c7524b960ed7b10b3a41