ストロング系の酒は「危険ドラッグ」なのか 飲みやすさで人気の陰に依存症の懸念
毎日新聞 2020年6月17日 21時21分(最終更新 6月17日 21時21分)
https://mainichi.jp/articles/20200617/k00/00m/040/268000c

 飲みやすさと低価格で近年売り上げが急速に伸びているアルコール度数7〜9%のストロング系チューハイ。ビールなど他のアルコール商品の売れ行きが縮小傾向にある中で市場をリードするが、アルコール依存症に取り組む専門家からは飲み過ぎや依存症を誘発するリスクが大きいと警鐘を鳴らす発信が相次ぐ。そんな中、オリオンビール(沖縄県)が「消費者の健康配慮のため」として今年に入って自社のストロング系チューハイの生産終了を決め、業界に一石を投じた。「ストロング系」全盛の流れを変えることになるのだろうか。【平塚雄太/西部報道部】

 退職後に妻を病気で亡くし、1人暮らしになった60代の男性。喪失感や孤独から飲酒を重ね、行き着いたのがストロング系チューハイだった。アルコール度数が高いのですぐに酔えて、口当たりがいいため飲むのが止まらなくなり、ろくに食事も取らずに飲んでは寝る日々。ろれつが回らずに失禁をするようになっても宅配で注文し続け、幻覚や幻聴を自覚するようになった。離れて暮らしていた娘が電話で異変を感じ男性宅を訪ねると、空き缶があふれ、異臭の充満する部屋に脱水症状で倒れていた――。

 これはアルコール依存症の治療に取り組む大船榎本クリニック(神奈川県鎌倉市)の精神保健福祉部長、斉藤章佳さんが著書「しくじらない飲み方 ―酒に逃げずに生きるには」(集英社)で紹介した依存症の男性の例だ。本で紹介した依存症6例のうち5例はストロング系チューハイを常飲しており、斉藤さんは「実感として、ここ数年のアルコール依存症患者の7〜8割は『ストロング系』を常飲している」と指摘する。

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