JALとANA、燻る経営統合案…ANA、経営危機の足音、政府保証付き融資は実現せず

 発刊当時は「大ボラ、ガセネタ」という声があった。現在、この「週刊現代」の11年前の記事が、一部クロウト筋の間で注目されているのだ。ANAHDの片野坂社長は「日経ビジネス」(日経BP/4月13日号)のインタビューで、
「仮にそうなっても救済される立場ではなく、残る会社でないといけない」と語る。ナショナル・フラッグ・キャリアはANAであって、JALを飲み込むことになると宣言したのと同じだ。

 現時点での統合の見通しはこうだ。統合する場合、国内線をどうするかだ。国内線まで統合すると、事実上、国内の大手航空会社は1社だけになってしまう。国際線のみ統合して「JANA」、あるいは「新ANA」とし、国際、ANA国内、JAL国内の3社にする案が水面下で進行している、との情報もある。

「ANAはJJ統合(JALとJAS)の時に、会社が潰れる可能性も想定したほどの危機感を持った。だから、JALが破綻後、必然的に規模を縮小し、ANAが規模でJALを上回った時の社内の高揚ぶりはすごかった。その経緯から考えても、JALとの対等合併は絶対にNOのはずだ」(航空業界担当のアナリスト)

 ANA首脳と安倍官邸は「ANAがナショナル・フラッグ・キャリア」で押し通そうとするだろうが、ことはそう簡単ではない。「(今でも)日本のナショナル・フラッグ・キャリアはJAL」と考える世界のエアラインが少なくないからだ。

 折しも、豪航空2位のヴァージン・オーストラリア・ホールディグスが4月21日、日本の民事再生法に相当する任意管理手続きに入ったと発表。事実上、経営破綻した。負債は約50億豪ドル(約3400億円)。2019年の豪国内線のシェアはカンタス航空(60%)に次ぎ2位(30%)。
運航は継続する。ヴァージンはANAと提携して日本路線に参入する計画だったが、新型コロナの直撃で墜落した。豪の現地紙は「ヴァージン・オーストラリアに対し、中国東方航空と中国南方航空、中国国際航空の大手3社が買収を検討している。検討は初期の段階で、正式な交渉には至っていない」と報じた。

 世界の航空業界に経営破綻に直結するような暴風雨が吹き荒れ始めた。ポスト・コロナの世界で生き残る日本の翼はどっちだ。

https://biz-journal.jp/2020/05/post_156723_3.html