https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200330-00616842-shincho-int&;p=3
新型肺炎とともに「デマ」も世界で蔓延している。依然として収束しない、
食料品やトイレットペーパーの買い占めもそんなデマが招いた悲劇だ。そんな中、インドネシアでは、
外交問題にも発展した風評被害を日本人がこうむっていた。
東南アジア情勢に詳しいジャーナリストの末永恵氏がレポートする。

新型コロナの感染源は日本人――インドネシア政府がついた姑息過ぎるウソの顛末

「邦人保護の観点からも極めて重要な問題だ」――。新型肺炎問題で日本人がインドネシアで
差別的な扱いを受けたとして、茂木敏充外相は3月18日の衆院外務委員会で、こう遺憾を表明した。

 同委員会では、外務省の水嶋光一領事局長も、インドネシアやドイツなどの国で
「日本人への差別的な扱いが生じている」との懸念を表明。茂木外相は「再発防止の要請を行った」と
政府や関係団体に抗議したことを明らかにした。

 コロナ騒動に端を発した日本人差別は、外交問題にも発展している。とくにインドネシアの場合は、
国家元首が筆頭となって、その一因を招いた。長年、インドネシアにはODA(政府開発援助)などの形で
巨額の血税が投入されてきただけに、日本政府としては、国民を納得させるだけの相当な対処が求められているだろう。

はじまりは、3月2日のインドネシア政府による「インドネシア初の感染者の感染源が日本人」という
公式発表だった。インドネシアで第1号、そして第2号の感染者とされたのは、インドネシア人の娘(31)と
その母親(64)。自己申告によれば、娘はジャカルタのクラブで日本人女性とダンスをし、
“濃厚接触”。この日本人女性は隣国マレーシアの自宅に帰った後に体調不良で入院し、
新型肺炎に感染したことが明らかとなった。その後、件のインドネシア人の母娘も体調が悪化し、
病院へ。かかりつけ医には「チフス」「気管支炎」と誤診されたというが、日本人女性が陽性だった旨が
インドネシア側に伝えられたことで、母娘も新型肺炎に罹っていたことが判明したという。

 当時、シンガポールやマレーシアなど近隣国で感染者数が拡大していた中にあって、
インドネシアは「感染者ゼロ」を貫いていた。東南アジア域内最大の約2憶6000万人という人口を抱え、
しかも武漢のある湖北省や四川省など中国内陸部を中心とした中国人が年間200万人訪れる条件にあっての
「ゼロ」には、インドネシア政府としても誇りに思うところがあったのだろう。それが、
日本人によって崩されたというのだ。感染者情報開示にあたっては、国家元首に当たる
ジョコ・ウィドド大統領(以下、ジョコウィ大統領)がわざわざ「日本人が感染源」と“認定”する熱の入れようだった。