不妊治療を受けて「5つ子」を妊娠した後、胎児の数を減らす手術で全員が死亡し出産できなかったとして、
大阪の30代の夫婦が慰謝料などを求め病院を訴えた裁判で、全国で初めてとなる司法判断が下されました。

大阪市内の産婦人科医院に対し訴えを起こしているのは、大阪に住む30代の女性とその夫です。

訴状によると、女性は5年前、不妊治療を受けていた産婦人科の医師に排卵を促す薬を投与され、5つ子を妊娠しました。

多胎妊娠は母子の健康に影響を及ぼす恐れがあるため、子宮内の胎児の数を減らす「減胎手術」を受け、女性は双子を出産する予定でした。

しかし、2度の手術の末、胎児が全員死亡し、1人も出産ができなかったため、夫婦はこの病院に対し慰謝料など約2300万円の支払いを求めていました。

本来の減胎手術は胎児の心臓に薬を注入するものですが、夫婦の訴えによると、
「どの胎児に減胎手術したか区別できず、30回以上繰り返して薬を注入したため、全ての胎児が死亡した」などと主張。

一方、病院側は「そもそも減胎手術の方法には定まった見解はない。刺した刺激で胎児が動くこともあり、回数が増えるのはやむを得ない」
などとして訴えの棄却を求め、争っていました。

日本で初めて減胎手術を行ったとされる根津八紘医師は、2003年に国が減胎手術を容認しているものの、
その後、国や学会が明確なガイドラインを作っていないことが問題の背景にあると指摘します。

【減胎手術を数多く手がける『諏訪マタニティークリニック』根津八紘医師】
「当然、学会が動くべきですよ。やはり専門職が考えなければいけないわけで、こういうふうにしていったらどうかという形で国に上げて、
国として形作っていくという。減胎手術をちゃんとした形で行えるように、技術と法を整えていくということです」

28日の判決で大阪地裁(冨上智子裁判長)は「医学的知見が一般的に確立していたと認める証拠がない。
胎児を刺した回数をもって直ちに被告医師に過失があったということはできない」などとして、原告の訴えを退けました。

【原告側・遠藤直哉弁護士】
「誠に内容のない判決でありまして、誠に残念。過失がないということを(判決文に)次々と書かれていますが、証拠を引用せず、その理由も書かれず、結論のみが書かれています。
ただちに控訴して控訴審の審理を受けて、こちらの主張を通してひっくり返せる」

夫婦は「結果は残念でしたが、これを機に減胎手術を知ってもらうきっかけ、手術のルール整備への一歩など、少しでも問題提起として意味を成してくれたら」
などとコメントしています。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200128-21120701-kantelev-l27