記憶を書き換えてうつ病やPTSDを治す日は来るか【人体とテクノロジー】
12/30(月) 18:04配信

マウスでは記憶の書き換えにすでに成功、依存症が電磁波で回復した例も

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191230-00010002-nknatiogeo-sctch

自転車に初めて乗れたときの気持ちを、あなたは覚えているだろうか。初めてキスをしたときや、初めて失恋したときはどうだろう。そうした記憶と感情は、わたしたちの心に長い間残り、蓄積され、わたしたち一人ひとりが形成されるもととなる。

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 一方、深刻なトラウマを経験した場合、恐ろしい記憶は人生を変えてしまうほどの精神疾患の原因ともなりうる。

 しかし、もし恐ろしい記憶がそれほど強烈な痛みをもたらさないとしたらどうだろうか。人間の脳の発達に関する理解が深まりつつある今、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やうつ病、アルツハイマーといった疾患に対し、記憶を書き換える治療法が少しずつ実現に近づいている。

 これまでのところ、実験はマウスなどの動物を中心に行われている。さほど遠くない未来に、わたしたちは人間の記憶を書き換えられるようになるだろう。

脳でコピー、ペースト、削除

米ボストン大学の神経科学者でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラーでもあるスティーブ・ラミレス氏のチームは、ネガティブな記憶をポジティブな記憶で「上書き」できるかどうかをマウスの実験で探っている。

 ポジティブな“楽しい”記憶は、オスのマウスをメスのマウスと一緒に1時間、ケージの中に入れておくことによって形成される。一方、ネガティブな記憶は、別のケージで体を固定するなどのストレスを与えることでつくられる。

あるマウスにそれぞれの体験と刺激を関連付けて覚えさせたら、次は、そうしたポジティブあるいはネガティブな記憶と関わる細胞を、研究者が手術で操作する。

 この実験によってわかってきたのは、ネガティブなケージの中でポジティブな記憶を活性化させると、マウスが以前ほど強く恐怖を感じなくなるということだった。この記憶の「再教育」は、マウスの心的外傷を消すのに役立つのではないかと研究者らは考えている。

 ただし、そうした元々ある恐怖の記憶が完全に上書きされるのか、それとも抑制されるだけなのかはよくわかっていない。

「ワード文書で例えるなら、記憶を新しいドキュメントとして別に保存したのか、元の文書を上書きしたのかがわからないということです」と、チームの一員であるステファニー・グレラ氏は言う。