この一言に、すべてが凝縮しているのではないか。「皆さんと共に政権を奪還して、
7回目の『桜を見る会』であります」。騒動の渦中にある毎年恒例の「桜を見る会」、
今年の安倍晋三首相のあいさつである。私たちの税金で開かれるこの会、実は首相と共に
政権の奪還運動をした人たちの集まりだったのか?【吉井理記、大場伸也/統合デジタル取材センター】

ざっくり、首相あいさつを振り返っておこう。この日(4月13日)は連立を組む公明党の
山口那津男代表も参加。首相は芝生に置かれた赤いひな壇の上から、にこやかに聴衆に
語りかけるのである。 「公明党の山口代表をはじめご来賓の皆様、お忙しい中、こんなに
たくさんの皆様、足を運んでいただきました【中略】今回の桜を見る会、64回目ですが、
山口さんや皆さんと共に政権を奪還してから、7回目の『桜を見る会』となりました」 。
今月に入り、桜を見る会のあり方が問題視されると、ニュース番組が放映したこの場面を
疑問視する声がSNSなどで次々と上がったのだ。

情報番組などでニュース解説をする芸人、プチ鹿島さんは「『皆さんと共に政権を奪還してから』
というあいさつがそもそも妙です。支持者や後援会を前提にしていて、桜を見る会の趣旨と
劇的に異なります」とツイート。「『桜を見る会』は日本国の行事なのに」「『政権を奪還した
皆さん』と桜を見る会だ」といった声も相次いだ。なるほど、「桜を見る会」は首相が
「各界において功績・功労のあった方々を各省庁からの意見等を踏まえ幅広く招待」(8日、参院予算委)し、
慰労するのが趣旨である。思想・信条や支持政党は関係ないはずだが、あいさつを聞く限り、
まるで安倍後援会や自民党の集会のようである。

https://mainichi.jp/articles/20191119/k00/00m/010/214000c