過激な保守的言説で他者を攻撃する「ネット右派」は、どのように生まれ、勢力を強めてきたのか。
伊藤昌亮・成蹊大教授(メディア論)が、1990年代〜2000年代の状況を考察した、約500ページの大著
『ネット右派の歴史社会学』(青弓社)が刊行された。伊藤氏は「歴史的・社会的な文脈の中で、
成立過程を見ることが必要だ」と訴える。 (文化部 小林佑基)
約4年かけて書いた本書では、一くくりにされがちなネット右派とその言説が、「サブカル保守」
「バックラッシュ保守」など6つのクラスター(集団)と、「嫌韓」「反リベラル市民」など5つの
アジェンダ(議題)に腑分けできることを明らかにした。例えば、1990年代に市民主義が盛り上がりを見せ、
リベラル派の言説という権威が社会を暗黙に支配している状況への反発が、「反リベラル市民」のアジェンダを
生み出したとする。この時、メインカルチャーの「空虚な」物言いに対抗するものとして、生活感覚に
根差したマンガなどのサブカルチャーを使う人々が、「サブカル保守」のクラスターを形作った。
戦闘系アニメなどのサブカルは元々、保守とは親和性が高かった。なぜなら、それらのアプローチは、
「上から目線」で戦後民主主義的な言説を押しつけられがちだった子どもたちが、自分なりに戦争を
考えようとして生み出されたものだからだと、伊藤氏は見る。
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https://www.yomiuri.co.jp/culture/20191006-OYT8T50007/