この事件で私が引っかかるのは、どうも抗議している人の多くがヘラヘラして見えることです。
会場に届いた脅迫のFAXからして、「(作品を撤去しなければ)ガソリン携行缶を持ってお邪魔します」と、
表現がヘラヘラふざけている。有本香を頻繁にリツイートするなど保守的傾向が顕著なつるの剛士も、
この件に関して「(略)自国ヘイト作品を展示するアート展なんかに子供連れて行くわけない。
ああ、表現の自由も不自由?も守られて、連日近くでミサイルは飛んでいて、日本はなんて寛容で
平和な国なんだろ。毎日暑いけど、感謝、感謝」とツイートしていますが、これも変な文章だ。

彼らはまず、こういうことに真正面から怒れない。どこかポーズです。きちんと抗議するのは面倒だし、
相手とまともに対峙して議論するのは自信がないので、「平和な国」とか「感謝」とか半笑いで
皮肉を連ねて余裕ぶり、相手を見下すことが「勝ち」だと思っているように見えます。つるのは
「昭和天皇の御真影を焼くという映像作品を観て一体誰が芸術的メッセージを感じるのか」とも書いており、
つまり「芸術的メッセージは見れば感じられるもの」と愚直に信じています。コンセプチュアルな作品の、
コンセプトや理屈の部分を全部無視して平然と批判できるのです。

何が言いたいかって、この感じ、すごく最近の政治っぽいなと思ったんです。真っ正面から反論せず
ヘラヘラ余裕ぶって見下し、理屈が苦手で議論せずに勝ったことにする。こんな人たちが日本の主流だもん、
絶望的ですよね。こういう態度って世界に全然通じないと思います。話めっちゃ飛ぶけど、
こんなんだから北方領土取られるんだと思いました。

週刊文春 2019年8月29日号 「言葉尻とらえ隊」#365
http://imgur.com/O3P21US.jpg

【新聞に喝!】なぜ日本を貶めたいのか 作家・ジャーナリスト・門田隆将
https://www.sankei.com/column/news/190901/clm1909010003-n1.html