7月1日に発表された日本による対韓輸出規制の強化措置は、
徴用工問題の深刻さを韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領に知らしめるために送った「気付け薬」だった。
安倍晋三政権周辺では、そうささやかれているらしい。【堀山明子ソウル支局長】

 劇薬で目覚めて、何が起きたか――。
経済危機を乗り越えようと、財界や政界も協調する挙国一致体制が生まれ、文大統領の求心力は高まった。

 対日交渉では、日韓外交の経緯を知る知日派は退き、
世界貿易機関(WTO)に持ち込まれた韓国の水産物輸入規制をめぐる紛争で今年4月、韓国の規制を認めさせた「勝ち組」が最前線に配置された。
結果的に、「克日」の大合唱が響く中、徴用工問題は脇に置かれている。問題解決には、むしろ逆効果だったのではないだろうか?

 ややこしいのは、日本は「日韓間の信頼が著しく損なわれた」(経済産業省)と具体的な理由は挙げないまま安全保障上の懸念が理由だと強調し、
徴用工問題との関連を否定していることだ。

 一方、韓国の成允模(ソン・ユンモ)産業通商資源相は措置が発表された日にただちに、
昨年10月に元韓国人徴用工訴訟で日本企業に賠償を命じた韓国最高裁判決を理由にした「経済報復措置だ」と明言した。
韓国内では、日本を追い越し、世界をリードする半導体企業のサムスン電子やSKハイニックスを狙い撃ちにしたという見方が浸透している。
日本が今さら「経済報復」を否定しても、韓国民の意識が変わる可能性は低い。すでに国民感情はすっかり傷ついてしまった。




対韓輸出規制「劇薬」のはずが文大統領への助け舟に
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190804-00000004-mai-pol