米国の現職大統領として初めて、トランプ氏が北朝鮮に足を踏み入れ、朝鮮半島が平和構築に向かう流れをつなぎとめる一方、日本と韓国の関係は、先の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)を経て溝の深さを一層際立たせる結果となった。

韓国最高裁が、日本の植民地時代に日本企業に動員された元徴用工らの訴えを認め、日本企業に賠償を命じた最初の確定判決から8カ月。
G20の場で日韓両首脳にあいさつ以上の会話はなく、両国関係は好転の兆しが見えない。

原告団は被告企業の資産を差し押さえ、売却手続きを申請中。日本政府は、1965年の日韓請求権協定で両国民の請求権問題は解決済みとの立場から、協定に基づく仲裁委員会開催を求めている。

2005年に公開された当時の外交文書では、元徴用工らへの補償義務は韓国が負うとされてもいるが、韓国政府が日本側の要請に応じる気配はない。

韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は、G20に伴うマスコミの書面インタビューで「両国が知恵を出さなければならない部分は、被害者たちの苦痛をどのように癒やすかだ」と人道的見地から日本に対応を求める。
日本側は「問題の蒸し返し」と反発している。

こうした中、経済産業省は半導体関連品目の韓国向け輸出規制の強化を発表。韓国側は「断固とした対応を取る」としている。
両国関係が報復合戦に陥れば、いよいよ対話の機運は失われる。

両国民の往来は1千万人規模に達し、拡大傾向。もはや政治や外交の都合だけが日韓関係の全てではないことを、まずもって両国政府、首脳は肝に銘じてもらいたい。

韓国側はG20直前になって日韓双方の企業に賠償相当額を出資させる案を提示した。
過去の経緯を踏まえない形の提案には韓国国内からも、被害者を含めて「どこからも歓迎されない解決策」(聯合ニュース)との批判がある。

安倍晋三首相が、時間不足を理由にG20での文氏との公式会談を見送る意向が伝わると、韓国政府は「われわれも忙しい」などと応じた。
会談を望んでいたのは韓国側であることを思えば、この対応はいかにも稚拙。理屈に窮する韓国側の事情を反映しているようでもある。

韓国側の対応には、文氏の歴史観が影響しているとみられている。外交問題を経済関係に落とし込んで日本側から対立感情をあおるのは、相手の土俵となりかねまい。

G20の議長国として自由貿易の重要性を強調した直後の強硬姿勢には国際社会の反発というリスクもつきまとう。率先して対話の窓をすぼめるのが得策とは思えない。

https://www.iwate-np.co.jp/article/2019/7/2/58765