それは、環境問題を討議する新たな評議会の代表や、法案の諮問機関である「経済社会環境評議会」の議員の一部を、市民からの「抽選制」によって選ぶというものである。

繰り返そう。議員を抽選制で選ぶのだ。

日本人の目からすると意外な試みに見えるかもしれないが、このように、一般市民を抽選で選び、国家や地域の特定の課題について討議・決定をしてもらうという手法は、ヨーロッパ諸国ではすでに珍しいものではなくなっている。

憲法改正を討議するためにアイスランドが2010年に市民1000人を抽選で選んだ事例や、やはり憲法事案についての意見を集めるためにアイルランドが2012年に66名の市民を抽選している。最近では、ベルギーが、国の政策について意見を具申する市民から抽選した委員による審議会を2019年中に設置する発表された。

すなわち、国や地域といった共同体に関わることも、プロ=政治家ではなく、アマチュア=一般市民が公平に決めるべきという流れが出てきているのだ。

抽選ということは、選挙ではなく「くじ引き」で選ばれるということだ。なぜ、今になって政治的な決定をくじ引きで決めるトレンドが各国で出てきているのか、そもそもくじ引きなんて原始的な方法で民主主義に反するものなんじゃないか――。

こうした疑問に答え、「くじ引き民主主義」がトレンドになった具体的な理由と系譜を説明しているのが、最近邦訳されたダーヴィッド・ヴァン・レイブルック『選挙制を疑う』(岡崎晴輝・ディミトリ・ヴァンオーヴェルベーク訳、法政大学出版局)だ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64685
つずきはそおすで