京セラは従来よりも原材料費を約3割減らせる次世代型リチウムイオン電池を開発した。
年内に大阪府内の事業所に試験ラインを設け、早ければ2020年度中に住宅や工場向けの蓄電池の量産に乗り出す。
蓄電池普及の壁になってきたコスト低減につながれば、再生可能エネルギーの利用が増える可能性がある。
リチウムイオン電池はプラスとマイナスの電極の間をリチウムイオンが行き来することで充放電する。
従来は電極の間を電解液で満たしていたが、同社は電解液を電極に練り込んで粘土状にする技術を開発した。

電池内部の電極の層の数を少なくでき、電極を仕切るセパレーターや集電体も少なくて済むため原材料費を従来型よりも約3割減らすことに成功。
従来のリチウムイオン電池と材料は同じで製造工程を簡素化できる。
液体だと燃えやすい電解質を使わないため、電池の破損による発火や発煙などのリスクも低い。

年内に試作の生産ラインを京セラの大阪府内の事業所に設ける方針で、早ければ20年度中の量産開始を目指す。
まずは住宅や工場向けの蓄電池を生産する。
同社の主力事業である太陽光発電装置と組み合わせ、再生可能エネルギーの普及を促す。
新しい技術の開発を機に、蓄電池の部品も自社生産に切り替えていく。

住宅向けで一般的な蓄電池の価格は約100万円かかる。
現在は蓄電池を導入して太陽光パネルでつくった電力を自家消費しても、電力料金の削減で投資を回収するのは難しい。

再生可能エネルギーについては、固定価格買い取り制度(FIT)の価格が下がり、売電するメリットも薄れている。
11月にはFITの買い取り期間を終える「卒FIT」の家庭が出てきて、自家消費も増える見込みで今年は「蓄電池元年」といわれている。

日本の電力に占める再生可能エネルギーの比率は17年度時点で約16%だが政府が18年夏に決めたエネルギー基本計画では、30年度に22〜24%に引き上げる目標だ。

富士経済は30年には車載を除く定置型の蓄電池の国内市場は1.2兆円と、17年の約6.6倍に拡大するとみている。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46410260R20C19A6MM8000/