見る側にいたはずが、いつの間にか作品の中に取り込まれている感覚。東京出張に合わせて、デジタルアート集団「チームラボ」の展示を訪ねた

▼阿波踊りの群舞が写る透明パネルの森に迷い込み、自分もその一員になったかのように鑑賞される。チョウの映像は隣の展示室に飛んでいってしまう

▼コンセプトは「ボーダーレス」。人間は自然界に存在しない境界を作り出して自ら縛られている、と代表の猪子寿之さんは語っている

▼「地球と宇宙というと、その間にはまるで境界があるように思いますが、実際には地球と宇宙は連続的な変移であり、そこに境界はない」
「独立していることと境界があることは関係のない概念ですが、独立し続けるためには境界が必要な気がしてしまう」

▼「日本人」も言葉にすると明確な定義があるかのようだが、実はあいまいだ。
政府がやっと先住民族だと認めたアイヌ民族がいて、しかも自己認識はそれぞれ違う。
沖縄でも、過去の調査では「沖縄人」「沖縄人で日本人」「日本人」の回答が混在した

▼書店やネットには「ニッポンすごい」という自賛があふれる。なぜだか、「中国や韓国とは違って」がセットになる。
無理に線を引き、ゆがんだ優越感で保つ自我は、ぶよぶよの水風船によどむ水のよう。境界は超えられる。人はもっと自由だ。(阿部岳)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/427671

阿部 岳(あべ たかし)
沖縄タイムス社編集委員
1974年東京都生まれ。
上智大学外国語学部卒。97年沖縄タイムス社入社、政経部県政担当、社会部基地担当、フリーキャップなどを経て現職。
著書 国家の暴力 現場記者が見た「高江165日」の真実(朝日新聞出版)。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/70787
http://i.imgur.com/wVR4M7f.jpg