【ニューヨーク時事】「輸入車の増加は安全保障上の脅威」。トランプ米大統領の宣言に、米国に進出する日系メーカーが失望している。過去数十年にわたって現地生産を増やし、
雇用や税収に貢献したことを各州は評価するが、大統領は地道な努力をほとんど認めていない。日本との貿易交渉を進めるトランプ政権は自動車の輸入制限をちらつかせており、各社は警戒を強める。
 「あらゆる点でわが州の経済の屋台骨を形作っている」。米南部ケンタッキー州政府の幹部はトヨタ自動車の貢献を手放しで称賛する。
 1988年に操業を始めた工場の規模はトヨタとして世界最大。8000人以上の従業員を抱え、昨年は米国で売れ筋のセダン「カムリ」など43万台、エンジン53万基を生産した。
 日立製作所の自動車部品子会社やサントリーホールディングス傘下のバーボンメーカーなど190社以上の日系企業も同州に進出。計4万6000人を雇用して地域経済を支えている。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、米製造業における投資国別の雇用者数で日本は39万7000人と断トツ。上位3カ国に入る州は全50州中34州を占め、このうちケンタッキーなど
18州では首位だ。地域的にはオハイオ州など中西部が多く、大統領選でのトランプ氏の支持基盤とも重なる。
 こうした事実を無視するかのようなトランプ氏の「脅威」宣言に、トヨタは「われわれの投資が歓迎されていないとのメッセージを送るものだ」と強く反発。米メディアからも「トヨタが米国から
撤退するような事態こそが脅威だ」(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)と批判の声が上がった。
 しかし、トランプ氏は自動車の輸入制限を貿易交渉で日本から譲歩を引き出すための「切り札」(ブルームバーグ通信)として活用するとみられ、日系メーカーの不安やいら立ちは当面収まりそうにない。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019060100409&;g=eco