阪急梅田駅で切符を購入すると、梅田の「田」の字が不思議な表記になっていることに気が付いた。印字ミスかと思ったが、定期券や回数券にも同様の表記が見られる。
いったいなぜ? 謎を探ると、大阪の街が急成長を遂げた時代ならではの事情が透けて見えてきた。

問題の表記は、阪急梅田駅で購入した切符の印字。梅田の「田」の部分が、本来の漢字(「口」の中に「十」)ではなく、「口」の中が「メ」のような形になっている。
調べてみると、切符のほかにも、定期券やプリペイド式乗車券、回数券などで同様の表記が使われている。

ホームの駅名看板や時刻表などは漢字の「田」なのに……。何か事情があるはず。
阪急電鉄本社(大阪市北区)を訪ねると、広報部課長補佐の正岡裕也さんから意外にもあっさり答えが返ってきた。「梅田駅から乗車した利用者を識別しやすくするためです」

阪急の路線には梅田駅のほかに、駅名に田が付く駅が「池田」「園田」「吹田」「山田」「富田」の5つある。このうち乗車する利用者が最多で、各駅の改札で最も多く扱われるのが梅田発の切符。
改札で係員が切符を確認していた時代、大量に扱う梅田発の切符と、駅名に田が付く他の駅発の切符を目視で瞬時に識別するため、目に留まりやすい変形表記を編み出したという。

ただ変形表記を始めた時期や誰がデザインしたかなどは定かでない。公式の資料や当時を知る社員は残っておらず、過去の社史などにも該当する記述はない。社内伝承の"定説"というわけだ。

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO44718050T10C19A5AA1P00