【抜粋】
 圭汰さんは越境入学していた大分県中津市の県立中津南高校の掃除中に、校舎4階の窓から転落して亡くなった。
 2カ月半後、弘憲さんは県教育委員会から調査報告書を受け取った。事故当日は年7、8回の大掃除で、ワックスがけや窓拭きなどを行っていた。
朝礼で担任は、最後の清掃なので心を込めるようにと、生徒に伝えていた。

 大掃除に取りかかった圭汰さんは、分担された1階のトイレを掃除。3年生の教室がある4階に戻ると、級友が廊下の窓から庇(ひさし)に出て窓の外側を拭いていた。

庇の幅は1.1メートル。手すりや柵はない。手伝おうとした圭汰さんは、庇に下りる際に転落。約9メートル下の2階テラスで全身を打った。
 進学校の同校は、もとは弘憲さんのあこがれだった。その夢を圭汰さんが実現したとき、2人で泣いた。
絵が得意で、役場で働きながら漫画家を目指すと話していた。その息子は、自宅に届いた大学の合格通知を受け取れなかった。
 事故後の示談交渉で、県教委側から、責任のすべてが県にあるとは考えていないとの説明を受けたという。傷つき、悔しさがこみ上げたが、法知識や支援もなく、事故後に心筋梗塞で入院もした。裁判を起こすには心も体も限界だった。

 だが、高校生が掃除中に転落する事故は繰り返された。隣の宮崎県で15年4月、宮崎市の県立高校1年の男子が掃除中、教員の指示で2階の窓の庇に落ちた靴入れを拾おうとして落ち、頭や腕を骨折した。

 愛媛県西予市の県立高校では16年1月、2年男子が3階廊下の窓の外側を拭いていて約8メートル下の中庭に落ち、顔を骨折した。すぐ横に1メートルほどの置き石があった。

 17年5月には、神戸市の中学校で男性教諭が4階の美術室から転落して死亡。窓を拭こうとした男子生徒に「危ない」と言って代わっていた。

 「落ちた――」。保護者の女性が叫びながら階段を駆け下りてきた。1階の教室で懇談していた順子さんが校舎裏に出ると、綾菜ちゃんが抱きかかえられていた。
 呼びかけると口を動かし、うなずいたように見えたが、搬送先の病院で死亡が確認された。
 市教委の調査報告書によると、綾菜ちゃんは窓際に置かれた高さ0.8メートルの本棚の上で遊んでいて、窓から誤って落ちたとみられる。

20人弱の児童は宿題や読書をしていたが、2時間近く経ち、落ち着きがなくなっていった。非常勤講師がしばらく見守っていたが、事故が起きた時は監督役が不在になっていた。
 その2カ月前、鹿児島県霧島市の小学校で天窓から児童が転落し、大けがを負った。
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