社説[ジュゴンが死んだ]なぜ守れなかったのか

漁港の岸壁に横たう姿が痛々しい。

今帰仁村の運天漁港沖で死んだ状態で漂着しているジュゴン1頭を漁協の組合員が発見した。体長約3メートル、頭部や胸ビレに傷、出血がみられ、ところどころ皮がむけた状態だった。漁師でさえ初めて見たといい、しかも死骸であったことのショックは大きい。

ジュゴンは人魚のモデルといわれる国の天然記念物である。国内では沖縄本島周辺にしか生息せず、確認されているのは個体A、B、Cと呼ばれる3頭だけである。
辺野古新基地建設が進む前は、辺野古・大浦湾などで海藻藻場の食み跡が確認されたり、周辺海域で回遊する姿がみられたりした。

今回ジュゴンネットワーク沖縄が死骸を調べ、体の特徴から3頭のうちのBと断定した。親子とみられる2頭のうちの親の方である。
最後に見られたのは今年1月8日。古宇利島周辺が主な生息域で、埋め立て土砂を積んだ運搬船が名護市の西側から東側に回る航路を取るため、影響が懸念されていた。

ジュゴンBは古宇利島を離れ、辺戸岬を回り、西海岸の安田沖に移動したことがある。日本自然保護協会も、運搬船が生息に影響を与えた可能性を指摘する。

3頭のうちの1頭が死んでみつかり、国内における生息状況は危機的状況となったといえる。

ジュゴンBは何が原因で死んでしまったのか。政府は徹底調査し、明らかにしなければならない。

<中略>

日本自然保護協会も安倍晋三首相あての「埋め立て工事の即時中断を求める意見書」を発表した。
政府は工事をストップした上で、範囲を沖縄本島全域や離島にまで広げて追跡調査すべきである。

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/398584