権利者の許可なくインターネットに上げられたと知りながら漫画や写真、論文などをダウンロードすることを全面的に違法とする著作権法改正を進めようとしている文化庁が、
自民党に正確ではない説明をしたと指摘する「検証レポート」が3日、明治大学知的財産法政策研究所のホームページで公表された。

自民党の文部科学部会などは先月こうした説明などをもとに法改正を了承したが、反対意見も根強く出ている。
党の最高意思決定機関である総務会は1日の会合で、関係者への説明不足などを理由に異例の了承先送りを決めたばかり。
与党に不正確な判断材料を提供していたとの指摘は今後の議論に影響を与えそうだ。

今回の検証は、違法とする行為をもっと絞り込むように緊急声明で求めていた著作権法の専門家らの一部が行った。
法改正について議論した昨年10月から今年2月までの文化審議会の会合でどんな意見が出たのか、自民党議員らに説明するために文化庁が配った資料を入手して分析したという。
その結果、自民党への説明で主に以下の問題点があったと指摘した。

文化庁は、法改正の方向性をまとめた2月の文化審議会著作権分科会でどんな意見が出たのかを紹介するため、発言者の名前を伏せて「慎重な意見」を三つ、「積極的な意見」を七つ、説明資料に載せた。

慎重な意見については、8人の委員の連名で慎重な検討を求める意見があったことも付記されてはいたものの、分科会の議事録と照らし合わせると、
法改正に「積極的な意見」のうち【学者】の発言とされた四つが、1人の2回にわたる発言を論旨ごとに四つに分割したものだったという。

また、文化庁が示した方向性に賛同している委員の意見は余すところなく紹介しているのに、「慎重な意見」を出した4人の意見は省略し紹介すらしていない
▽紹介した慎重派2人の意見についても重要な部分を省略している
▽別の慎重派2人の意見の一部を切り取って、積極派であるかのように誤解させている――とも言及。
全体として「積極的な意見は少数派であるにもかかわらず、多数派であったような誤解を誘っている」と指摘した。

https://www.asahi.com/articles/ASM3351BKM33UCVL007.html