カンガルーはカリスマ的な人気をもつ動物で、オーストラリアの生物多様性を象徴する存在でもある。

そして同国の国民は、明らかにカンガルーを誇りに思っている。

映画やテレビ番組、詩や児童書で主役となり、通貨や国章、スポーツのユニフォームなどにも使われている。

 一方で、カンガルーを害獣と見なす国民も少なくない。政府の公式発表によると、カンガルーの生息数はオーストラリア人口の2倍を上回る。

5000万頭と推定されるカンガルーのせいで作物が荒らされ、家畜の水や牧草が奪われてしまうと、農場経営者は訴える。

また、保険業界の統計によると、年間2万件を超える自動車と動物の接触事故のうち8割がカンガルーによるものだという。

「駆除しなければ生態系が維持できない」

 内陸部の過疎地では、カンガルーの増加が人々の生活に支障を来すほど“異常発生”していると思っている人が多い。

ディンゴのような捕食動物が減り、先住民による狩りも行われなくなった今、駆除をしなければ生態系のバランスが維持できないと考えられているのだ。

 カンガルーの駆除は、地方経済の振興にも役立つ。政府公認の下、営利目的で駆除されたカンガルーの肉と皮革製品の輸出高が、2017年には約35億円にのぼり、雇用者数も約4000人に達する。

現在、絶滅のおそれがない4種のカンガルーの肉や皮革が56カ国に輸出されている。オオカンガルー(別名ハイイロカンガルー)と、クロカンガルー、アカカンガルー、ケナガワラルーだ。

丈夫でしなやかなカンガルーの革は、ナイキやプーマ、アディダスといった世界的なスポーツ用品メーカーが素材として買い求め、

かつてはペット用だった肉も、今では食料品店や高級レストランなどでも徐々に扱われるようになってきた。

 オーストラリアに八つある州と特別地域のうち、四つが年間の上限数を設定してカンガルーを駆除し、需要に応えている。

カンガルーの肉は低脂肪な上、高タンパクで、温室効果ガスを排出する羊や牛を飼育するより地球環境にやさしいと、駆除賛成派は指摘する。

カンガルーが増えすぎて「害獣」に、賛否両論
今や生息数はオーストラリアの人口の2倍を上回るhttps://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/020100077/