トランプ米大統領の米軍シリア撤退の一報は、昨年12月19日、突如ツイッターで発信された。

 いわく《イスラム国(IS)に歴史的な勝利を収めた。今こそ米国の若者たちを帰国させるときだ》と宣言し、米政府だけではなく、シリアに関与してきた中東各国やロシア、イラン、そして米国と組んでISを壊滅させた有志連合諸国を驚がくさせた。

 「トランプ大統領は選挙公約でシリアについて、IS壊滅後、早急に米部隊を撤退させると主張し、昨年4月にも盛んに撤退論を繰り返していました。しかし、当時はマティス国防長官(年末で辞任)ら政権内の安全保障チームが強く反対、
9月になってトランプ大統領は、IS壊滅後も敵性国イランの影響力拡大を阻止するため、小規模の部隊をシリア領内に残すことに同意し、シリア政策を変更していたのです。政策が変わったのは、ツイッター発信の前日18日です。
ワシントン・ポスト紙などによると、この日、ホワイトハウスでごく少人数の秘密会議が開催され、出席者はトランプ大統領、ポンペオ国務長官、マティス国防長官、ボルトン大統領補佐官らでしたが、全員が反対したのにもかかわらず、大統領は反対論を強引に押し切ったのです」(国際ジャーナリスト)

 米軍が撤退すると、その空白地域に必ず出てくるのが中国だ。すでに中国では「シリア再建プロジェクト・フェア」が開催されている。習近平国家主席の政策の目玉「一帯一路」の一環だ。

 「フェアには実に200社の中国企業が参加し、シリア投下を予定しているプロジェクト費用は20億ドルに達しています。道路改修工事にハイウエー工事、もちろん抜け目なく、情報奪取のための光ファイバー網設置などです。
中国は中東石油に依存しており、安全保障面からの対応を急いでいるトルコやイスラエルの動きを横目に、シリアへの再進出を虎視眈々と狙っていたのです。表ではシリアのアサド大統領に協力しつつ、裏ではISに武器供与を続けるという二枚舌戦略を採っていたのですから極めてタチが悪い」(軍事アナリスト)

 中国はISに加わった反体制派である中国ウィグル族の若者たちの動向を探るため、密かにISとの連絡網を構築していたというわけだ。

 「リビアでカダフィ政権が転覆したとき、中国は3万6000名の労働者やエンジニアを引き揚げましたが、なぜそれほどの人数が独裁国家にいたかといえば、同国で100ものプロジェクトを請け負っていたからです。
とはいえ、現在の中国はとてもじゃないが札ビラを切れる状況にはありません。というのもIMF(国際通貨基金)はパキスタンの財務状態を『デフォルト』と宣言するのは時間の問題となっているからです。
もしそうなると、中国が推進してきたCPEC(中国パキスタン経済回廊)の620億ドルもの壮大なプロジェクトが挫折することになり、中国は約80%の債権放棄を迫られるからです」(中国ウオッチャー)

 日本はとてもじゃないが、こんな金満国家のマネなどできない。
https://wjn.jp/sp/article/detail/1176913/