米国との貿易紛争が、中国の生産者らに深刻な痛手を与え始めた。暮らしへの影響が広がれば、怒りの矛先は米国だけでなく共産党政権にも向きかねない。
 難局に立つ習近平(シーチンピン)国家主席は30日からの主要20カ国・地域(G20)首脳会議に臨み、トランプ大統領との会談で解決の糸口を探るが、着地点は見いだせていない。

 黄河に沿って農村が広がる中国河南省新郷。10月、年数万頭の豚を出荷する大規模な養豚場はひっそりしていた。
 経営者の知人の農民(52)は記者に「豚に与える飼料を買えなくなり、殺処分などで頭数を減らしている」と明かした。

 引き金は、米国から輸入される大豆価格の高騰だ。豚の飼料には、大豆から油分を搾り取った後に残るカスが配合される。

 中国は7月、米国の高関税措置への報復として、大豆など米国からの輸入品に25%の関税を加えた。
 米中間選挙を見すえ、農家を支持基盤とするトランプ大統領を揺さぶる狙いがあったが、「我々はトランプ氏の票田に攻め込むための犠牲となった」(中国の大豆加工業者)と不満が漏れる。

 報復関税の影響は中国自身に跳ね返ってきた。9月、米国からの大豆輸入(金額ベース)は前年同月より約98%減ってほぼ「蒸発」。
 大豆価格は夏以降、約10%上がった。加えて8月以降、中国各地の養豚場で豚コレラの感染が拡大。
 ダブルパンチを受けた養豚業界からは「今後、廃業が相次ぐ」と悲鳴があがる。

 中国でいま、ささやかれているのが、大豆の「2月危機」だ。
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